午後の人々

  • 水声社
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784891764012

作品紹介・あらすじ

本書に描かれる世界はもはや機能不全に陥った世界である。それを支配するルールは、主人公を望ましいパートナーと結びつける力をすでに失っている。小説の後半、舞台は海辺に移り、そこでプリングルの自殺事件が起こったりもするのだが、死という問題さえもこの腐臭の漂いはじめた世界を破ってはくれない。悲劇はありえず、アトウォーターもスーザンもハリエットもバーロウもソフィもプリングルも、機能不全の社交喜劇の登場人物でしかありえない。一次大戦が終わり、永遠の繁栄を約束されるかに見えた「ジャズ・エイジ」アメリカがひっくり返ってしまった大恐慌の初期の時代に書かれたポウエルのデビュー作。

感想・レビュー・書評

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  • イギリスの社交パーティーの様子を描いた1931年の小説。登場人物はとりとめのない会話を交わし、それぞれの恋愛問題に悩みながらも、倦怠的に日々を過ごしている。
    会話が中心なのでどんどん読み進められるが、とくに事件が起きるわけではない。

    「社交喜劇の基本形はメリーゴーランドである。登場人物たちは、社交界という閉ざされた世界の中でパートナーを見つけるためにくるくる回り続け、望ましいパートナーを見つけることでゴールを迎える。
    (中略)
    ところが、『午後の人々』に描かれる世界はもはや機能不全に陥った世界である。それが閉ざされた世界であることに変わりはないが、それを支配するルールは、主人公を望ましいパートナーと結びつける力をすでに失っている。登場人物たちは閉ざされた世界にうんざりしつつも、そこから脱出するだけの気力を持ち合わせていない。」
    (「訳者あとがき」より)

  • 貴族社会の優雅なようでいて陰鬱とした退屈な日常生活。というか、若い頃は共通の知り合いで付き合ったり別れたりはよくあることだから貴族社会だけのことではないか……。文体のせいか、活き活きとした描写と会話の流れは実在するかのようでストーリーに引き込まれる。でも読み終わった感想はタイトル通りの『午後の人々』だった。

  • ポウエルは英国文壇の重鎮らしいが、日本で翻訳が出るのはこれが初めてだとか。何もおきない世界」を描いた本。なんせ何もおきないので、登場人物たちはダラダラとつまらなそうなパーティに出、ラブ・アフェアにうつつをぬかし(しかもそこに恋愛はない)、要するに時間つぶしをしているだけ。でも読んでいてつまらなくはないし、古さ(書かれたのは第一次大戦後)も全く感じない。
    イギリスの上流階級の実態には詳しくないけど、彼らは今でもこんなことしてるんじゃないかなぁと思う。そういった人々に興味がある人向けかも。

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