条例のある街: 障害のある人もない人も暮らしやすい時代に

著者 :
  • ぶどう社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784892401879

感想・レビュー・書評

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  • 先日、著者の野沢和弘さんに実際にこの時のお話をして頂いたことがきっかけでこの本を購入しました。
    「障害のある人もない人もが差別されることなく、安心して暮らせるための条例」のために奔走した新聞記者の方(著者本人)のお話です。
    別種の障害をもつ障害者同士、障害を持つ方とそうでない方(企業の経営者や会社員)、条例を制定させたい側とそうでない側(議員、特に自民党会派)との間で何度も何度も何時間にもわたって議論をし続けてきたからこそ成立した千葉県の「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」。この本を読んで学んだのは、他者が本当の意味でお互いを理解するにはとても長い時間がかかるということです。しかし、そうした議論の後に生まれた理解というのは『真の理解』であるということ。
    私は障害のある方、それ以外の社会的弱者の方がそうでない一般人と同じように生活できる社会をつくりたいと考えています。そんな私にとって、この本の中で登場する方々は、心からそんな社会を作りたい方々で、とても魅力的に感じました。
    もし障害に携わっている方、そして興味のある方がいらっしゃるのであればぜひ読んでいただきたいです。

  • 議論の上に積み上がっていく理解の過程が、わかりやすい文章で描かれています。明らかに罰とならないようなことが差別の実態としてあって、無自覚に表されるその事々にさらされるしんどさは、ポジティブな気力を奪ってしまう、そこにもう一度向かい合わせてくれる内容でした。

  • 本邦初の障害者差別解消条例である「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」の制定に至るまでの波乱万丈の物語を、条例制定に向けた研究会の座長を務めた記者でもある著者が綴る。
    1つの条例ができるまでにこんなドラマがあったとは。著者はじめ関わった人々がいかに熱い思いをもって条例づくりに携わってきたのかが伝わってきた。本当に大きな一歩となる条例だったと思う。
    障害者差別の実情等についても理解が深まった。

  • 障害のある人も、ない人も、暮らしやすい条例
    一休さんドットコム | 自然 子育て 遊び Publish on web by YAMADA,Toshiyuki
    http://19san.com/?page_id=11482

    ほんの森-条例のある街
    障害保健福祉研究情報システム(DINF) 障害者の保健と福祉に関わる研究を支援するための情報サイト
    https://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n314/n314019.html

    ぶどう社/福祉/条例のある街
    http://www.budousha.co.jp/booklist/book/jourei.htm

  • 差別解消法が施行された今年度よりもはるか数年前に、千葉で条例を作った、そのドキュメンタリー。
    新聞記者さんなので、文章は読みやすいけど熱いものが伝わってくる。
    議会の裏事情とかかけひきとか、よくわからないけどいろいろあるんだなと、今さらながらに愕然としたり。

    来月、野沢さんを招いての講演会があります。
    予習のためにと読んだのが、予習では終わらず感動。
    数年前にも野沢さんの講演を聞いたことがあるけど、
    今回はまた違った自分で学習できそうで楽しみ。

  • つい最近できた条例の実現に至るまでの過程がたんたんと書かれています。しかし、読み進めるうちに、思わず手に汗握る内容となっています。

    特に私が引きつけられたのは、冒頭部分にある知的障害者の人の社会参画のくだり。

    私は社会展示を制作する仕事をしており、あらゆる障がい者の方に楽しんでもらうことをいつも気にしています。その上で、とても示唆に富んだ本でした。

  • 一般には見えない
    議会の裏側を客観的な目で伝達してくれているし
    新しい法案ができるまでの
    本質からずれた議論と駆け引きのありようも見ることができる

    プライドを守ろうとして自分で恥をかいている事実にすら
    気付けない人達に権力をゆだねている我々の無知さを思い知ることができた

    自民党議員が70%を占める千葉県で
    初当選の堂本暁子知事率いる県庁発案で
    官と民が共同で法案作成に取り組む福祉体制が動き出したと言う
    障害福祉課長は厚生労働省から出向で来ていた官僚人だった

    しかし旧態依然の地域に温存している自民党議員は
    野党宣言をして議会を圧倒的な議員数で牛耳っていたようだ
    従って堂本さんの出す法案には内容の如何に関わらず
    基本的反対する体制だったようだ

    委員会は行政の息の掛った人選でなく公募による人選を目指した
    「障害者差別をなくすための研究会」の手弁当の委員である
    関係者・法律・医療・教育・経営者など幅の広い分野から20人を選ぶ
    しかし公募に従来からある組織の人が応じることがなかったので

    政治の世界には素人の市民で立場も違う委員達であるから
    まちまちの考えでまとまりがないままスタートし
    話を詰めていくことで理解し合っていく
    差別に付いても実情を把握するためにアンケートを実施し
    八百例を超える理不尽な実情の分析から始める

    最もこの法案は対立するためのものでなく
    理解し合うためのものだと言うことを目的にしているので
    あくまでも要求でなく対等な立場の建設である

    ここで例として出されている意見を簡単に要約しておきたい
    障害者は一定の割合で生まれているけれど
    一か所に片寄って目の見えない人が集まって多数派になったとしよう
    そうするとその街の議会では環境に考慮して街灯を廃止する決議をする
    すると少数派の健常者が慌てて必要論打ち出して異議を申し立てる
    しかし目の見えない市長は言うでしょう
    財政困難な折りわがままを言わないでください
    地球環境や財政や一般市民のことも考えてください・・・

    これを読んだ私は
    個人的な利害による力関係の対立でなく
    個人を含んだ大きな社会全体を視野に入れた利害を考えれば
    多大な無駄をなくすことができて
    比較にならないほどの利益を生み出すに違いないとあらためて思った

    要求よりは少数派に対する理解を求めた条例案は
    当然の如く言葉も柔らかく対象を絞り込むことよりも
    改善に向けた内容となったし
    制裁とか罰則のための手順でなく
    提案や指摘や指示によって歩み寄るための体制をつくることになる
    従って従来の機構をそのまま使うことがベストとは限らない
    むしろ本音を言えば
    新しい制度には色に付いていな人がふさわしいだろうと私は思う

    意見の言い出しにくい少数派を考慮して
    多数派が歩み寄る関係が社会を明るくしより発展させる
    何故ならばその分以上に無駄を省けるし
    三本のまとまった矢の強さを発揮するだろう
    北風の力尽くよりも太陽の共生による力の方が
    傷付く者もなく喜びに励むことができる

    それにしても外に対する立場と意地に絡まった義理人情の枷に
    恥も外聞もなくしパニクッテいる器を着こなせていない人の多いこと
    すべての役を交代制にする必要性があると早まってしまいそうなぐらいに
    既得権にしがみついて甘えている人が多い

  • 【読書その100】今年記念すべき100冊目は仕事で悩んだ時に元気を出したいときに読む本。100冊目はこれしかないと思っていた。「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条約」の成立までの劇的なドラマ。障害者をめぐる様々な差別、問題。本著で紹介されている例の一つ。自分の子供が虐待されている親。虐待をされている我が子を守らなければいけないはずが虐待する施設側を擁護してしまう。施設が虐待する事実がわかっても、口を出せば施設を追い出されると不安になり、思い止まってしまう。親は自分亡き後の我が子を思うのだろう。その気持ちを考えると胸が張り裂けそうになる。この条例は、障害者やその関係者と行政が共にそうした数々の問題に対し真剣に向き合い、議論して作り上げた。社会保険庁時代の元上司が県庁出向中に携わっており(本著で登場している)、その当時の生の話を聞いて本当に感動した。自分もいつかこのような人の心を突き動かす仕事をしたい。

  • この著者の本は読みやすい。分かりやすい。

  • なんとなく生きていると、世界はニュースの中で勝手に回っていく気がする。
    だけど、地道な努力で少しずつ誰かが世界を変えているんだよな。

    「差別しちゃいけません」って主張をきいて脅かされる気分になる人たちのことはよく理解できない。
    向こうもきっとそうなんだろう。
    だから、どうやれば分かり合えるんだろうとか考えた。

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