新月の子どもたち

著者 :
  • ブロンズ新社
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本棚登録 : 284
感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784893097071

作品紹介・あらすじ

斉藤倫、待望の長篇書き下ろし。きみは、だれかの夢。きみは、だれかの未来。小学5年生の令は、ある日、トロイガルトという国の死刑囚レインとなった夢をみます。死ぬことを当たり前のように受け入れているその世界で、「わたしは、しなない」という少女シグに出会い、いつしか彼女をたすけたいと思うように・・・。一方現実での令は、合唱コンクールがせまる中、声変わりをからかわれ、歌うことから、自分と向きあうことから、目を背けようとします。しかしクラスメイトにたすけられ、たどりついた自分の新しい声は、ずっとそばにあったレインの声でした。その声に共鳴するかのように、夢と現実が重なりあい、やがて周りにいる人の記憶と世界の扉を開いていく――。子どもたちが未来に光をみつける、希望を描いた物語。

感想・レビュー・書評

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  • 簡単ではなかった。この物語は。

    _のぼり坂も、くだり坂も、おなじ。ひとつの坂に、ふたつの名があるだけ、新月と、満月が、おなじ月であるように_

    こういうのが文学なのかな 読んで、考えてみることができる本。

    書き出しから引き込まれました。

    _呼ばれたとおもったのは、ぼくが、レインだからだ。いや、呼ばれたとおもった瞬間から、ぼくは、レインになったのかもしれない。_

    このあとのレインが目覚めるところも全部引用したいくらい素敵な文章からはじまります。

    まぶたを開く= 桃の皮を、指で押してめくるような感じで。

    いつもながらこんな煌めく比喩が散りばめられて…その度にズッキュン


    #斉藤倫

  • かな混じりや独特な句読点は詩人だからこそなのかな。
    私にはなんだか読みづらかった。
    夢の中の物語も、ちょっぴりまどろっこしいかなぁ…

  • 前半は不思議な気持ちで読み進めていたけれど、夢と現実がつながりはじめてからは作品の輪郭がはっきり見えてきて、ラストは心がふるえるのを止められず、ぽろぽろ流れる涙をぬぐいながら読んだ。子どもたちは、大人が思っているよりずっと深く、真剣に、自分と世界のことで悩み、ときにはひどく苦しむ。助けてほしい、の言い方を知らないことも多い。幼かったわたしがそうだったように。この作品が、この作品を必要とする1人でも多くの子どもたちに届くことを願う。

  • 「きみは、だれかの夢。きみは、だれかの未来。小学5年生の令は、ある日、トロイガルトという国の死刑囚レインとなった夢をみます。死ぬことを当たり前のように受け入れているその世界で、「わたしは、しなない」という少女シグに出会い、いつしか彼女をたすけたいと思うように・・・。一方現実での令は、合唱コンクールがせまる中、声変わりをからかわれ、歌うことから、自分と向きあうことから、目を背けようとします。子どもたちが未来に光をみつける、希望を描いた物語。」

  • テーマが良い
    が、色々つながってくる前までの前半が暗い。娘に勧めたいが、面白くなるまで読み進めることができるか、今はできないかもしれないと思う。

  • 表現が独特で、この世界にあっている。
    あきらめないでほしい。そんな相手に読んでほしくなる。

  • 手に取る機会があって読んだ。

    小五の平居令(ひらい れい)は、「トロイガルト」の夢を見る。
    そのせかいで、令は「レイン」で、死刑囚だった。
    監獄のなかで「わたしは、しなない」とはっきり言う、シグという女の子と出会う。

    観念的なおはなし。
    中学生以上向けという感じ。
    「死刑囚」という設定なので確認したくて読んだけれど、個人的に読んだら挫折したと思う。
    トロイガルトという夢と、なぎ町小学校という現実が交互に展開され、夢の部分は難しく、300ページ以上で読む人を選ぶ。
    『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』は好きだけれど、この『新月の子どもたち』は個人的にはあまりおすすめしない。

  • なんだろう。この文章の美しさ。と斉藤倫さんの作品を読むといつも思う。考えると、露玉かな、と頭に浮かんだ。しん、としていてきれい。風景だったり気持ちだったり、"自分で考える"余韻がとても心地よくて好きだ。

    自分の声が変わるって、どんな感じなのだろう。兄がいるけど気づかなかったな。男の子とほとんど話さなかったからもあると思うけれど、クラスの子も気づかなかった。でも、小学生のときにはしゃべってた子が、大きくなってから、わお。久しぶり!の子に会っても、全く「声が変わったな」という感じがなかった気もする。

    声、でからかわれたら、話したくなくなっちゃうな。(でも、自分では変えられぬ「声」で、からかわれたらもっと嫌になるな。どうしようもできないもの。
    唯一無二の声で見出されて、ぴょーんと、飛び出せる人もいるけれど、それもひと握りだよね…)
    (話がそれてしまった…)
    自分ではどうしようもできないことの大人になるって、女の子も大変だけど、男の子も大変だ。

    ふたつだけどひとつのお話。
    忘れてしまったことがあるかもしれない。
    覚えているけれど実行できないこともある。
    “トロイガルド”から
    消えたままでも、抜け出せないままでいることも、抜け出せても、きっとみんなそれぞれ心地よい場所があるのだろうな。
    なぜ?だったり、どうして?だったり、何か疑問を抱いたりもやもやしたときに、自分にとって1番進みたいところへ進めるヒトでありたいな。と思う。
    包み込んでもらえるような、一冊。今出会えたこともよかったけれど、小さいときにも出会ってみたかったな。でもやっぱり、出会えた今がいちばんぴったりなんだ。

  • 児童書とも言えるがとてもよくできていて、自分の夢と夢をを諦めることを、現実世界とシンクロさせて、波に喩えて連動させている。モノクロのイラストも物語に寄り添うようにぴったりだった。

  • 花松あゆみさんの装画がとても美しい。
    この本の夢と現実の曖昧でまどろむかんじとちょっと爽やかな不気味さもあって絵だけでもずっと眺めてられる。
    本の中身は夢の中の話のように支離滅裂なかんじで(だけど現実とちゃんと繋がってる)、子どもの頃に読んでたらより一層たのしめたのだろうなと思う。

    _φ(・_・
    だれかを助けることと、その人を助かりたいという気持ちにさせることとは、すごく遠い。
    死んでもいいという気持ちは、誰も生かさない。
    死にたくないという思いが生かすんだ。

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著者プロフィール

斉藤倫 詩人。『どろぼうのどろぼん』(福音館書店)で、第48回児童文学者協会新人賞、第64回小学館児童出版文化賞を受賞。おもな作品に『せなか町から、ずっと』『クリスマスがちかづくと』『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』『さいごのゆうれい』(以上福音館書店)、『レディオワン』(光村図書)、『あしたもオカピ』(偕成社)、『新月の子どもたち』(ブロンズ新社)』絵本『とうだい』(絵 小池アミイゴ/福音館書店)、うきまるとの共作で『はるとあき』(絵 吉田尚令/小学館)、『のせのせ せーの!』(絵 くのまり/ブロンズ新社)などがある。

「2022年 『私立探検家学園2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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