怪奇探偵小説集 3 (ハルキ文庫 あ 4-3)

著者 :
制作 : 鮎川 哲也 
  • 角川春樹事務所
3.33
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本棚登録 : 23
感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894564244

感想・レビュー・書評

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  • 前2集に比べると質は落ちるか。今振り返ると各短編集にはそれぞれテーマがあったように思う。
    第1集は人肉趣味・エログロ趣味、第2集は皮肉な結末。
    で、第3集はと云えば、双子物かとも思ったが、全体を通してみると双子物はさほど多くはなく、一貫してのテーマでは無かったように思う。

    印象に残ったのは「生きている腸」と「墓地」と「壁の中の女」ぐらいか。
    「生きている腸」はなんといっても死者から取り出したばかりの腸が生きているというアイデアがすごく、これがやがて一個の生物として動き出すという奇想を大いに評価したい。最後のオチに至る仕掛けは盆百だが、このアイデアだけで価値がある。
    「墓地」はショートショートぐらいの小品だが、最後まで自分の死を信じない男の独白が結構シュールで好みである。
    「壁の中の女」は愛した女性が実は醜悪な老婆だったという最後のオチが良かった。

    逆に不満が残ったものをあげていくと・・・。

    まず「皺の手」。物語の軸が定まらず、失敗作だと思う。たぶん作者は青髭譚を書こうと思ったのだろうと思えるのだが、あの発端からなぜあのような手首を愛好するような奇妙な話に終わったのかが疑問。

    「抱茗荷の説」も坂東真砂子を思わせる土俗的ホラーだが詰め込みすぎ。30ページで語るべき話ではないと思う。記憶の断絶が多すぎてちょっとわからなかった。恐らく死んだと思われた母親が生きていたという話だと思う。

    「嫋指」は乱歩の弟による作品。文章が読みにくく、独りよがりに過ぎる。

    やっぱり第2集が一番面白かった。
    怪奇小説というよりも残酷小説集の感が最後まで残った。鮎川氏の怪奇小説に対する考え方は前時代的だったと証明したに過ぎない選集だったのではないか。

  • 昭和51年に刊行されたアンソロジーを文庫化したもの。
    収録作はおおむね明治生まれの作家によるもの。
    古典に外れが少ないのは選別されて生き残った作品が古典になるからであって、古けりゃいいってもんじゃないと再確認した。
    この本は同時代の編者が集めた選集だから、時代のふるいにかけられていない。

    良いのが少しと、胸糞悪いのがいくつか。
    (石原慎太郎に倫理的嫌悪を抱く人は読まない方がいい)
    あとはありがちか、つたないか、どうでもいい。
    なんでわざわざこれを選ぶのか理解できないものがいくつもあって、鮎川哲也が嫌いになった。
    1998年に出し直す理由がわからない。

    似た話がつづいていく並べ方はどうなんだろう。
    最初の二つはおなじような話なので巧拙がくっきり目立ってしまう。
    乱歩のあとに素人に毛が生えたようなのを置いちゃかわいそうだよう。

    時代性なのか、みんな双生児や美女や知的障害者に夢見すぎ。
    これらの「異形」の扱われ方はアルビノの描かれ方に似ている。
    →『手招くフリーク』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4903690571

  • <pre><b>「マグノリアは去年も咲いた。おととしも咲いた。
    それでも砂恵は、今朝のような発作は見せなかった
    。だが、今年は違う。亜矢子を象徴するマグノリア
    の最初の開花を引きちぎり踏みにじらずにいられな
    いところまで、砂恵の亜矢子への憎悪が煮つめられ
    てしまっている」―親友だった二人の女性を引き裂
    いた事件が生んだ悲劇を描く香山滋「マグノリア」
    等全十六篇の怪奇探偵小説集。</b>
    (「BOOK」データベース より)

    資料番号:011243011
    請求記号:F/カ/3
    形態:図書</pre>

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著者プロフィール

1894(明治27)—1965(昭和40)。三重県名張町出身。本名は平井太郎。
大正から昭和にかけて活躍。主に推理小説を得意とし、日本の探偵小説界に多大な影響を与えた。
あの有名な怪人二十面相や明智小五郎も乱歩が生みだしたキャラクターである。
主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。

「2023年 『江戸川乱歩 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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