電話男 (ハルキ文庫 こ 5-2)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894567054

感想・レビュー・書評

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  • 乙一氏推奨。

    たかが電話。されど電話。
    他人のとめどない話にただただ相槌を打ってこちらからは絶対切らない電話男という職業をめぐる、世間の賛否と事件の数々。

    現代は携帯電話によってより自由になった分、より縛られているのかもしれぬ。どこにいようと繋がらされ、繋がるがゆえに孤独感もひとしお。

    鳴らぬなら落としてしまえ、電源を。

  • 小林氏の著書は初めてです。
    本書を読むきっかけとなったのは「とるこ日記」の中で定金氏が旅先に持ってきていた「電話男」を乙一氏が借りて読んで感動した(松原氏も同様に)とあったので読んでみました。
    表題作「電話男」は1984年の作品ですが、今読んでも新鮮です。
    と言うか、1984年に今のインターネットのようなコミュニケーションを既に考えていた(もしくは見通していた)かのような作品です。
    「電話男」は世の中の動きやコミュニケーションの在りようなどの事柄を真っ向から述べつつも、言葉遊びのような面白い文章でテンポ良くあれよあれよと読めてしまいます。
    本書に収められているもう1つの作品「純愛伝」はいいですね。
    深いところで繋がっているようで、なんとも言えぬ余韻のある物語でした。


  • 【090329】旅は道連れ世は情け


    :::::::::::::::::::::::::


    四半世紀ほど前までは
    「電話男」がまだふつうにいたんだ。

    今となっては、
    想像だにできないのどかさなんだ。

    「電話男」

    ただ、
    電話で話を聞くだけなんだ。
    何かいってくれるわけじゃぁない。
    もちろん会ってくれやぁしない。
    ただ、
    話を聞いてくれるだけ。

    「電話男」の
    電話番号を手に入れるのがそれは大変だった。
    電話しているなんておおっぴらにはとても言えなかったからね。
    でも、なんというか
    嗅覚でわかるんだな。

    確かに
    いまでも似たような商売はあるけど
    ぜんぜん違うね。
    風情がない。
    情けっていうのかな。
    あれはよかったよ。
    繋がりがあった。

    紐一本の繋がりなんだけど
    その紐一本に
    いろんな想いが乗るんだな。きっと。

    語り合うわけじゃない。
    身体の結がりを求めるわけじゃない。
    でも、
    紐一本を通して
    心地よく
    繋がるんだ。

    最後の「電話男」が亡くなったと聞いたのは10年以上前になる。
    風の便りに聞いた。

    あれを潮に
    まっとうな「電話男」達は霧散した。
    示し合わせたかのように。

    いまでもどこかにいるのかなぁ。
    たまに、また、
    あの気持ちをまた味わってみたいと思うな。

    紐一本で繋がる心地よさを。

  • 脱線した部分の文脈や無駄話、言葉遊びなどが秀逸だった。大真面目にふざけているというような印象で良かった。
    プロット自体は、ほぼ何も動かないストーリーだが、電話男の概念、独特な価値観など、世界観の掘り下げが見事だった。確固たる価値観を持つ理解できない人たちとの会話は、暖簾に腕押しというか水と油というか、むず痒さと恐怖を感じた。カルト宗教が成り立っていく様を見ているような。
    大衆が電話男を排除しようとする世論の流れは、頭のない怪物を想起させた。
    終始よく分からないが何だかジワジワと面白い、不思議な作品だった。

  • 図書館で隣にあったので、最初小林泰三さんかと思って借りた本(笑)

    読んでからもしばらく全然気づかなかったし。

    電話男って電車男みたいだなと思ったけど、電話男は1987年に発表された作品なので、20年近く前。

    「電話男」と「純愛伝」の中編2編。

    「電話男」は電話男とはなんぞやについて一人語りで聞かせるような話。
    電話男は電話をかければ聞いてくれる相手。ただそれだけ。電話男というのは職業?のようなものなので、総称であり、老若男女いる。

    電話男は反政府的というような捉えられ方をされていて、公安を筆頭に様々な団体から滅ぼしてしまおうと考えられている。

    電話男になるのはおおまかにいって2タイプ。
    根っからの電話好きか悟りタイプ。天啓というか。

    語り部のチューターによれば「電話とは、心のかけ橋であり、電話男とは心の彼岸なのだ」

    電話男を迫害する存在として、破滅の淵に追い込んだのが『UFO研究会』。超簡単に言ってしまえば宗教団体みたいな感じ。

    知恵を重視するのが電話男なら、感覚を重んずる集団といえる。
    結論から言えば3年前にU研は消滅した。10万人に及ぶ市民が忽然と消えた。奇蹟が起きたのだ。

    それから電話男も違った様相を見せる。変わりつつある、成熟しつつあるとも言える。

    ここまでは電話男を事実(事象)として、客観的に?肯定的に話しを進めていたのだが、ここからな観念的にというか哲学的に話が進んでいく印象。


    まあ、全体にシュールな話であった。

    「純愛伝」は外伝的な話?
    奥さんが電話男になってしまった男性が主人公。



    たまには本とのこういう偶然の出会いもいいね。








  • 文学
    これを読む

  • とるこ日記、で三人ともオススメ

  • 電話男 / 初出 海燕 1984年11月号 (第3回海燕新人文学賞)
    純愛伝 / 初出 海燕 1986年2月号
    解説 「明晰という絶望」 (川上弘美)

    『電話男』 1985.5 福武書店刊 文庫化 (『電話男』より「迷宮生活」を割愛、『小説伝・純愛伝』より「純愛伝」を追加)

    装幀 芦澤泰偉
    表紙イラストレーション 門坂流
    フォーマットデザイン 芦澤泰偉
    印刷 中央精版印刷
    製本 中央精版印刷

  • 吉祥寺の古本屋さんで見つけ、最初は「『電車男』をもじったみたい」という印象で購入。

    奇妙な設定によって不思議な世界観に引き込まれました。

  • 100000tにて発見した一冊。

    電話が好きだから電話男になる人、何気なく電話男になることが運命であった人、それぞれが日常生活とは逸脱した

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