- Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
- / ISBN・EAN: 9784900963139
作品紹介・あらすじ
メルヘンの語り部はひそかに血を流していた…「古きよき家族」という昭和のメルヘンになった『父の詫び状』。成功を収めた天才作家の光と影を描く、全く新しい「向田邦子論」。
感想・レビュー・書評
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随所に向田邦子に対する毒というか批判的な眼差しを感じるのは私だけだろうか。
向田邦子の父、エッセイでも小学校卒で保険会社に給仕から入って云々とあるけど、当時は一般的な学歴で特に低いということもなく、大手の保険会社に入れたのも後ろ盾があったからこそで恵まれていたほうらしい。
あと、時代考証にも言及していていろいろ合わないことが多々あると。
でも、私は歴史小説を読んでるわけではないので、そこはこだわらないかな。
まっ向田邦子の小説、エッセイを検証するって角度に本は初めてだったのでそれなりに面白く読了したけどね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
向田邦子についての書き下ろし評論である。向田については既に多くの人の評価や書評がある。
例えば爆笑問題の太田光は手放しの向田礼賛派であるが、多くはドラマについてのことである。
また、「突然現れてほとんど名人である」と評した山本夏彦翁は、主に戦前の世相・家庭の風景がよく書けていること、その上死語・老人語(マスコミが取り締まるいわゆる「差別語」)を縦横に選んで遠慮がないことなどを褒めている。
では、この高島氏はどうみているか。言葉に敏感かつ用語の適切さの判定に厳密な氏は、どちらかと言うと普通以上に厳しい評価を下している。褒めるところはどうしてそれがいいのかを丁寧に説明する一方、間違いや杜撰な所、プロットが破綻しているところの指摘には容赦ない。向田ファンからはきっと嫌われるだろう。
この理由はあとがきで判明する。ネタバレになるのでこれ以上は書かないが、要は、氏が向田邦子の裏面・暗さと自分の境涯を比定していることを告白しているのである。
バッサバッサと切り捨てる、多くの評論(例えば『お言葉ですが・・』のシリーズなど)の爽快さの裏で、一見陽気に見える氏にも多くの悩みあったことが表白されているのだ。この点でこの本は高島氏研究者にとって重要な1冊と言えよう。
向田を評する一文に、「乞食の虱を養ふごとく、我らは愛しき悔恨(くい)を養ふ」(ボードレール『悪の華』)とある。潰しても潰しても湧いてくる悔恨に向田が苛まされていたことに同情しているのだが、それは氏自分自身のことでもある。 -
向田邦子礼賛ではなく、
テレビの売れっ子で「書き飛ばし」ていた間違いへの
容赦ないツッコミや、彼女のコンプレックスに
肉薄する姿勢は、貴重。
ベースには向田邦子へのリスペクトがあるのは
間違いない。 -
向田邦子の「メルヘン」の裏側を分析といった内容。なかなか批判的であり、この手のものは貴重か。しかし、重箱の隅をつつくようなイジワルな部分もある。