書物の不在 第2版 (叢書・エクリチュールの冒険)

  • 月曜社
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  • Amazon.co.jp ・本 (82ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784901477444

作品紹介・あらすじ

晩期ブランショにおける活動の究極となる最重要論考を初出誌版より初邦訳。著者最大の評論集『終わりなき対話』の末尾に置かれた同論考の単行本版との異同を附す。書くこと、作品、書物、法をめぐる未聞の思惟がここに開示される。

感想・レビュー・書評

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  • かつて若書きのフーコーはブランショを目指した。ドゥルーズも、デリダも、ルジャンドルも、彼への賛辞を惜しむことは無かった。またレヴィナスをして「文学を志すならば、ブランショを読まなくてはならない」と言わしめた。だから、少なくとも僕にとっては、彼との出会いは仕組まれた必然だったように思う。

    彼の主著『来るべき書物』がちくま学芸文庫から出版されるに際して、僕はもう一度『書物の不在』を、『表象』を手掛ける月曜社の気高い誇りが結晶した美しい装丁の本書を、繙くことになった。

    やはり困難である。晦渋で、不明瞭である。しかし、読める。かつて数多の挫折を経て遂に理解に達しなかった迷宮のようなエクリチュールを、今、僕は確かな手応えを感じながら読むことが出来る。何故か。それはひとえに、僕が『文学空間』を経験したからだ。ブランショが批評として文学から紡ぎ出した<夜>が、<外>が、読書を通して僕の語彙体系を組み替えたからである。

    『文学空間』や『来るべき書物』で彼が提示する「嵐が渦巻き」「獣が哭ぶ」<夜>の鼓動、<外>のざわめき、そういった概念の様々がここで言われる「不在」というそれである。そして「書物」とは実体的で通俗的なそれではなく、文字通り「書かれた物」に他ならない。そう、書かれた物は、正しく直観される通り、確かに存在する。しかし、その仕方は「不在」なのである。書物は「不在」として「存在」する。より正確にいえば、「不在」しながらでしか存在出来ない。

    このアンチノミーを巡って、ブランショは書物を語る。不在の語彙を駆使して語る。無数の存在論に囲まれて生きる我々にとって、不在の、それは「<夜>の」とも「<外>の」とも言えるわけだが、エクリチュールはまるで禅問答のようにも映る。しかし、彼は本書で、これ以上ない程の明瞭さで不明瞭を語り、書くことを通して書かぬことを語り、法外を示して法の本質をも示す。そして『書物の不在』を挑発し、扇動して、「存在」を語らせるのだ。

    不在論の語彙、語法の獲得は、不在論で編まれたテクストを読むことを通してによってしか不可能である。だからブランショを読むためには、ブランショを読み続けなくてはならないのだ。

  • エクリチュール論だけど、ユダヤ思想や言葉遊びのような誇張的表現によって語るところがレヴィナスとも近い。ただ、これを研究するとしたら相当大変だ。一カ所だけ引用したってさっぱり意味がわからないし、全体として論筋がまとまっているわけでもない。まさに「始まりも終わりもない」文章。どうしようかなぁ。

  • 「みずからに問いかけてみよう。問いという形にまでいたらないものを疑問点として掲げてみよう。」(p.6)

  • 「みずからに問いかけてみよう。問いという形にまでいたらないものを疑問点として掲げてみよう。」(p.6)

  • ずっとずっと、気になって、本屋さんに行くたびに「まだあるある…。」とひとりうなずいている本。何ページかぱらぱらめくっても、何が書いてあるのかさっぱりわからない(笑)。でも、現物を見たら、ブックデザインのあまりのセンスの良さに、買いたくなるひとは多いと思う…。奥付によれば、この第2版は1000部刷られているそうです。私の行きつけの書店には、いまでも数冊平積みされています。

  • 意味分からないすぎで泣きそうになった。

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著者プロフィール

1907年―2003年。20世紀後半のフランスが持ち得た最大の作家・批評家の一人。主な邦訳書に『至高者』(筑摩書房)、『死の宣告』(河出書房新社、)、『望みのときに』(未来社)、『私についてこなかった男』(書肆心水)、『最後の人/期待 忘却』(白水社)、『文学空間』(現代思潮社)、『来るべき書物』(筑摩書房)など。

「2013年 『他処からやって来た声』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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