Present Moment,Wonderful Moment―この瞬間がすべての幸福
- サンガ (2007年12月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
- / ISBN・EAN: 9784901679602
感想・レビュー・書評
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可憐な野の花が装丁された、飾っておきたくなるような表紙。
著者はダライラマ14世と並んで現代を代表する高名なベトナムの仏教僧です。
ベトナムとアメリカの和平提案に尽力し、戦後にはマーチー・ルーサー・キングJr.牧師の推薦を受けてノーベル平和賞候補者ともなった氏。
そのことから、ベトナム政府からにらまれて帰国できなくなり、長い亡命生活を送っていると知り、宗教の世界の人でありながら、政治に翻弄される激動の反省を送られていることを知りました。
世界の仏教界のオピニオン・リーダーということで、襟を正して読まなくてはという気持ちになります。
仏教に造詣の深い星飛雄馬氏による翻訳です。
ナットハン高僧の説法集かと思いましたが、 偈頌(ガーター)集でした。
偈頌(ガーター)とは、お経というよりも短い詩のようなもので、これを唱えることが禅宗の伝統の基本となっているそうです。
美しく心地よいガーターが、53編紹介されており、観賞用に留まらず、日常生活の中で唱えられるようなものが選ばれています。
観音菩薩はアヴァローキテーシュヴァラ、菩提樹はフィクス・レリギオサと言うそうです。
もうそれだけで、詩の言葉のよう。
仏教の戒律などについて細かく厳しく語るものではなく、ふとつぶやくようなさりげなさを持ったガーターは、深い呼吸と共にゆったりと唱えると、心身のコンディションが整ってくるようです。
とはいえ、現実離れした事項にばかり言及しているわけではなく、外貨を稼ぐため輸出用に確保されたコロンビアのコーヒー、ガーナのチョコレート、タイのお米といった食品を提示して、現実世界に蔓延している貧困を採り上げています。
ガーターを読み、唱えることで自分の中に取り込むという行為は、仏教にある身口意(人間の行動は身体、言葉、心の三つの側面よりなるという考え方)とまさに合致していると思えます。
日常生活の中でガーターを唱えることは、今この瞬間を見つめることになるため、過去にも未来にも心が捕らわれることなく、現在の気づきを促すことにもなるのです。
合掌することについて、あまり深く考えたことがありませんでしたが、「両手で蓮の蕾の形を作る」という美しい表現にはっとしました。
欧米の人向けには「チューリップの方が心に描きやすいのなら"あなたへのチューリップ。ブッダがそこにおわす"ということになる」と記されています。
蓮の蕾の形に合掌することは、目の前に立つ人に新鮮な花を捧げることを指すということで、改めて合掌することの深い意味を知りました。
自身のうちに思いやりの心を持ち、他人を微笑ませ、苦しみを和らげることができる人は誰でも菩薩になれるという、般若心経の教えに基づいた、本当の意味でのヒーリングを味わえる一冊となっています。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
”美しい本”
美しい本っていうのは、こういうものか~と思いました。
本は山のように出ていますが、美しいと思うものは、そうそうありません。
上質な言葉に触れられて幸福だ、と感慨無量の心境になりました。
偈頌(ガーター)の一文一文が、まるで生命に刻みこまれるようだ、と感じました。 -
講話の本だと思って借りたら、日常の場面で気づきを促すガーター(偈)集でした。これは通読する本ではなく、家に一冊常備して、時折開いてみるべき本です。
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日常生活のすべてに気づきをもって暮らす・・そんな方法を提案しています。
ひとつひとつ心して読むと新たな世界が見つけられる、そんな本です。
ここでは、ガーターという詩を暗唱することを推奨しています。
ガーターとは喝のこと。禅宗の伝統の基本だそうで、今この瞬間に立ち戻り、気づきを保つ短い詩です。
ヴィパッサナーと禅の実践編といったところでしょうか。
詩の好きな人には好まれる本かもしれません。ゆっくりかみしめて読めば深いところまでなにかを得られる本です。