- Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
- / ISBN・EAN: 9784903341002
感想・レビュー・書評
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「アーティスト」と呼ばれる人々。
政府が多額の助成をしているにも拘らず、一部のスターを除いた大多数の彼らは、貧困にあえいでいる。
その秘密を、経済学・社会学のフレームワークから解き明かそうとした1冊。
経済学と言えば「需要と供給」だが、筆者によれば、芸術の経済では「神の見えざる手」が働かず、アーティストが供給過剰の状態にあるという。
その結果として、収入は低く抑えられてしまっている。
では、何故、アーティストは供給過剰なのか?
つまり、何故、稼げないのにアーティストを心がける人が絶えないのか?
これが、本書の最大のテーマであるように見える。
以上の問に対し、政府の助成を中心に添えながらも、様々な論点を提供している。
助成の議論こそ、欧米のケースが支配的で日本人としては理解しにくいが、因果関係は平易に書かれているし、何より、その他の論点が、非常に楽しく読めた。
アーティストは尊敬されるから。
そう答えるのは簡単である。
では、それは、苦しい生活と天秤にかけて、そんなに重みを持つものなのか?
例えば、芸術の神聖性、「忍耐の結果として成功する」という神話があるから、挑戦のリスクが正確に把握されていない。
これは、議論されているファクターの一つだが、非常に納得感もあり、また、思ったよりも近しいと言う意味で驚きのある仮説で、まさに目から鱗だった。
面白い本ではあるが、気軽に読めるか。
YESであり、NOであると思う。
第1に、500ページを超える、相当なボリュームである。
第2に、経済学の理論を前提にした記述がなされている。
その上、具体的なグラフの形で数字が示されていることは無い。
せめて、実際の数字を示してくれれば・・・と思うことも多かった。
一方で、読みやすい工夫が施された本でもある。
まず、各章の末尾に、その章の要約が、順序も忠実に書かれている。
さらに、全ての記述の中で、大事な命題は、太字で記されている。
ここだけ集中して読めば、大体の内容は掴めるし、難しい箇所を理解する手助けにもなった・・・と信じている。
とりあえず、ところどころ頭をフル回転させる必要はあったが、「なるほど!」と感嘆しながら記述を追いかけることの出来た良著だと思う。
タイトルに惹かれたなら、お勧めです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ストーリーと仕立てのところが入ってきやすい、文体も。ちょっと言い切りすぎな感はあったけど。
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金と芸術 なぜアーティストは貧乏なのか
(和書)2012年01月28日 22:01
grambooks ハンス アビング, 山本和弘
柄谷行人さんの書評から読んでみたのでした。
この本を読みながら別のことを考えていた。
・・・宗教批判はあらゆる批判の前提である・・・
・・・ナザレのイエスは宗教批判をしていた人・・・
柄谷さんの朝日新聞の書評に載った本は全て読みました。明日の日曜日、新しい本が紹介されるだろうと予想しています。またおもしろい本を知ることができる。
この本を読んでいてナザレのイエスのことを考えてしまった。芸術の神話というものをも批判するのは宗教批判の前提が必要だろうと思った。そして芸術の神話が最近できたものであって、だから駄目だというわけではないが、芸術なんてどうでもいい宗教批判だと言いたくなった。そしてそう思うことが受け入れられる本だと思った。 -
図書館で借りたけど、持っていたい本だと思った。
なので一読目はただ通読。
各章ごとにテーゼがまとまっており、"金と芸術"について自然と考えさせれれる構成になっている。
座右に置くべき、かも。 -
卒論執筆のために参考にした本。一般人にはよく分からない芸術の価値について、経済学者としての顔も持っている筆者が展開している。
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アーティストとか芸術家と呼ばれる(あるいは名乗っている)人々は、一握りの例外を除いて、芸術だけで生活するのは難しい。現代社会には多くの助成金や寄付金が存在するにも関わらず、多くの芸術家は貧しいままでいるか、あるいは芸術の道を諦める。それは何故か?
本書の著者は経済学者であると同時にアーティストでもあるという珍しい立場から、この問題にメスを入れた。原題を直訳すると「なぜアーティストは貧乏なのか? 芸術という例外的経済」だ。
芸術を取り巻く経済は、一般的な資本主義や市場経済の理論が馴染まないように見える。それは芸術作品が他の「商品」とは違うからであるが、何がどう違うのか。本書の結論は、必ずしも意外なものではなく、恐らく芸術家でない人々が漠然と感じていたことを明らかにしたものであろう。
芸術は神秘のベールをかぶっている。そのベールは天与の物と見なされがちだが、実際は人為的に作られた神秘性なのだ。では、誰がなんのために生み出した神秘性なのか。著者は、芸術家と芸術を取り巻く商人、芸術を購入する一般人、芸術を助成する国や地方自治体、そして芸術に寄付する篤志家などについて、それぞれが「利益」を得ていることを示して行く。彼らすべてにとって、芸術は神秘的であってもらわなくてはならないのだ。
そして、寄付や助成の増加がアーティストの生活を向上させることはなく、ただ貧乏なアーティストの人数を増やす結果になるという指摘は、いわゆる「芸術家の卵」の期待や希望を奪うかもしれない。それでも、その主張には少なからず説得力がある。
かなり読むのが大変だったが、第12章「結論」はそれまでの章で語られたことが一通りなぞられているので、ここだけ読んでも論旨は理解できるだろう。部分的に納得が行かなければ、そこについて詳述された章を読めばいい。
著者はオランダ人であり、本書で扱われるのはヨーロッパとアメリカの事例である。それ以外、日本を含むアジアやアフリカの芸術については考察の対象外とされているが、実際は日本の状況もほぼ変わらず、程度問題に過ぎないと思われる。
「結局、私は芸術に寄付をすべきなのだろうか?」──それは私がどんな立場であるかによるだろう。少なくとも私にとって、答はイエスだ。ある意味、残念ながら。 -
今年のベスト本。お芸術とミクロ経済学の幸せな出会い。なぜ"あの人"だけがもてはやされるのか?
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著者は経済学者として立派に教壇にたっているアーティスト。とても分厚い本だけど、書いてあることはとっても単純で簡単な気がする。アーティストは金に無関心を装っているからこそアーティストなんだってこと。
芸術が経済システムに組み込まれてしまっては。その存在意義が無くなってしまう。昔、村上隆が書いていたけど、人生の酸いも甘いも知っている成功者達は、自分では決して手に入れることができない「価値」をもとめて、美術品を収集するらしい。
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少しも読んでいない。
芸術とカネに付いてのおはなし、と思って買った。経済学の本?