村上春樹にご用心

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著者 : 内田樹
  • アルテスパブリッシング (2007年9月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903951003

村上春樹にご用心の感想・レビュー・書評

  • もしあなたがプロヴァイダの解約をしようとする。
    本棚の奥底から引っ張り出してきたマニュアルに記載されたダイヤルに電話をかけてみたら、あらかじめ録音された人の声が聞こえてくる。
    その清く正しいリズムの案内を聴き終えて促されるままに番号を押す。
    すると、また清く正しいリズムの音声が再生されて彼女が話し終えるのを待つ。
    村上春樹の解説本とはそういったものだ。

    ひとつの小説から世の中の理へと帰納する。
    あるいは、文学の本質に迫ろうとする本は解説本というだけの価値では留まらない。

    そして、それがこの本だ。

  • わたしは中1から村上春樹が好きで読んできたし、何度も何度も読んだけど、わたしの読み方はまだまだだなあと思った。
    こんな読み方があったんだ、と驚くと同時にこれだけ何度も繰り返し読んで来てもまだ新しい面がいくつもある春樹の小説は本当にすごいと思う。春樹の小説が好きなのは何度読んでも違った発見があって、何度読んでもわからなくて、でも居心地が良いから何度でも読めるためだと思う。
    しかし内田さんが春樹論を書いてるとは知らなかった。ソシュールについての文章を読んで、この人は頭も人も良さそうだと思っていたが、無意識のうちにわたしの好きな価値観の匂いを感じ取ってたのかも。やっぱり春樹の小説が無意識レベルまで深くわたしの根っこに関わってるんだと思う。
    内田さんのわかりやすくリベラルでユーモラスな語りもとても良かった!素敵な人だなあ。他の作品も読みたいです!

  • お蕎麦屋さんに置いてあった本。「ご自由にお持ち帰り下さい」とあったので、弟がもらってきた本を弟より先に読了。この方は、本当によく村上春樹を読まれてるなという印象。共感できるところも多々あった。今日はちょうど、ノーベル文学賞の発表日。村上春樹さんが授賞されたら私もうれしいし、(授賞するにせよ、しないにせよ関係ないかもしれないが)また彼の小説を読みたくなるだろう。

  • もしかしてこの本に書かれているように、村上春樹さんの作品が「誰も気付かないけど世界的に共通して失われたものをテーマに書かれている」ために読者が増えている…のかもしれないな。「文化的雪かき仕事」とは「小説」であり「バー」であり「音楽」や「映画」でもあるのかな

  • 「100パーセントの女の子とウェーバー的直感について」という最後のめちゃくちゃなエッセイが好きですね。

  • もういちど~の方に合わせて書きます

  • 現代中国で村上春樹は絶大な人気を誇っているが、それを「現代中国の若者の孤独感や喪失感と共鳴するから」というふうに説明するのは、ほんとうは本末転倒なのである。そうではなくて、現代中国の読者たちは、村上春樹を読むことで、彼ら固有の「孤独感や喪失感」を作り出したのである。

  • 村上春樹は評論家に評判悪いと初めて知った。理由はなんとなくわかるけれど、評論家に受けがよかったり悪かったりすることで、小説の面白さが変わるわけでもないし、どっちでもいいや。小説とか音楽とかを、好き嫌いで語ることができないというのは因果な商売だなあと思う。
    まあそう言い出すと、村上春樹を読み解く試みも無意味ということになるんだけど。まあ、無意味だなあ。

  • インド人も他のどの国の人も村上春樹の作品に共感し得るのは雪かき仕事が人間にとってとても大切な仕事だと皆知っているから。内田先生の本を読むと家事を楽しくやれるような気がします。

  • なるほど。うなぎを交えた三者面談が小説には必要なのか。なるほど。

  • 村上春樹の苦手感を克服するために手に取った。

  • 春樹の本を最初から順番に読み直したくなった。

  • 「自分がして欲しいこと」を考量する人間より「自分がしてあげられること」を考量する人間の方が健康的、して欲しいことを考量するということは自分に欠落しているものを査定するのであるからという趣旨の文章に納得です.
    センチネル(歩哨)、雪かき仕事の大切さ.

  • 「死者の生者への関わり」
    「激しく欠けているもの」
    こういったテーマが通低していたとは…。もう一度、小説読みたくなった。
    特に羊を巡る3部作あたり。

  • 内田樹氏は 斬り込むポイントが うまいですね。
    キイワードのほじくり出し方が すぐれていると想う。
    「批評とは?」 「父の不在」 「倍音」 

    家族とは という提起も 
    内田樹氏と ムラカミハルキは共通性があるようだ。
    『親と子が何でもはなせる楽しい家庭』という標語に
    ムラカミハルキと内田樹氏は 考える。

    ムラカミハルキは言う
    『親と子が何でもはなせる家庭というのは本当に楽しい家庭なんだろうか?と僕はその標語の前に立って、根本的に悩んでしまう。・・・僕は思うのだけれど、家庭というのはこれはあくまで暫定的な制度である。それは絶対的なものでもないし、確定的なものでもない。
    はっきり言えば、それは通りすぎていくものである。不断に変化し移りゆくものである。そしてその暫定性の危うさを認識することによって、家庭はその構成員のそれぞれの自我をソフトに吸収していくことができる』

    家族をつくり始めたときから 
    子供が産まれ 子供が成長して 学び 働き始めるころに
    子供は巣立ち、そして 子供は 家族をつくり始める。
    家族は 時間の流れの中に移ろう・・・
    毎日毎日が 変化している。
    これが 家族であるということはない。
    全員集合できる家族は 幸せである。

    内田樹氏は言う
    『家族というのは誰かが抜けないと、誰かが入れない「椅子とりゲーム」に似ている。つねに「誰かが足りない」という感じを共有する人々、実はそれこそが家族なのだ。・・・家族を条件づけるのは、「共生」や「充足」ではなく、「欠席」と「不在」なのだ』

    不在に思いをはせる・・・それが 家族ですね。
    他人には 思いをはせることはない。
    喪失感が じっと染み渡るのが 家族だからこそ・・・

    そして 内田樹氏は 家族というものを結論つける。
    『家族とは誰かの不在を悲しみのうちに
    回想する人々を結びつける制度である。
    だから、家族はほんらいそのメンバーを幸福にしたり、
    その欲求を満たすためにあるのではない。
    家族にはそんな機能はないし、そんな機能も求めるべきでもないのだ。
    それは、遠くから、悲しく歌うものなのである。
    そして、その歌に唱和する人たちを固く深く結びつける制度なのである』

    悲しく 引き合う ことが なによりも 家族の意味となる。

    内田樹氏は ムラカミハルキの世界性を獲得したのが 
    『父の不在』であるとした。
    私は ムラカミハルキの小説には 家族がないなぁ・・・と思っていた。
    作品には ばらばらな個人が 蠢いている。
    それが ムラカミハルキの エルサレムの受賞スピーチを読んで 
    ムラカミハルキの中での『父親というもの』が 
    きわめて重要な意味を持っていることをはじめて知った。

    父親不在 で物語を構成する・・・ということが
    history を 遮断し story をつくる作業に はいるということか。

  •  まだ「ノルウェーの森」しか読んだことがない私には、これからの村上文学に対する良い道しるべとなる本でした。

  • めっちゃ面白かった!
    村上春樹の小説を片っ端から読みたくなった。

  • 村上春樹の小説を読んで感じるけどうまく言葉に表せないことを、とても上手に言語化してくれた内田氏に大感謝。読みながら、そうそう、そうなんだよね。私が言いたかったことってそれなのよ!とかなり興奮してしまいました。他の著書も読んでみたくなりました。

  • ところどころ難しい表現があるも、おおむね理解。
    村上春樹の作品は好きで読むけれど、理解できているかどうかは不安だった。けど、村上春樹の文章を読むと、荒らされてぐちゃぐちゃだった部屋(気持ち)が、だんだんと整理され、家具やら何やらがあるべき場所に戻っていく感じ(うまくいえないけど)が実感としてあった。
    この本を読んで、今までの自分の村上春樹の読み方はアリと言えばアリなんだなと思えた。

  • 村上春樹の世界性、については前々から興味があったものの、わたしは村上春樹の小説にあらわれるあの『非日常性』にあまり惹かれない。それが、今まであまり村上春樹の作品を没頭して読めなかった理由。でも、村上春樹はたぶん、自分の本を必要としていて面白いと感じる人だけ読めばいい、と言っている。村上春樹の小説を面白いと感じる人間の方が文学的感性に富んでいて、わたしはその人間ではないというところにいつも劣等感を感じていたけれど、この本を読んで村上春樹についてはそんなことを考えることすら無意味なのではないか、と思った。村上春樹がキャッチャーインザライで言うところのキャッチャーの役割を社会的に担っているという自覚のもと小説を書いているという内田樹氏の見解に従うのであれば尚更。わたしにはわたしの、村上春樹に対する向き合い方がある。ご本人にとっては不本意かもしれないけれど、それがわたしなのだからしょうがない、と思ってこれからも村上春樹を読もう(もしかしたら読まないという選択肢もあるのかもしれないけど)とおもう。
    それにしても、わたしはなんて底の浅い読書しかしていないのだろうと思って愕然とした。浅薄。恥ずかしい。創出も批評もできないならどうやって生きて行けばいいんだろう。分からない。

  • ドッグイヤーいっぱい。ライ麦畑のキャッチャー、私たちの平凡な日常そのものが宇宙的なドラマの「現場」である、存在しないものを共有する人間の数に限界はない、他の人々が単なる指示的機能しか認めないセンテンスに私だけが「私宛のメッセージ」を聴き取る…などなど、むむむと唸る表現が数々ありました。やっぱり春樹が好きだなあーでもこれからは内田さんの本も読んでみよう。

  • 本書は、「国内文壇であれほどまでに憎まれ孤立している村上春樹が、なぜ世界中で読まれ絶賛されているか」について解明しようとするものである。
    ただ、この本はその目的のために書き下ろしたのではなく、気がつけば溜まっていた「村上春樹に関する文章」を拾い集めてみたというものなのでまとまりはない。
    いうなれば、村上春樹に関する雑文集のようなものだ。

    村上春樹に関する疑問のその一は、「なぜ村上春樹が国内批評家や作家から憎まれるのか」である。純文学を気取る批評家たちに特に嫌われるのだ。かの大作家の強い反対で彼に芥川賞が与えられなかったのは、つとに有名な話だ。
    この答えは簡単で単純だ。そりゃ嫉妬をおいて他にない。
    村上文学は「ローカルに根付かないやら」「血と肉の気配がないやら」...etc もっともらしい理由はいくらでもひねり出せる。しかしやっぱりこれが一番真実に近いのだろう。
    「村上をボロクソにこき下ろす前に、どうして自分の作品が世界中で読まれず評価もされないのか」について3分くらいは考察したほうがよい」と内田樹はいうが、この批評家が一秒でもこの考察を行うことは決してないだろう。
    ゆえに国内の現代純文学は得てしてつまらない。

    第二の謎は、「なぜ世界中で村上春樹は読まれ、評価されているのか」だ。
    村上春樹は国内文壇ではコキおろされながらも、しかしもっともノーベル文学賞に近い日本人作家である。
    それに対する内田先生の答えは、
    「それは、せっせと雪かき仕事をする大切さを知っているから。」
    なぜ、雪かき仕事なのかについては、本を読んでのお楽しみ。

  • >2/26
    ウチダタツルはおもしろい。
    内容はもちろん文章が。よみものとして。
    よみやすく、受け入れやすい。
    それは「これってあれそれなんだってー。なぜかは知らないけど」っていう、一般的に答えを出すべきところをぼかしている、というかわからないままにしているところにあるのかなと思った。
    ええ!?ってなるより、そりゃそだよねって思って、受け入れるのだ。
    普通だったら、そこわかんねえのかよ!!って言いたくなるけどね。

    >3/3
    おもしろかったー。胸に迫るものがあった。
    p204「『邪悪なものが存在する』ということ」や
    p227「ふるさとは遠きにありて思ふもの」や
    p227「「なんだかよくわかんないけど、だいたいこんな感じ?」」など。
    そうなんだよねー!それあるあるってちょっと感動してしまった。
    となると私って結構考える力(感じ方?)をもっているんだろーか?わかんね。
    んで、ウチダタツルは凄い人で文章もおもしろいんだけど、更に上もいる。
    2/26で書いた(思った)ようにつきつめたところで、彼は「なぜかは知らないけど」とか「ぼくはわからないけど」とそこで止まる。
    うん、それが「不能の感覚」とか「知の節制」なのだろうけど、そこを飛びこえちゃう人も、いるんだろう。
    それが、次世界の知の枠組みをつくる人。
    それとも―それこそが新しいフレームなのだろうか。
    ちょっとワクワクするなぁ。
    そしてこれにワクワクすることができる自分ってどの程度にいるの?って思わずにはいられない。
    そしてそして思った瞬間、自分の小ささにしょんぼりするのさ。

    (※2010年手帳より)

  • 村上作品にはこんな読み方もあるのか、と感心した。内田さんの村上作品に対する理解はすごく深いし、大変参考になった。特に「うなぎ」と「雪かき」と「センチネル(歩哨)」の話が興味深かった。

  • 語り口は易しく面白いが、言っている内容は難しい。久しぶりに知的な快感を味わわせてくれた。村上春樹論で正鵠を射た感じを与えられたのは初めて。

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村上春樹はなぜ世界中で読まれているのか? デビューから『アフターダーク』までを貫くモチーフとは? なぜ文芸批評家から憎まれるのか? 村上春樹が発する倍音とは? 雪かき仕事はなぜ世界を救うのか? ベストセラー『下流志向』のウチダ教授がハルキ・ワールドの秘密を解きあかす画期的な文学論登場。

「私たちの平凡な日常そのものが宇宙論的なドラマの「現場」なのだということを実感させてくれるからこそ、人々は村上春樹を読むと、少し元気になって、お掃除をしたりアイロンかけをしたり、友だちに電話をしたりするのである。それはとってもとってもとっても、たいせつなことだと私は思う。」(本文より)

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