ジャン・シベリウス 交響曲でたどる生涯 (叢書ビブリオムジカ)

著者 :
  • アルテスパブリッシング
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本棚登録 : 19
感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903951676

作品紹介・あらすじ

「興味深い史実とわくわくするような新鮮なエピソードにあふれ、
作曲家シベリウスとその作品が生き生きと立体的にうかびあがってくる。
北欧での豊富な音楽経験を持つ松原さんならではの魅力的な著書である」
──大友直人[指揮者]

北欧随一のシンフォニスト、シベリウス。
日本を代表する合唱指揮者がその音楽の魅力と人生の深奥にせまる!
[詳細な作品表・年譜・索引付き]

感想・レビュー・書評

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  •  本書が出るまで、2000年刊、フットネンの『シベリウス──写真でたどる生涯』が最新のシベリウス評伝であったので大歓迎。著者はフィンランド留学歴のある合唱指揮者である。合唱、とりわけ男声合唱の分野でシベリウスの貢献は大きいのだそうだが、一般の音楽愛好家に馴染みの薄い男性合唱曲の話ではたまらないというのは杞憂で、副題のとおり、交響曲とそれに準じた作品を中心に論じつつ、生涯を追っていくという構成になっている。
     取り上げられる曲は、7つの交響曲と、作曲者自身も交響曲あるいはそれに準じたものと考えていた《クッレルヴォ》《レミンカイネン組曲》、加えて《フィンランディア》と《タピオラ》、そしてヴァイオリン協奏曲である。その間に簡潔に伝記的な記載が差し挟まれていく。
     作品解説は時に文学的になり、おおむねCD解説程度で、あまり専門的な分析には入り込まない。『20世紀を語る音楽』にも紹介されている、ヘポコスキの「旋回形式」についての言及もなく、シベリウスの音楽の伝統性と革新性についての見通しが述べられていないのは著しく不満が残る。というのも伝記的事実についても、そもそもさほど劇的な展開のあるわけではないシベリウスであるから、本書全般に淡々と薄い感じが漂う。
     どんな平坦な人生であれ、ひとの一生に入れ込んで記述するということは、そこから劇的な何かを取り出すことになるのではないかと思うのだが、本書ではそういう力動は希薄である。それがまたシベリウスらしいといえないこともないのだが。
     他方、参考文献を見ると著者はフィンランド語にアクセスできるらしく、晩年の秘書レヴァスの手記などに由来する記述には他では読めないエピソードもある。とりわけ、娘たちの証言は興味深かった。また、本書の特徴は随所に著者の熟知した合唱音楽への言及があり、交響曲と交響詩だけではないシベリウスの創作の厚みを垣間見せてくれる。
     装丁はとてもよい。それから人名索引と年譜、作品表は非常に充実しているので、シベリウス・ファンは必携であろう。

  • 【新着図書ピックアップ!】東京混声合唱団の正指揮者、松原千振さんによるシベリウス評伝。読んでいると行間からシベリウスの旋律がこぼれ出てくる。それにしてもショックだったのは、私の大好きな交響曲第2番・第2楽章の導入のメロディを「サナダ虫」と表現した指揮者がいたこと…。確かにモゾモゾしてる感じがするけれども!そういう風にしか聞こえなくなってしまったじゃないかー(`口´)

    [New Book!] The critical biography of Jean Sibelius written by Chifuru Matsubara, the official conductor of Tokyo philharmonic chorus. It is like the harmony of Sibelius spills from the lines. The author's name Chiuru is written in Chinese characters of "thousand" and "swing". How suitable name for a conductor it is!

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著者プロフィール

合唱指揮者。
国立音楽大学およびシベリウス・アカデミーに学び、マスタークラスを修了。E.エーリクソン、D.-O.ステーンルンド両氏に師事。
1978年よりヘルシンキ大学男声合唱団、フィンランド放送室内合唱団、タピオラ合唱団などで活動。1987年に北欧で発見された単旋律聖歌の復元および蘇演を担当。
1980年代後半から欧米のプロ合唱団に客演指揮、エストニア・フィルハーモニー室内合唱団、エストニア国立男声合唱団、ポーランド室内合唱団、ヴァンクーヴァー室内合唱団などとしばしば共演している。
1997年、東京混声合唱団の常任指揮者となり、2013年から正指揮者に就任した。
著書に『合唱名曲ガイド110──ア・カペラによる混声合唱』(共著、音楽之友社)、訳書にE.ポホヨラ著『世界をつなぐ歌の橋──タピオラ合唱団の音楽教育』(音楽之友社)がある。

「2013年 『ジャン・シベリウス 交響曲でたどる生涯』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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