スーパーカー誕生

著者 :
  • 文踊社
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  • Amazon.co.jp ・本 (825ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784904076088

感想・レビュー・書評

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  • 鬱の自宅療養中に図書館通いしてつまみ読みしてた本。気づいたら閉架になっていたので、なら買いましょうと購入。それでも何年か積んでいたのをついに読んだ。

    自動車雑誌というのは大半がメーカーが配布した資料をアレンジして作られている。雑誌の記事をうわべだけ追っていてはクルマは面白くならない。しかし面白い記事が書けるライターはめったにいない。福野礼一郎氏はその中で際立っていた人物。

    氏の本でフェラーリ365GT4BBについていろいろ知ったが、さすがに「なぜ」と問うには至らなかった。

    同じ記事を読んで「なぜ?」を抱き、イタリアまで取材にいった人物がいたとは!

    しかも記事を読むと無茶苦茶面白い記事を書く。自動車雑誌のライターが全員このレベルだったらどんなに素晴らしいことか!!!

    スーパーカーの誕生には戦後のイタリアの高度経済成長時代がかかわっているが、その主役は大学を出てすぐ就職し腕を発揮した若いエンジニア。ダラーラやスタンツァーニは1936年生まれで、ミウラの開発は30歳になるかならないかという時期。戦前の日本の航空機開発と同じような活力がそこにみなぎっていたことになる。これがスーパーカーの魅力の源泉と見て間違いない。

    こんなことは沢村氏の取材と記事がなければ知ることはできなかった。スーパーカーにとってもっとも大切なことををブームから40年以上過ぎてようやく教えてもらったと言って過言ではない。

    とはいえ一人の身体にこれだけの内容が担われているので、若干のほころびはある。誤字がわりと目についたし、鋼管のねじり剛性のところもどうかと思うところはある。

    しかし、他の多くのライターは自動車のねじり剛性が何によってどう実現されているのかなど説明したことがない。それに比べれば技術的な内容を理解する努力を重ねている分はるかに誠実だ。また、インタビューなどの文系領域の仕事は他人にそうそう真似できない領域にある。

    昭和の時代にスーパーカーに心ときめいたおじさんたちは、ぜひこの本を読んでほしい、心がときめいたことにはしっかりとした理由がある。そして、このときめきを復活させることが、停滞した日本の状況の解決の糸口になるはずだと信じる。

  • 「高性能でミドシップの市販車」たるスーパーカーの歴史を描いた大著。本書は時代の大きな流れの中での何代(台)にもわたるクルマの進化と人間模様を描いた大河ドラマのようである。

    スーパーカーは決して何でもありなクルマではなく、「高性能」「ミドシップ」「市販車」という制約を開発者とメーカーの知恵と決断で乗り越えた歴史の積み重ねであることを教えてくれる。

    実車の写真はわずかであるものの、それぞれのクルマのエンジン、キャビン、駆動系のレイアウトを示した側面図がそれを補い、また、クルマの性格を雄弁に語っている。

  • なんだこれ、すいすい読めておもしろいぞ・・・!
    しかしもうちょっと写真を大きくしてほしいと思ったり。スペースはあるんだし。

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著者プロフィール

1962年東京都台東区生まれ。生家は浅草で和菓子屋を営み、子供のころから職人の仕事を間近に見ながら育つ。早稲田大学第一文学部(美術史学)を卒業後、編集仕事を経て独立し、自動車評論家となる。抜きんでた機械設計の分析力を核に、理論派として鋭い設計評価を行うほか、試乗テスト時には、常にエアゲージや巻尺などをはじめとする7つ道具を持参する実証派でもある。クルマの運動性能とその構成要素に関する分析力では定評があり、自動車専門誌各誌に辛口の評論を展開している。また、内外問わずクルマに関する多数の書物を収集し、特にミドシップについては、長い年月をかけて過去に生産された全ての市販車や発表済みプロトタイプカーのデータを独自のフォーマットに落とし込み、比較分析するという地道な研究家の一面も持つ。近年ではグッドデザイン賞の選考委員を務めるなど、さらに活躍の幅を広げている。著書には『巨匠が愛したフェラーリ女優が恋したモーガン』(三栄書房刊)、『スーパーカー誕生』(弊社刊)、『午前零時の自動車評論』シリーズ(弊社刊)、『自動車小説』(弊社刊)、『自動車問答』(弊社刊)など。

「2020年 『午前零時の自動車評論18』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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