わたしたちの猫

著者 :
  • ナナロク社
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本棚登録 : 368
感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (112ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784904292709

作品紹介・あらすじ

人の心には一匹の猫がいて、そのもらい手を絶えず探している。自分で自分を飼いならすのはひどく難しいから、だれもが尻尾を丸め、人のふりして暮らしている。
恋する私たちを描く、文月悠光の第3詩集。

感想・レビュー・書評

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  • 文月悠光さんの詩集は第一詩集も第二詩集も拝読したのですが、あまりにも感性が若い時にかかれたものであるせいか(第一詩集は14歳から17歳の時に書かれ、中原中也賞を受賞されています)それとも、私の感性がにぶいのか、とても難しくかんじました。
    この2016年に出版された、19歳から5年間のあいだに綴られた「恋にまつわる詩」を集めたというこの詩集は平易で、たいへん読みやすかったです。

    一番最後のページに載っている「物語の恋人」は、物語の主人公に恋をしているのでしょうか。それとも読書の好きな恋人がいるのか、物語を書く恋人なのかよくわからないのですが、本に関する恋の詩なので、ブクログにふさわしいと思ったので紹介します。

    「物語の恋人」

    読みたいから会いにいく。
    走り出すバスの中、
    本を開いて冬をはじめる。
    なつかしい冒頭の鮮やかさ。
    彼のまるい背中が、一冊の本に綴じていく。
    わたしの好きな人は皆、物語を生きる。
    いつだってペンを片手に
    次のページへ息吹を傾ける。
    この本のどこか、
    ふたりで見た雪のことも記されるのだ。
    文字はしんしんと
    手のなかに降り落ちていく。

    (一行一行に線を引きながら、その人はかなしいことを飲み込もうとしていた。蒸発する雪たちの痛みが打ち寄せて、手袋のなかひっそりと、ゆびさきが割れた。余白を分けてください。あたたかな息を吹き込んでください。きみにもらったことばでわたし新たに語り継ぐから)

    かつての恋人たちのくせが乗り移ったまま、
    冬の車窓に白く残されている。
    物語りの終わりに付された「。」のように
    消しがたく、在る。
    その一行の集積で
    わたしは城を築くだろう。
    あまたの「。」を踏み切って
    気高い冬の白線を去る。


    「愛は比べようもなく」「ばらの花」「主人公」「耳のはばたき」「迷い猫」もよくわかる気がしました。


    あと、巻頭の序文の題名のない詩。
    とても淋しい詩だと思いました。
    泣けました。



    あなたが誰かのものになっていく。
    触れることもせず、
    祈るように見つめるわたし。
    彼らの暮らす水槽は
    あまりに澄んでいたから。

    • まことさん
      kanegon69さん♪明けましておめでとうございます!こちらこそ今年もどうぞよろしくお願いします(__)
      今年も、kanegon69さん...
      kanegon69さん♪明けましておめでとうございます!こちらこそ今年もどうぞよろしくお願いします(__)
      今年も、kanegon69さんのブクログでのご活躍、お祈りいたします!
      素敵な本のご紹介楽しみにしています♡
      2020/01/01
    • やまさん
      新年明けまして、おめでとうございます。
      今年も宜しくお願い致します。
      いつもいいね!有難う御座います。
      やま
      新年明けまして、おめでとうございます。
      今年も宜しくお願い致します。
      いつもいいね!有難う御座います。
      やま
      2020/01/01
    • まことさん
      やまさん♪新年明けまして、おめでとうございます!
      今年もよろしくお願いします(__)
      こちらこそ、いつもいいね!ありがとうございます。
      ...
      やまさん♪新年明けまして、おめでとうございます!
      今年もよろしくお願いします(__)
      こちらこそ、いつもいいね!ありがとうございます。
      やまさんにとって、いい年になりますように!
      2020/01/01
  • 恋と言って

    「恋」と言った途端 過ぎていく 余韻

    鯉を見た時

    「鯉」と口に出したら もう 揺れる水面と 赤い尾が 流れていく

    その輪郭を なぞるだけの 確かな恋を 私は知らない

    触れられないものを 言葉で描き出せるという 不思議を
    奇跡のように思う

    知らないものに 触れても 分かったことにはならない 
    その 遠すぎる 隔たりを 言葉が 超えていく

    空に憧れた
    手を 伸ばしても 触れられない月と重なる

    その一瞬は恋に似て

    ――あぁ… だから私は 言葉に恋をしたのだと 思った

  • 付き合ってはじめてのクリスマス、何がほしいかきかれ、この詩集を選んでプレゼントしてもらいました。心が弱っているとき、どうしようもなく不安なとき、寝る前にゆっくり読むと、ふしぎと穏やかな気持ちで眠れます。この詩には、人の心を落ち着かせる力があります。

  • 小学生の頃に理科の授業で手首の脈の位置を確認しました。ドクドクドク。脈打つ音と指先に伝わる振動は、生の証。うわ、気持ちわりぃ!と自分の脈をはかりながら男の子が言ったのを私は未だに鮮明に思い出せる。優しい君が生きている証。ちょっぴりビビりな彼の意外な一面が可愛かったわ。
    『ねえ、もう少しここにいてよ。』
    何度テラスでそう呼びかけたかしら。好きなのに。好きで好きで、ぎゅーってしてあげたいの。でもあなたはいつだって気まぐれで、私が呼びかけた時ばかりそっぽを向いて、尻尾をふりふり私を弄ぶの。もう、ツンデレさん♡でもそんなあなたが、好きよ。
    大好きな人と、同じ日に同じ夢をみれたらどんなに素敵かしら。そんな妄想を私はよくするの。幸せな夢を一緒にみたい。怖い夢、戦闘ものは一緒に闘って頂戴よ。バキューンバキューン!そしたら目が覚めた瞬間、私は貴方に伝えるわ、貴方のハートに撃ち抜かれたわ♡

  • 恋にまつわる詩集。
    猫をモチーフにした詩が多く、心を猫に喩えたり、傘に喩えたり、象徴的な表現が多くて面白い。
    ふつうに読んでいても意味が分かりにくいぶん、じっくり読む必要があるのもいい。
    ただ、意味がわからなくても「いまこの詩の中の二人はうまくいっていないんだな」とか、状況はちゃんと伝わる。

    恋の歌って、恋をしているかしていないか、もしくは恋に焦がれているかいないかによって響き方が全く違うよね。
    それは友情とか親子愛とかでも同じかもしれないけれど…。
    誰かを恋しく思う状態って流れがあるからなぁ。

    文月さんの比喩表現は、いつも繊細だし、読んでいるとギュッと寂しい気持ちにもなる。
    一人でいたくないのに、どうしようもなく一人であることを抱えている感じ。

    特にこの詩集は恋愛、それも片思いを表現した詩集だと思うので、読んでいると思春期の頃の不安定だった自分を思い出す。
    思春期のころは恋なんてしてないんだけど、自分のことを必要以上に感じ取っていた時期。

    「誰のものにもなれなくて/人はみんな迷い猫だ」
    「はじまることが苦手な人は/春にくじけていくものだ」ってフレーズは、今の私自身にも当てはまって、自分は寂しがりなんだな…と気付かされる。

    恋の歌でもあるけれど、人とのつながりに対して、なんらかの不安を抱える人にとって、「ああ、私の中にある寂しさとか不安の正体ってこれかも…」と思うかもしれない。

  • 文月さんの詩集

  • 【静大OPACへのリンクはこちら】
    https://opac.lib.shizuoka.ac.jp/opacid/BB22588778

  • もう、干からびているからか、恋の詩は全く響かない。恋の詩集と知っていたら、買わなかったろうに。。

    清原伽耶さんのInstagramに載ってたので、すぐ買って読みました。というか、パラパラかな。入り込めない。


    こんなにも「あとがき」に共感したのは初めてで…

    by 清原さん


    あとがきは、よかったなあ。

  • きれいな装丁にひとめぼれ。
    どの言葉も好きだけど、女の子という名のわたし が特に響く。
    雨宮まみさんの書き下ろしエッセイもよかった。

  • 詩はわたしにはピンとこなかったかも。

    "生きるということが「延長」である限り、「あなた」と「わたし」の関係も、絶えず星のように動いていく。その変わり続ける地図に惑いながら、わたしたちは一匹一匹、見えない尻尾を泳がせています。"(あとがきより)

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著者プロフィール

詩人。1991年北海道生まれ。16歳で現代詩手帖賞を受賞。第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』(ちくま文庫)で、中原中也賞、丸山豊記念現代詩賞を最年少18歳で受賞。詩集に『わたしたちの猫』(ナナロク社)など。エッセイ集に『洗礼ダイアリー』(ポプラ社)、『臆病な詩人、街へ出る。』(立東舎)。「空気の日記」を執筆した場所は東京。当時の恋人のアパート/自宅マンションで書きました。

「2022年 『空気の日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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