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  • Amazon.co.jp ・雑誌 (110ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784904671849

感想・レビュー・書評

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  • 名門大学の多くは研究を重視するリサーチUniverstiy。伝統的な意味でのリベラルアーツ教育に欠かせない経験をさせること、つまり経験豊かで献身的な教員の始動の元で学生が教養問題や概念について意見を交換し、人生の目的を考え、それまで常識と考えてきたことに疑いを抱くような経験をさせることを重視していない。

  • p.64 日中軍事衝突のリアリティ -このままではエスカレーションを制御できない
    2014年の中国軍人の発言より、中国も、わずかな不注意が世界第2位と第3位の経済大国の間の予期せぬ紛争に発展することを危惧していることがわかる。そうであるにもかかわらず、中国公船は連日日本領海を侵犯し、対中スクランブルの回数は高い水準で推移しているし、両国の世論の敵対感情も高まっており、東シナ海の問題には進展がみられない。
    東シナ海の海上と上空が不安定なため、誤算や偶発的事件が大規模な危機にエスカレートしていく危険は十分にあるにも関わらず、日中間の危機管理が制度化されていないために、危機に直面した際に両国が迅速かつ効果的に協調して対応する能力には限界がある。
    2014年11月のAPEC以降、海上連絡メカニズムの協議が再開され、2015年には二国間安全保障対話も再開されるなど、雪解けの気配はあるものの、交渉の再開は最初の一歩に過ぎず、前途には、実際にメカニズム構築の合意に達し、それを効果的に履行していくという課題が待っている。
    海空の連絡メカニズムの内容は、防衛当局間のホットライン開設、定期的な会合、海空での通信手段の共通化が予定されている。
    中国が交渉のテーブルに戻ったのは、「新常態」を確立したからだという見方もある。そうだとすればメカニズム構築は中国にとって安全保障のためではなく、日本側からの譲歩を引き出す手段でしかない可能性もある。中国が主張する、領土問題の存在を日本が認めることも考えられない。交渉成立の見込みは薄い。
    メカニズムは利用することに価値があるが、海南島事件において、中国は、米中危機管理メカニズムのホットラインを通じた米国からの呼びかけを2日間も無視し続けた。ホットラインが構築されても、有効に利用されるとは限らない。

    防空識別圏問題における中国軍戦闘機の異常接近は海南島事件の再来となりかねないものだったし、護衛艦「ゆうだち」にたいする射撃管制レーダーの照射は、射撃管制レーダーの照射は国際法上武器の指向、攻撃の着手と解されることから「ゆうだち」には正当防衛の権利もあったと思うし、部下の命を考えれば指揮官にとってかなり悩ましい状況だっただろう。現場の自衛官の冷静かつ自制の効いた対応により事態がエスカレートすることはなかったが、自分の命、部下の命、日本の命運を現場の自衛官にのみ負わせている、危機の回避を現場に依存している現状は解消されなければならない。
    中国は海上連絡メカニズムを歴史認識問題と結びつけて交渉しようとしているとの見方もあり、安倍政権下でこのメカニズムが構築できるのかは疑問だと思った。中国の高級将校も東シナ海海上・上空の危うさを認識しているというのは希望というか、解決の糸筋なのかもしれないが、射撃管制レーダーの照射や航空機の異常接近などの挑発的な行動をみていると、武力衝突ギリギリを綱渡りをしながら中国に有利な状況、交渉条件を作り出そうとしているのは明らかで、難しい交渉を迫られていると思う。尖閣の領土問題化、歴史認識、防空識別圏、日本が譲歩できる部分はあるのか、中国に譲歩させることができることはないのか。中国はAIIBの信頼向上などのために内心は日米の参加を求めているともいわれるが、こういうのも交渉に利用できないか。双方降りることができない軍事的な衝突に向けたチキンレースにだけはしてはならない。

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