- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784907239145
作品紹介・あらすじ
他民族を嘲笑したり、排外主義を煽る「ヘイト本」は、すでにオワコン(終わったコンテンツ)となっている。
しかし、それらがどのようにして量産されたかを明らかにせずに、「再燃」を防ぐことはできない。
出版業界に生きるジャーナリストたちが、自ら立ち上がり、そのカラクリを暴くーー
感想・レビュー・書評
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近所の本屋に注文して取り寄せてもらった。でも注文するとき「あれ、在庫ありますけど」って言われたそうだ(注文には彼女に行ってもらった。わたし、そういうの超苦手なので)。店員さんが探したけどやっぱりなくって、そして数日経って「来ました」って電話もらって買いに行ったら、その本屋の棚にこの本が目立つところに数冊並べられてた。ちなみに安田さんのヘイトスピーチの本は、わたしが買ったときはまだ2冊あったけど、その後行ったらもうすべて売り切れてて、で、昨日見たら新しいのが4冊くらい入ってた。
この本。前の「NO!ヘイト」よりも具体的なことが書いてあったのでとても面白かった(ただし前作がなければこの本はできなかっただろうけど)。嫌韓本はどういう人たちがどういう風にして作ってるかとか、内容がすごい興味深かった。嫌韓本って「出したら売れるから」みたいなので作られてると思いきや、そういう面もあるものの、でも出版社によっては、社長がネトウヨだから採算度外視してるとか、読者に向けてじゃなくただ「出版社の担当者の顔を見てる」とか、いろいろ違う部分があることが分かるが、でも、ここに出てくる実際に作った人って全然嫌韓嫌中でも何でもなく、逆に元はリベラルっぽい人?だからこそ、こんなのではいかんと思って、仕事としては辞めて、こういうところで話をするんだろうけどさ。だけど、なんだかねえってちょっと割り切れない思いがするのは確か。嫌韓本で有名なマンガ家でさえ、特に嫌韓の人ではないというのだから。。
後ろの方に出てくる「ヘイト本羊頭狗肉度ランキング」を読んでみても「読んでみたい」と思うヘイト本はなかったなー。目次がちょっと載ってたりするのだが、読むと気分が悪くなりそうなタイトルばかりで、よくこんなのに惹き付けられる人がいるよなと思う。ああいうタイトルに惹き付けられる人って、出版社が出して来た企画書の中の「保守層や韓国に対して批判的な読者が溜飲を下げ」られる人たちってことなんだろうか。
そして、最初「はじめに」を読み終えたときに「なんか、新書っぽくなくて違和感なるなあ」って思ってたんだけど、「おわりに」じゃなく「エピタフ、そしてマニフェストへ」を読んだとき「あああ、なるほど、そうだったのか!」って思った。これ、今や完全にヘイト出版社になってしまった(らしい。わたしは全然知らんかった)宝島社が以前出していた「別冊宝島」のつくりを「手本」にしてたらしいのだ。
「別冊宝島」と言えば、ゲイ3部作と「女を愛する女たちの物語」「変態さんが行く」など、思えばわたしが「性」に目覚めた頃、大変お世話になった本だった。確か、初級朝鮮語の本なんかも何冊か出してたと思う(その当時、ちょっと勉強しようかななんて手に取ってみたけど、難しそうで止めた記憶が)。
本の作り方とか出版社とかにあんまり思い入れがないわたしでさえ「あの出版社がねえ」って思うんだから、実際そういうのに憧れてこの世界に入って本を作ってる人たちにとっては、どんなに衝撃的なことなんだろうって思った。 -
ヘイト本はやはり閲覧注意!である。読むと気持ち悪くなる。
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嫌韓中本に関わる6本の原稿をまとめた本
出版社、編集者、執筆者といった出版に直接かかわった人々について調べた内容が中心。
内容としては、嫌韓中本が商業出版された経緯、デマゴギーへの非難、といったところ。
彼らが憎むヘイト本と同じように、敵が悪で愚かであるかについて語ることに熱中するスタンスにはちょっとうんざりさせられた。
左、右、どちらの側に立っている人間も、殴りやすい悪を求めているだけなんじゃないかと、うすら寒くなる。
ヘイト豚でも蹴とばせ、とか、ネットの書き手は相手をナメてる、といった言葉の選び方は支持できない。
後は、ろくでもない本の出版に関わる人をリサーチして問題点を叩くというのは非難しやすいが、出版が成立する理由は、送り手ではなく受け手にあると思う。
なぜ、愚にもつかない関東大震災で朝鮮人が日本人を組織的に襲撃したなんていう嘘が出版されて一部の人に受け入れられているかというと、それを読んで、真面目に信じる人が居るから。出版は読み手が相当数いなければできないが、書き手は電波系の人間が1人居ればどうにでもなる。
しかしながら、この本では受け手の存在は積極的に隠ぺいされ、編集者の「最近は嫌韓本を読む人が少なくなった」
という意見が積極的に引用される。これでは、嫌韓本をめぐる構図はなかなか掴めないのではないかと思う。 -
本書の成立過程について、巻末に掲載されている
おわりに エピタフ、そしてマニフェストへ
に述べられています。本書編集者の木瀬貴吉さんが「宝島とガロで育った」と告白し、その宝島社と青林堂が「ヘイト化」していると嘆いておられます。
本書の編集にあたっては90年代前半までの別冊宝島を「手本」としているという。
「全体の「作り」については、別冊宝島がもっていた賑やかさ、切り口の目新しさ、そして書き手の視点を最優先させることを見習った。書き手によって文体が異なったり、またカタログ的な章があったりする点も、かつての別冊宝島の空気感を醸していると自負する」
さらに書き手については
「多彩な作家が集った旧青林堂の梁山泊感(そのような日本語があればの話だが…)が再現できたのではないだろうか」
宝島もガロも知らない私にはよく分からない形容なのですが、本書が読みやすかったのは確かです。
はじめに 嫌韓反中本ブームを蘇らせないために
で、2015年現在、「嫌韓反中本」がオワコンになっている、と記述されています。
本当にそうか?2017年11月現在、とてもそうは思えないのですが。
実際、梅田の大きな書店に行って近現代史・ジャーナリズム・政治関係の棚を見てみると、「嫌韓反中本」に埋め尽くされています。
そして2015年に本書が徹底論破したはずの関東大震災の朝鮮人虐殺デマ説も、未だに力を持っています。
歴史修正主義は決してオワコンではありません。論破しても粉砕してもゾンビのようによみがえってきます。
これは言論による戦いです。良識ある人々は本書のような本を読んで正しい知識をつけ、歴史修正主義者のデマ宣伝に負けない強さを身につけなくてはなりません。
http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20171124/p1 -
3年ほど前まで、本屋の棚一つを占領することもあった「ヘイト本」。その出版に手を染めた編集者への直撃インタビューとともに、ヘイト本の内容の荒唐無稽さについて論じている本。ブームが去ったからこそ書ける裏話という感じの話題が多くとても興味深く読んだ。