- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784907511395
感想・レビュー・書評
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うつくしく、あたたかく、幸福に満ちたパリでの暮らしの描写に思わず笑顔になってしまう。ずっとこの本の中にいたかった。全編を通してそんなだとくどいな、と思ってしまうところ、急にふとそういった描写が表れるところもいい。ワインではなく「ぶどう酒」と訳されているところが好ましいし食事はいつでもおいしそうだ。実際、ヘミングウェイと妻ハドリーは貧しかったというが、そんなふうに感じさせないのはふたりの暮らしの工夫というか、どうあれば自分たちが満たされるのかを知っているからなんだろうな。
移動祝祭日とはクリスマスのように固定された祝日ではなく、イースターのように年によって異なる祝日のことをいうという。なんてすてきなタイトル、訳し方なんだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
引用。
”もしきみが幸運にも
青年時代にパリに住んだとすれば
きみが残りの人生をどこで過ごそうとも
パリはきみについてまわる
なぜならパリは
移動祝祭日だからだ
どんなに貧しくても、良い生活をし、働く方法のあるパリのような町で、読書の時間をもち、こういう新しい世界に接したことは、大きな宝物を授けられるようなものであった。”
村上春樹のフィッツジェラルド礼賛で、文壇に紹介してもらったのに、存命中ヘミングウェイ自身の名声が超えたので、フィッツジェラルドに悪意ある評価をしていたと伝聞されて、嫌いになっていたものだった。
この『移動祝祭日』で若き日々のヘミングウェイが自分が老いてなお思い出すパリ。貧しくとも、若さがあれば、という意志がとても美しいと思った。
晩年、病気で苦しむヘミングウェイ。人は誰しも同じように苦渋に見舞われるのだろうか。
昼間、心臓発作で死ぬか。
自死か。
いずれにせよ、作品は、今日まで力強く残り、僕を楽しませてくれる。有難い。
Ezra Pound アメリカの詩人。1883-1972
アーネスト・ヘミングウェイはテニスしていた。
エズラがドストエフスキーなど読まずに、フランスの
作家に集中したまえ、と言った
p144
「ぼくはドストエフスキーのことを考えていたんだ」と私は言った。「どうして人はこんなに下手に、全く信じられないくらい下手に書いて、しかも、こんなに深い感動を与えることができるのか」
スコット・フィッツジェラルドとゼルダ。ゼルダは仕事の邪魔をするが、スコットはゼルダを愛しすぎていた。
p155
彼の才能は蝶の羽根の上の粉が織りなす模様のように自然であった。
お金の全くなく、何か書こうとはしていたが、不遇が続く時期。花開くまえのパリだったのだろう。