- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784909917003
作品紹介・あらすじ
山之口貘(1903-1963)。近代・現代を代表する沖縄生まれの詩人。人は、放浪詩人、貧乏詩人、風刺詩人、宇宙詩人、そして、精神の貴族……と呼んだ。
本書は、生涯に198篇しか残さなかった寡作の詩人の作品から135篇を選び、その人生をたどるようにして、5章からなるアンソロジーを編みました。類書と比べ詩の収録数が多いことに加え、一篇一篇の詩を丁寧に扱った美しいレイアウトも特長です。詩論「詩とはなにか」をはじめ、詩の生まれた背景が独自の文体で描かれた自伝的小説3篇が収録されているのも、本書ならではの特典。
感想・レビュー・書評
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【詩とはなにか】
すごい詩人の詩を読んだ。このすごい詩人は山之口貘といい、明治から戦後にかけて生きた人。沖縄で生まれ育ち、絵の勉強のために上京して、詩人になった。
この本には、「住所不定」「結婚と暮らし」「故郷沖縄」「戦争風刺」「歌になった詩」の5章からなる詩集の他に自伝的小説といくつかのエッセイが収録されている。
はじめに「詩とはなにか」という詩論ではじまる。40年近く詩を書いていて詩がなんなのかわからないが、かゆいところを掻いていたのがとまらなくなったようなもの、だそうだ。「座布団」という詩では本当のかゆさではなく生活のかゆさを思い出す。「鼻のある結論」という詩は、汲み取り屋になって生きた時の詩。汲み取り屋のぼくはかゆいところを探して掻いた(書いた?)まで。詩とは何かははっきりわからなかったけど、詩人になるにはかゆいところを探してかきむしればよさそうだ。貧乏ならなおよしか。なんのために詩を書くかについては「鮪に鰯」という詩を紹介することで答えとしている。読んでみて。(カピバラ/本土に沖縄の米軍基地を引き取る福岡の会)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
<渡>
読んだきっかけ,そりゃもちろん高田渡さん。もっとちゃんと書くと息子の漣さんがこの本を紹介している記事をどっかで読んだ事です。まあ,この本の事を知ってからは少し時間が経ってしまったのですが別に今更この本に旬が有るわけでもなくゆっくりと十分に堪能しました。渡さんが貘さんの詩に出会ってそれで曲を付けたり「獏 詩人・山之口貘をうたう」という音楽アルバムを沖縄在住の三線弾きシンガー大工さんたちといっしょに造った背景がなんとなく判ります。
ところで渡さんは貘さんとお互いに生きている時に直接会ってはいるのだろうか。誰かご存じでしょうか?
【読後談】とうとうあまりにも良い共感できる詩が沢山あったので僕はこの詩集を楽天に注文して買いました。もっともっと何回も何回も読んでそして目ぼしい詩に出来れば渡さんのように曲を付けて歌ってみたいなと思いました。今ちょっとうれしいです。 -
昨年の7月19日(著者の命日)に発行されたアンソロジー、なかなか読めなくて、やっと読み終えました。丁寧なつくりの、行き届いた本です。
詩はもちろんいいんだけれど、時代を感じさせる言葉は、吟味され削られていることで、今ではわかりづらいところもあって、むしろ小説の方がわかりよい。歌になった詩はまだわかりやすい。「唇のやうな良心」とかいいです。