クレーン男

  • 童話屋
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  • Amazon.co.jp ・本 (172ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784924684034

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  • お前は何者かと問われたら、誇りを持って職業で答える。クレーンオトコの呼び名には、そんな響きがある。
    (名前で呼ばれるのはレクトロだけ。レクトロにぴったりな名前をつけるなら運転手よりも夢想家だ)

    地上では町の皆んなが兵士という呼び名に変えられていったときも、戦争で焼き尽くされた町が堤防の欠壊で海に沈んだ後も、クレーンオトコだけがその呼び名を捨てずに一人で残り続ける。
    運ぶべき荷物がなくても、動力が切れてしまっても、愛する相棒であるクレーンを見捨てない。(やっぱり彼は「灯台守」でも「釣り人」でもないのだ)

    クレーンオトコは、頑迷な世捨て人や世俗を絶った聖人じゃない。
    ここには、誇りを持って仕事に勤しみ、休日はささやかな楽しみに慰めを見いだす、実直で素朴な価値観がいきづいている。だからこそ、己とクレーンに限界がきたときに、自ら引き際を決めて去っていく潔さと美しさに一層胸をうたれる。

  • 著者自身による挿絵と物語の調和が心地よい1冊。
    町にできた新品のクレーンに魅了された1人の男は、やがて操縦士としてクレーンの上で暮らすようになりました。
    男は町の発展の象徴のように建てられたクレーンから、時と共に移ろう周囲の変化を目にすることになります。
    町の賑わい、クレーン男の華々しい活躍、戦争の勃発・・・。

    読んでいて頭に浮かんだのはバージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』でした。
    クレーンの上から町の盛衰を見守った男の姿とちいさいおうちが、ふとした瞬間に重なって感じれたのでした。

    童話のようですが、風刺がきいていて大人が楽しめる本でした。
    『星の王子さま』のように、読むたびに新鮮な気付きを与えてくれる物語だと思います。
    ほかのライナー・チムニク作品も読んでみよう!

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著者プロフィール

1930年ポーランドに生まれ、ドイツに移ってミュンヘンの美術アカデミーで学ぶ。『熊とにんげん』『クレーン男』など、詩的な文章と繊細なイラストの作品で一世を風靡した。

「2018年 『タイコたたきの夢』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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