- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784990811631
作品紹介・あらすじ
本は工業的に生産され、消費されている。本は確かに商品だが、宛先のある「贈りもの」でもある。「贈る」ように本をつくり、本を届ける10人それぞれの手による珠玉の小論集。〈執筆者〉批評家・若松英輔/編集者・島田潤一郎(夏葉社)/装丁家・矢萩多聞/校正者・牟田都子/印刷・藤原隆充(藤原印刷)/製本・笠井瑠美子(加藤製本)/取次・川人寧幸(ツバメ出版流通)/営業・橋本亮二(朝日出版社)/書店員・久禮亮太(久禮書店)/本屋・三田修平(BOOK TRUCK)
感想・レビュー・書評
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本を世に出す仕事をしている人たちの書いたエッセイ集といった感じの本らしい、という認識で読み始めた。書き手として思い浮かんだのは、作家、編集者、校正する人、挿絵や装丁の担当の人…?程度。ちゃんと考えれば当たり前なんだが、他にも印刷、製本、取次、書店、といった工程/場所で働く人がいて、それぞれの持ち場なりの視座というものがあり、お仕事本的な面白さがあった。
「書き手として思い浮かんだ」人の偏りからもわかるように、私は本と言えばついその内容だとかメッセージみたいなものばかりをその本質だと考えがちだったが、もっとシンプルに、モノとしてここにある本を、愛おしく思う気持ちがむくむくわいてきた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
▼加古里子さんの「かわ」という素敵が本があることを知りました。山から水が湧き出て、川になり、海に至るまでを絵巻物のように絵本にしたものです。連れ合いが知っていて「そりゃ素敵そうだ」と先日買いに行きました。「普通に本になっている版」と「絵巻物になっている(全長7m)版」とが出ています。どうせなら、絵巻物版を買おうと。
▼二子玉川の蔦屋書店で絵本コーナー近くのレジにいた女性の店員さんに「加古里子さんの”かわ”を探しているけれど見つけられなくて」と「検索結果シート」を渡したところ、一瞥してすぐ動き出し「絵巻物の方でよろしいんですね?」と。一瞬も迷うこと無く導いてくれました。これは嬉しい。その店員さんは「加古里子の”かわ”という商品」を知っていた。通常版と絵巻物版があることも知っていた。そして特段語らなくても「これ、良い本ですよね」と笑顔から滲み出てくる感じがとてもほっこりして幸せでした。こういう店員さんがいると「どうせならこの本屋さんを応援したいな」と思ってしまいます。
▼「本を贈る」2018年、三輪舎。若松英輔ほか。(2019年12月に読了)
本を作る仕事に携わる11名が、それぞれ自分の履歴や仕事や本への思いを綴った、コンセプト・エッセイ集とでも言うべき1冊。不勉強で著者の方々はほぼ皆さん知らないのですが。確か渋谷のジュンク堂書店だったかで衝動買いした一冊。
▼編集者、装丁家、校正者、印刷業、製本業、取次、書店営業、書店員、移動書店経営者、そして批評家。それぞれが大体30ページくらい。どれも僕は垂涎モノの面白さ。オモシロというよりも、しみじみと味わい深く、胸打たれて涙ぐむことも。
▼本を巡る業界が覗けるという興味深さもあります。でもそれに加えて、書いている方々が「物量、成果、コスト、エトセトラエトセトラ…」という「ビジネスの現実」以外のところに立脚点を持っていることが、この本の魅力でしょう。
(そういう「ビジネスの現実」を観念的に批判して「俺は違うもんね」とドーダするようなことでもありません。それはそれで、マイナスの方向に走っているだけで、「ビジネスの現実」に則っていることは変わりませんから。)
▼まあつまりは「本が好き」ということ。本が好き、ということは「本を売る」というビジネスの上では、巨視的になればなるほど関わりが無いかも知れませんが、ミクロに考えて本と関わる僕たち一人ひとりにとっては、その「愛」っていうか「ほっこり感」は、嬉しい。アマゾンでポチるのも便利ですが、便利なのと「ほっこりする」のとは違うモノです。肉屋で肉が便利に食べれるんだから、魚屋は要らないよ、というのはあまり幸せではない気がします。
▼店頭で衝動買いした最大の理由は、「モノとしてものすごい魅力的な本」だったんです。装丁、その質感、手ざわり!紙質、文字の大きさ、余白の取り方…全てが、僕にとっては「理想の本」です。全てが、言葉にすると「ざっくりとしていて、シンプルだけど素敵に気が利いていて、手に持ちやすく、目に優しく、読みやすい」。ほんとに、是非皆さんにとにかくブツを手に取ってみていただきたい。電子書籍なんか、泣いて吹っ飛びます。読んでいて、手が、指が、感触が、嬉しくなってしまう。この「本を贈る」というブツ自体に、「本が好き!」、という作り手の気持ちが現れています。
▼と、言いながら僕も読書の過半は「電子書籍、またはアマゾンでポチったもの」になりつつあります。「しょうがないよなあ、便利だし、ウサギ小屋では本棚にこれ以上の場所取れないし」というのが本音です。
それでもこういう本と偶然に出会って、胸打たれると「いかんいかん!俺も汚れちまったな…」と反省させられます。ごめんなさい。 -
本好きの方におすすめしたい良い本です。
このアプリを入れている方ならきっと好きなはず(笑)
本の作成に携わる、
様々な職の方が「本を贈る」をテーマに執筆。
本への愛情や想いがじわっと、つまってます。
小難しい話しはなく、スラスラ読めます。
面白い点はもうひとつ。
表紙が刷数によって違います。
初版はこの画像のとおり、赤
第二刷は緑
第三刷はオレンジ
知った時は「さすが!」と言いたくなりました。
本棚に1冊、そっと入れたくなる本です。
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「本を贈る」という素晴らしい題名で、製本も素晴らしくまさに贈られたというに相応しい存在感の本です。
内容は本に携わる10業種の人々のエッセイとなっています。
装丁や製本だけでなく、印刷や運搬にまで幅を広げて、本を贈るように届けている人々の思いを形にした本です。奥付に印刷会社や運送会社の担当者名が載っている本を初めて見ました。
この中で知っている人は夏葉社の島田潤一郎さんだけでしたが、他の人々の文章を読んでいると如何に多くの人々が本に関わっているかが身近に感じられます。
僕自身、本に関する本が好きでよく読んでいますが、数年前に出た「本のエンドロール」という本を読んで一気に印刷という所まで意識が広がったのを思い出しました。
この本は本好きしか手に取らなそうな本ではあるのですが、本書の中で「本が好きでは無い人にも届けたい」というようなことをBOOKTRUCKの方が書いていましたが、それはとても大事な事だと思います。
本好きは自分で読みたい本を探すので、どういう形であれ日常的に本を手にします。しかし本を常に読む習慣がない人には、ぱっと見て魅力的な本である必要があります。
これには装丁や製本が深く関わっていますね。
「本」に関わっている人々の中でも、特に意識的にものづくりとして本を選んだ人々を選抜しているので、読んでいると本もまだまだ大丈夫だと勇気づけられる作品になっています。
しかしいずれ紙の本は好事家の嗜好品になって、それ以外はテキストデータとしてやり取りされるのでしょう。これは避けられない現実だとはわかっているのですが、何とか本の魅力を少しでも人々に伝えたい。そんな想いを強くしました。 -
本を作る人、というと著者・編集者・出版者、というような職業が思いつきますが、本ができてから読者のもとに届くまでには、その他にも印刷・製本・装丁・取次・書店員と多くの「見えない」方々の手を通っています。
この本では、編集者・装丁家・校正者・印刷・製本・取次・営業・書店員・本屋・批評家と、様々なタイミングで本に関わる人たちのエッセイが収録されています。一人ひとりが思いを込めて本に接していることが分かり、何気なく手に取る一冊の本が今まで以上に貴重で価値のあるものに思えてきます。 -
「本」に関わる仕事に携わる10人のプロによる、愛あふれるエッセイ集。
編集、校正、装丁、印刷、製本、営業、取次…当たり前だけど、沢山の人の手を経て一冊の本が生まれ、そして売るためにまた沢山の人の手を経て読者に届けられる。私自身、元書店員としてその行程の1つに関わってはいたはずだが…今更ながら知ることが多く、目から鱗であった。いやもう、胸がいっぱいである!それぞれの仕事のプロとしての矜持をしっかりと感じ、本を手にするときの気持ちが明らかにこれまでとは違ってくるなと思ったのだった。勿論本書も、エッセイを寄せた人々の手によって作られている。それを思うと何だか感慨深い。装丁や紙質など隅々まで考え抜かれて作られたんだなと言うことが窺えて、とても読みやすくページも捲りやすく、手に馴染む感じが本当に好きだ。
書店員時代、多大な影響を受けた池袋リブロ、人文系に強い取次でとてもお世話になった鈴木書店のエピソードが懐かしく、今はもう存在しないことが残念でならない。業界の厳しい状況を思うとちょっと切ないが、自分なりに貢献していきたいという気持ちがより強くなった。本書から「贈られた」もの、沢山ありました! -
2018年50冊目。
何かが受け手に届くまでの間には、多くの人たちの、多くの手間とこだわりがこめられている。たいていの場合、受け手のあずかり知らぬところで。それはきっと、本に限ったことではない。この本を読むと、本に対しても、本以外のものに対しても、それが手元に届くまでの物語に思いを馳せずにはいられなくなると思う。
この本は、編集、装丁、校正、印刷、製本、取次、営業、書店...と、読者に本が届くまでのリレーの各区間を担うプロフェッショナルたちのエッセイ集。出版業界にいる人間として、どの方のお話にも背筋が伸びる思い。誰もが、著者の思いが届くべき人に届くべき姿で届くように、大事なことが零れ落ちてしまわぬように、丁寧に丁寧に仕事をしている。著者の言葉だけではなく、言葉にならない言葉にまで寄り添おうとしている。
この本を読みながら、自分の手に乗っているまさにこの本に対して、敬意と愛着が増していくのをひしひしと感じられた。印刷技術の発達の要点は大量生産にあると思うのだけど、今自分が手にしているこの本が、たった一冊しかないものすごく稀有なものであるような気さえした。本書の中で藤原隆充さんが仰る「1000冊の仕事ではなく、1冊×1000回の仕事」という言葉に触れてしまうと、「作品」としての本の姿が色濃くなり、大切に読みたい、置いておきたいという思いがぐっと強まる。
独立して活動されている方々が多く、実は起業家精神も学べる本だと感じる。どなたも間違いなくパッションがあるのだけど、暑苦しく息苦しくなるような文体のものはなく、言葉を受ける以上に、自分側から入っていけるようなものばかりだった。本全体を通じて、肩ひじ張らず、とても心地よい読書感だった。本自体の重量や紙質も、それを手伝ってくれたと思う。ずっと手に持っていたくなるような感覚。
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すてきな本を世に送り出してくださり、どの執筆者にも、製作過程のどの関係者にもお礼を伝えたいくらいの気持ちだけど、個人的には、やはり橋さんへ。橋さんの、本への、書店さんへの、書店員さんへの思いには、橋さんの発信を見るたびにいつも胸を打たれていました。あの人への2年越しの思いも、書いてくださり感謝です。しっかり胸に刻みました。来月12日に、もう一度読もうと思います。ご出版、おめでとうございました。 -
一冊の本が自分の手元に届くまでに、たくさんの人が関わり、実際どんなお仕事をしているのか知らなかった。
作家、校正 編集 製本 製紙会社 木を育てる人 取次 販売 などなど。多岐にわたっている。
それにしても、本が好きで本に携わる人たちが書いた文章は、どれもすばらしい。
矢萩多聞さんが好きで、この本を手にした。やっぱり分かりやすくてよかった。若松英輔さんの、柿本人麻呂の歌から、当時の人たたの言葉の持つ力の大きさを伝えてくれている箇所が特に印象に残った。
私は、読んだ本から好きな言葉を抜き出して、2001年からノートに記している。
読み返すと、その時の自分が求めていたことに適した言葉達が記されていて、今でも変わりなく力をもらっている。
だから、言葉の持つ力って色褪せないということを実感している。
わたしは、この本の表紙の字体や紙の手触りや中表紙や、軽さも好みだ。
本に携わる人が、求めてはいないのかもしれないが、パン的にも恵まれる世の中だったら、もっともっと希望があるのにと思ってしまう。
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作られる過程が分からない、生産者の顔が見えないものは身の回りに沢山あるけれど、こんなに身近な存在である本にも、こんなに沢山の熱量と、想いが込められているとは…!
企画から生産、流通、販促…それぞれが志し高く、バトンを渡して手元に届いた本の中でも、一生自分の本棚に並び続けるものは奇跡に近いように感じました。
そんな出会いを生み出せなければ、意味がないという気持ちで仕事をする人たちの存在を、これから本を読む度に思い出すんだろうなと思いました。