結末、吹聴するべからず。
幽霊が見える少年、コーン・シアーと彼を治療する小児童心理学者、マルコム・クロウの擬似親子的心の交流と、幽霊との接触を描くホラー映画。
ネットでネタバレを見てしまった後で見たのが悔やまれる映画だった。結末を明かさないようにとわざわざ告知されているにも関わらず、心無い人間がいたものだ。
だがこの物語の”ある秘密”は決して今の時代では珍しいものではない。公開が1999年なので、既に亜種が幾つも生まれている。今期放送している『がっこうぐらし!』や『化物語』の「まよいキョンシー」などが亜種に当たる。なので結末の衝撃はあるものの、”そういう設定ってあるよね”と感じてしまうだろう。だがこれを先駆的に行ったこと(実際にはもっと前に似たような作品があったらしいが)が重要であり、様々なクリエイターに影響を与えたことこそが重要なのである。
キャラクターに関しては、不器用な人間、秘密を打ち明けられない人間、苦悩する人間ばかりがメイン・キャラクターなので、いわゆるキャラ立ちはない。だがそれぞれ抱えている問題がしっかりしているので、非常にリアリティがある。特にシングルマザーの母親であるコールの母、リン・シアーは大変な境遇だなと思う。離婚はアメリカでは珍しくないことだと聞くが、日本でも離婚は増え続けている。シングルマザーも増え続けるだろう。そんな中、サポートが充実していないことに非常に不安を覚える。母親自身が変なプライドでサポートを受け付けない、という例もあるらしいが……できる限り、シングルマザーが潰れてしまわない環境が充実することを願いたい。
ストーリーに関しては、ネタバレを知っていたせいか、序盤がだるかった。ネタバレさえ知らなければ、ホラーとして楽しめたのかも知れない。終盤は単なるホラーではなく、ドラマティックな展開で物語を締め括る。代理ミュンヒハウゼン症候群の暴露により幽霊の無念を晴らしたり、母親に第六感のことを打ち明けたり、主人公が自身の運命に決着をつけたりなど、ホラー映画の一般的な悲劇的エンディングからはかけ離れている。また、ネタバレに関しては非常に良くできている。伏線をしっかりと張りつつ、映像の見せ方にも気を配っていた。「映像の叙述トリック」の一種と言える作品だろう。
世界観に関しては、幽霊が実際にいる世界。しかも死後の状態がある程度保存される世界で物語を構築している。これらの設定も物語のクライマックスを高めるための一助となっている。
テーマは、「患者を救えなかった医師の感じる責任」または「擬似親子愛」と言えるだろう。特に後者の擬似親子愛は普遍的なテーマで良い。マルコムがコーンのアーサー伝説の劇を笑顔で見守るシーンなど、実際の父親のようだった。母親と良好な関係を築けず、代わりに代理の父親と愛を育み成長し、自身の能力を受け入れ、母親とも和解する。ホラー映画でもあるものの、少年の成長を描いた作品でもあると言える。
映像に関してはさりげなく幽霊を見せる演出が上手い。振り返ったら後頭部に血液がついていたり、顔の反対側に火傷の痕があったり……。
台詞に関しては最後のシアー親子の台詞が良かった。息子が知り得ない秘密を喋り、母親の心を救済する台詞だ。自然に正しく能力を使う様は感動的である。
結末で驚いた映画として有名な作品だが、あまりに有名過ぎるのも困り者だと思う。だがホラーとして、ドラマとして、高い完成度を誇る映画なので、ネタバレを知っていたとしても、楽しめる映画だと思う。
キャラクター:☆☆☆☆
ストーリー :☆☆☆☆☆
世界観 :☆☆☆☆☆
テーマ :☆☆☆☆
映像 :☆☆☆☆☆
台詞 :☆☆☆☆