- Amazon.co.jp ・映画
- / ISBN・EAN: 4988105016170
感想・レビュー・書評
-
ビョーク扮するセルマは、チェコからの移民。プレス工場で働き、唯一の楽しみはミュージカルという空想の世界を創りあげること。遺伝性疾患のため衰えていく視力と闘いながら、同じ病に侵された息子の手術費用を稼ぐため身を粉にして働く毎日。そのセルマにあまりに残酷な運命が待ち受けていた…。
警察官のビルや工場の仲間ジェフたちの助けやミュージカルが慰めになってもセルマに容赦なく襲いかかる遺伝進行性失明やセルマが息子に手術を受けさせるために貯めていた貯金を破産寸前のビルに盗まれ奪いかえそうとした時にビルを誤って殺してしまうなどの不幸、不幸な状況の中でも希望を見出だすために自分の心の中にミュージカルを映し出すセルマの強さ、最後の瞬間まで息子の未来のことを心配するセルマの大きな愛、ビョークがセルマになりきって心の叫びを熱唱する魂の名曲の数々、心を揺さぶる傑作ミュージカル映画。ピーターストーメア、デヴィッドモースなどの演技も印象的です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
~狸~ 相当なタヌキおやじ ~狸~
この監督は性格が悪い、というと語弊はあるが
なんか常に人を試しているんじゃないかと思う。
・ダンサー・イン・ザ・ダーク
・奇跡の海
この2作を観てから
・イディオッツ
・アンチクライスト
を観るとラース・フォン・トリアーって
やっぱ、このおっさんタヌキだなぁと思ちゃうんだなぁ
ホントは偽善をあざ笑っているんじゃなかろうか?
そんな風に見えちゃうあたしもタヌキかぁ
こきおろしても「ドッグヴィル」は好きです。
あのラストが大好き!
バイバイ、トムだもんね。
そうそう、あらためて思ったのは
ミュージカルは苦手 -
眼病が遺伝性であることを知りながら子供を産んだセルマに原罪意識があるのです。障害者に重ねて起こる負の連鎖が重い。ただ、彼女の周りにはいい人が多く、彼女も安易に人に頼らず自立しています。歌い踊る姿には生を実感する喜びが溢れます。彼女の行動が適切であったわけではありませんが、信念を貫いた強さは伝わりました。
映画はエンタテイメントとして存在するだけではなく、優れた表現芸術です。そのため、娯楽や共感を満たす作品ばかりではありません。この作品は心して見る必要があり、見る人を選びます。 -
──芸術的な、あまりに芸術的な
──暗い、暗すぎる
──重い、重すぎる
何故にこの映画のレビューを突然書きたくなったかというと、「夢を与える」を読んで、小説にせよ、映画にせよ、ほんの少し、爪の先ほどでいいからハッピーエンドの要素が窺われるほうがいいな、と思ったから。
綿矢りさと辻村深月の二大天才作家の小説に向き合う姿勢は、やはり微妙に違うのだな、と感じたから。
辻村さんは「闇が深ければ深いほど、そこに射し込む光は柔らかく温かいはず。これからも気取ることなくハッピーエンドを提示していきたい」と語っているので、途中どんなに悲惨な状況になっても最後は救いがあるのだろう、と読み進められるのだが、綿矢さんの「夢を与える」は、読了後、希望ないよなあと思ったら少しつらくなりました。
そのとき、辻村さんが綾辻行人氏から「嫌いな作品は?」と訊かれ「敢えて挙げろと言われれば、ダンサー・イン・ザ・ダーク」と答えたことが頭に浮かび、私も2000年に観たこの映画を思い出したわけで……。
註:「夢を与える」の結末について、綿矢さん自身は「太宰の人間失格ほど悲惨ではないと思いますよ」と言いながらも「もしかしたら主人公の夕子の一生を描けば良い話かもしれない」と語ったところを見ると、実は本人も多少ジレンマがあったのじゃないかな。
小説でも映画でもそうだが、読み終わったあと、見終わったあと、何か救いの部分とか、まだ希望があるとかが見えないと生きる気力が湧いてこない。
まあ、基本的には最後に胸を打つような涙を流させてほしいというのが本音。
映画で言えばエンドロールが流れている間、誰一人として席を立たない、いや席を立つことができない。
場内のあちこちからすすり泣くような声が聞こえてくる、そんな映画が好きだ。
感動に打ち震えて、或いは涙が止まらず、途中のシーンでふと涙と鼻水が混ざった液体をすする音を聞かれてしまうのは仕方ないが、終わったら隣の誰かにそんな顔を見せられなくて席を立てない、という映画が好きだ。
涙顔を見られるのは男としての沽券に関わるし、情けない男に思われるのも癪に障る。
だから、そんな素晴らしい映画を見た後は、エンドロールが終わり場内の照明が点灯されるまではなるべく席を立たないようにしている。
この映画は北欧独特のどんよりとした雲に覆われたイメージで、淡々とその雰囲気で物語は進んでゆく。
音楽は素晴らしい。ビヨークの美しい歌声は胸に響く。
でも。唯一明るさを感じる歌や踊りの場面はすべて空想シーン。
どこかで救いがあるのだろう、こんな目に遭わなくても、ここまで絶望の底に落とされなくても、人間、こんなんだったら生まれてこないほうが良かったんじゃないか、と思うほど悲しすぎて、ひどい仕打ちを受けて、結末まで救いのないまま終わってしまう映画……。
泣ける、確かに泣ける。でも。
つらいです、つらすぎます、胸というか心臓が痛みで悲鳴を上げます。
泣くどころの騒ぎではない。
みぞおちを殴られたとか、転んで骨を折ったとか、自動車に轢かれたとか(それでは死んでしまいますが)、そういう痛みではなく、体の内側から内臓を切り刻まれているような痛み。
そう、あの痛みに似ています。
犯人は石。腎臓結石または尿管結石。
なったことのない人にはわからないでしょうが、「こんなに痛いなら、いっそのこと殺してくれ!!」と言いたくなるような痛み。
同様に、この映画「もう勘弁してくれ、俺が悪かった、頼むから許してくれ!」と叫びたくなるほどしんどい。
ビヨークの歌声は素晴らしく、心に響いて来るけれど、それが救いになるどころか、悲しみをさらに助長させるのだから。
気持ちがずうううんと落ち込んでいく。
いやあ、きつかったですね、この映画は。
鬼才ラース・フォン・トリアー監督の三部作の三作目ということですが、他の二作を見ないで、これをいきなり見せられると沈む……。
ラース・フォン・トリアーってデンマーク人で、これ、デンマーク映画なんですね。
あの国の人たちはとてもシャイです。
日本人よりもシャイなんじゃないですかね。
そうそう、思い出しましたが、皇太子(次の国王)は笑顔が可愛いお兄さんで。
で、その皇太子と結婚した女性がすごく綺麗な人でした。
とりたてて優れた技術があるわけじゃない、豚肉とチーズの輸出量が世界有数という農業国。
でも、世界最高水準の社会福祉国家で、国民の所得格差が世界で最も小さい。
だからなのか、自然や生き物や環境に優しい。
これはパルムドールを受賞したほど評価が高い映画です。
意図は分かる。映像や作り手の思いも分からないではない。
けれど、気持ちが落ちている時に見たら二度と立ち上がれない。
それこそ別の意味で席を立てない。
なんとか無理して立ち上がり、でも映画館を出て道路に向かったら、走っている車の前に思わず飛び出したくなってしまうような、そんな映画です。
少しでも鬱に入ってるような人には、本当に死にたくなってしまうのでお薦めできません。
そうか、逆に躁状態になっている人にはお薦めの映画かもしれない……。
現実はこんなにつらいんだよと。
後味の悪そうな小説を無理して最後まで読んで、救いようのない映画を思い出したら、気が滅入りました。
次はハッピーエンドの小説を読もう……。-
ダイコン読者様
コメントありがとうございます。
私が見たのは12年も前で、記憶だけを頼りに書いたので、本当はそれほどつらい話ではないのか...ダイコン読者様
コメントありがとうございます。
私が見たのは12年も前で、記憶だけを頼りに書いたので、本当はそれほどつらい話ではないのかもしれません(なんという無責任発言)。
というのも、他の方のレビューを見ると「結構感動した」と書かれているのが多く、「そうだったかなあ、私は耐えられん。ラストまで見て愕然とした覚えしかないのに」と違和感がありました。
ですので、私の記憶が正確じゃないのかもしれません。
ただ、案外私のレビューがかなり当たっていて、
見終わったあと、道路に飛び出してしまい、車に轢かれても、補償はできかねますが……(笑)。
2012/03/05
-
-
持たざる人が根こそぎ奪われていくのを、黙って見守ることしかできない歯痒さ。
ビョークの明るさが闇を際立たせる、とてもグロテスクな映画だった。
-
2000年デンマーク
ビョーク、カトリーヌ・デヌーヴ、デヴィッド・モース
何と表現すればいいのでしょうか?
無知蒙昧。
無知ゆえどんどんと不幸になっていくさまが救いようがなく、いたたまれない気分になりました。
後味悪いな。 -
紛うことなき糞映画
死刑回避か息子の目を治すかの選択を迫られて
目を治す方を選択するのだがその選択が独り善がり
息子にとって失明することより母を失うことのほうが
ダメージでかいと思う。死刑囚の息子というレッテルも付けられるし
せめて息子に選択させるべきだったと思う
そしたら母の命を選ぶだろうけどそれでいいと思う
元の案では死刑実行されて息子の手術も失敗するとのことだったらしいが
主演女優がブチ切れて脚本変更したらしい
そこまで突き抜けていたら良かった -
胸糞映画とは聞いていたけれど、本当にすごく胸糞映画でした。芸人の小藪さんはこの映画を「1番嫌いな映画」に挙げているそうですが、その理由は警官のビルがどうしても許せないからだそうです。ほんとにまったくその通りで、色んな胸糞展開あるけれどこのビルの行いほど許しがたいものはない。
しかしこの映画がこれほどまでに胸に迫るのは、主人公の置かれた立場が極限に過酷であるだけでなく、この撮影手法にもあると思います。本編が始まり、まるでホームビデオのような質感や多少のブレのある映像で、最初は冒頭のみそういう演出にしてるのかと思ったら、そうではなく、調べてみたら「ドグマ95」なる手法らしく、高い機材を使わずに日常にあるもので制作するという主義に則っているようでした。このホームビデオ感が、画面に映るものが映画というフィクションではなく、すぐそこで現実に起こっていることのように錯覚させるというか、それだけにジェフや看守のふるまいにひとしお込み上げてくるものがありました。色々ひどい話ですが、ジェフや看守がこの闇のような話の中でほんとに救いというか、私は特にジェフの素晴らしさを称えたくて仕方がない気持ち。ジェフありがとう。なんだかやたらとジェフに肩入れしてしまって、最期を見届けてほしいと言われたのに、執行当日ジェフがいなかったのが私的に気になった。やっぱり見たくなかったのかな。普通に考えたら、そりゃ見たくないよなと思うけれど。
後味は悪いですが、息子の手術が成功したことが観客にとっての唯一のカタルシス。
鬱映画は正直観たいものではありませんが、この独特の撮影手法により感情を揺さぶりかけてくる効果が非常に高いので、映画史に名を刻む作品だと思います。ただ、当初監督が用意していた結末は、息子の手術が失敗したことを知らされ、絶望の中で絞首刑が執行されるというもので、さすがにビョークの反対で内容が変わったようです。その結末であれば、いくらなんでも悪趣味が甚だしいと言わざるを得ず、せいぜい★2つくらいしかつけられません。 -
2000年公開
監督 : ラース・フォン・トリアー
==
失明し行く母親が、息子のために手術費を貯める日々で身に降りかかる悲劇のお話。
自分よりも大切なものを持つ人の行動原理がどれだけふつうの人の感覚を超越した次元であり、その人を大切にするためなら何を捨てても構わないと思うかという、狂気のお話。ストーリーが進むにつれ、母親はどんどん、失っていく。視力に始まり、職、お金、名誉、尊厳、友人、信頼、自分自身の未来… それでもたった一つ、世界が見える人生を子供に遺すという一点において、命を全うするっていうことに向かって。
えぐい映画です。が、何もかもすべてをただ一点に照射することによってでした描けない何かに狂ったようにトライした作品のように思えて。伏線が、ラストシーンに向かってむごい収れんをするのも、えげつないくらいよくできています。
途中の歌は、名曲ぞろい。サントラ単体だったらハッピーに聞けそうだけど映画見ちゃったらもうあかんですね。