飢餓海峡 [DVD]

監督 : 内田吐夢 
出演 : 三國連太郎  高倉健  伴淳三郎  左幸子  三井弘次  加藤嘉 
  • 東映ビデオ
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988101096831

感想・レビュー・書評

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  • <飢餓海峡。
    それは日本のどこにでも見られる海峡。
    その底流に貧しい善意に満ちた人間のどろどろとした愛と憎しみの執念を見ることができる。>

    ※※ラストまで完全ネタバレしています!※※

    質屋から二人組の男、沼田と木島が逃げ去る。その家からは火が出ていた。二人組は、駅でもう一人の復員兵姿の男犬飼多吉(三國連太郎。作中でやたらに「大きな男」と連呼される。三国さんだからね)と合流する。
    三人で電車に乗るが、台風により停車、そして見回りの警察から逃げるようにして三人は電車を降りる。
    津軽海峡から本土へ逃げようとする三人だが、その時沖を運行していた青函連絡船が、台風の直撃を受けた大荒れの海で転覆した。三人組は、救助に来ていた札幌警察の目を盗みながら海に漕ぎ出した。
    そしてその台風は、沼田と木島の付け火を燃え広がらせ、町の八割を焼き尽くしたという。

    青函連絡船の救助にきていた札幌警察の弓坂(伴淳三郎)は、乗客名簿にはない二人の男の溺死体を見つける。
    そして身元引受人のない二人の男を埋めて念仏を唱える。本職の坊主からも「弓坂さんの念仏は見事だなあ。坊主の商売が上がったりになるよ」と言われるくらいの見事な念仏だ。

    さらに、町を焼いた火事の火元である質屋では、一家3人が殺され家に置いてあった大金が盗まれていた。
    捜査をすすめるうちに、犯人は三人組で、そのうちの二人は網走刑務所から仮釈放中の沼田と木島だとわかる。

    場面は変わり恐山。冒頭の三人組の中の犬飼だけが山を彷徨いている。たまたま覗いてしまったイタコの口移し小屋の様子に肝を潰して逃げ出し、通りがかった電車に乗る。
    その電車には、死んだ母の口移しを聞きに来た娘の杉戸八重(左幸子)がいた。八重は大柄でヒゲモジャだが腹をすかせて素朴な印象のこの男に興味を示し、明るく笑いながら握り飯を差し出す。
    明るい八重だが、彼女は茶屋で体を売って家族に仕送りをしていたのだ。その晩犬飼は八重のところに泊まった。母は働き通しで死んでしまい、残された病気の父、幼い弟や妹たちを彼女は養わなければならない。辛い人生だが笑って過ごすしかない。そんな八重に心の慰めを得た犬飼は、去り際に大金を残して行った。八重は慌てて後を追い、犬飼への感謝を叫ぶ。このことはこの先ずっと八重の心の支えとなった。

    ついに警察は、乗客名簿になかった死体が強盗放火殺人のなかの沼田と木島だと突き止める。
    そして下北半島で、小さな船を焼いた痕跡を見つける。
    では三人組で生き残った大男(犬飼のこと)が二人を殺し、証拠隠滅に船を焼き、金を独り占めして逃げたのか?

    大男(※犬飼)を探す弓坂刑事は八重にたどり着く。しかし八重は嘘をついた犬飼をかばう。
    八重にとって犬飼は自分が惹かれた男であり、自分にやり直しの機会をくれた生きる希望だった。どんな事があったって密告なんかするもんか。
    そして彼女は東京に出た。懐に大事に持っているのは、貰った金から借金と治療代と養育費を残した金額と、泊まった夜に切った犬飼の大きな手の爪。
    その爪を彼だと思い、「あなたにもらったお金はもう使わないよ。この上にきれいな仕事をしてためたお金を積み重ねていくんだ。いつかあなたに会いたいよ、何年経っても何十年経っても」と掻き抱くのだった。

    だが戦後の東京は、田舎から出てきた元娼婦には平穏な場所ではなかった。
    結局彼女は置屋に置いてもらい、客を取るしかなくなったのだ。

    10年後、八重は相変わらず娼婦をしていた。
    だが置屋の亭主と女将さんには可愛がられ、娼婦仲間とも仲良くやり、そしてどんなにつらくても無駄遣いは決してせずに慎ましく過ごしていた。彼女にとって、いつか犬飼に会いお礼を言いたい、それだけが人生の張り合いだったのだ。
    そんな時、舞鶴の篤志家の樽見京一郎が福祉に大金を寄付したという新聞記事に目を留める。その樽見の写真をみて八重は思う。10年経ってもわかる、彼だ、あのときの犬飼さんだ。お礼を言いたい、自分が生きる目的だった相手に会いたい。
    こうして八重は樽見の元を訪れた。

    しかし樽見(※犬飼の現在の名前)は「いや、私は恐山に行ったことはありませんよ。あなたのことも知りませんよ」と素っ気なかった。
    ただお礼が言いたかっただけなのに。生きる張り合いをなくした八重は泣き崩れる。だが体の特徴で間違いなく犬飼本人だと確信した彼女はすがりつく。そして彼女を引き離そうとした樽見(※犬飼)は、八重の首の骨を折って殺害してしまう。
    そして現場を見た書生の若者の首の骨も折って殺害してしまう。
    そして心中に見せかけて海に捨てた。

    男女の死体はすぐに見つかってしまった。
    舞鶴警察が調べをすすめるうちに、10年前の質屋強盗放火殺人事件との関連が見えてきた。
    担当の味村刑事(高倉健。たくさんしゃべってるーーー(゚д゚)!)は、当時の担当の弓坂に連絡を取る。
    弓坂は、あの事件に入れ込みすぎて警察を終われ、今では刑務所勤務をしているのだ。それでもあの事件と犬飼のことは忘れない。執念の10年だった。

    弓坂と舞鶴警察署が協力して捜査を進め、樽見は犬飼だと確信する。
    (↑しかし今のように科学捜査がないので、切った爪を見て警察官たちが「これは樽見(犬飼)の大きな手の爪に決まっている!」「犬飼の実家に行きましたがあまりの悲惨な貧しさに、こんなところで育った人間は人と外れた人間になるのではないかと感じた」だとか、まあそれはそれで犯罪者心理としてあるのかもしれないが、さすがに決めつけすぎでないかーーともちょっと思った。まあ自分の正体を知る女性が現れたら、弾みとはいえ首をへし折り、たまたま目撃しただけの若者の首までへし折ってしまうのだから、苛烈な性格が形成されたというのは結果として正しい分析だったんだが)


    だが樽見の舞鶴への貢献は大きかった。医療も子供関係施設や道具も公共事業もすべてに大金を寄付していた。
    それは昔の罪滅ぼしのつもりなのか?

    取調室では、樽見が犬飼だとわかっていることを告げ、八重を殺したことを責める。「八重さんはあなたの爪と、残りの金を大事に持っていた。どんなことがあろうとも彼女はあなたを売るようなことはしなかったのに、その彼女を殺してしまった」

    ついに樽見は自分が犬飼多吉だと認める。そして10年前の津軽海峡での出来事を告白する。それは警察が思っていたものとは正反対だった。
    「確かに10年前に北海道で沼田と木島と会った。彼らは質屋と知り合いで仕事を紹介してもらうと言っていた。だが一緒に電車に乗り、彼らが質屋一家を殺して火を付けたと知った。自分は何ということに巻き込まれたのか。だが一緒に逃げるしかなかった。そして台風の津軽海峡を漕ぎ出した時、二人は仲間争いをして、そして私に襲いかかってきた。私は海に突き飛ばした。確かに彼らの死に責任はあるがあくまでも正当防衛だ」「下北半島に付き、船に残された大金を見つけた。警察に行っても自分が疑われるだけだ。それならこの金があれば、自分のこの貧しい暮らしから抜け出せると思った」
    疑う警察官たちに「ほら、信じてもらえない、だから言えなかったんだ」として黙秘する。

    その晩、留置所の犬飼のもとをに弓坂が訪れ、懐から袋に入った灰を出す。
    「これは10年前下北半島で焼かれていた舟の灰だ。ずっと持っていた。信じられないか?私もあなたを信じられない」
    犬飼はその灰を手に取り慟哭する。そして「自分も北海道に連れて行ってくれ」と嘆願する。
    警察は、当時の現場につれて行けば自白するかもしれないとして、犬飼を当時の現場につれてゆくことにした。
    函館に向かう電車のなかで、犬飼の耳に10年前に聞いた八重の明るい笑い声が蘇る。

    青函連絡船の船上。
    「あのあたりが八重さんの生まれた村だ」そう言って弓坂は海に花束を投げ入れて念仏を唱える。10年前に本職の坊主以上と言われた見事な念仏だ。

    犬飼も花を持ち船べりへ進む。
    だが彼は、警察のすきを突いたその一瞬に、連絡船から身を投げるのだった。

    船に残った警察の目に映るのは、青函連絡船があと引く水脈ばかり。ただ水脈ばかり。

    ===
    冒頭の映像から、視聴者には犬養は強盗放火一家三人殺しの犯人ではないとわかっている。
    実際の行動はしていない。だが自分が犯罪を知りながら隠していたこと、その二人の死の責任があることへずっと苦しんでいた。
    このテーマは「郵便配達は二度ベルを鳴らす」とか、映画「陽の当たる場所」とか、さらにカラマーゾフのミーチャお兄ちゃんの言うところの「私は殺してはいないので無実だが、死ねばいいと思ったこの気持ちに対しては罪がある」という心理のもの。
    10年前の事件は、犬飼は正当防衛と横領だけだった。そして海に落ちた二人が助けを呼ぶ声をずっと忘れられなかった。その後犯した罪を償って余りある善行を積んでも罪悪感は消えなかった。その気持ちが自分の唯一の味方である八重を殺してしまった。だが完全に白を切ったり争う姿勢を見せずに海に身を投げたのは、ただ彼に良心があったからだろう。
    あまりにも貧しい幼少期、戦争に行った体験から、根は素朴な大男がこんな運命を辿ることになってしまった、善行を積んでも運命は自分を離してくれない、なんとも切ない話。

    さて、キャストが三國連太郎さんだから、とにかく「大柄な男」「大きい人」「大きな手の大きな爪」を連呼されていた。まあ精神的に追い詰められたとはいえ、八重と書生の首を素手でへし折ってしまうんだから、大きくて力強いのだろう。三國連太郎さんは他の映画でも「あの大きな体を」と言われていたし、若い頃は相撲部屋からスカウトが来たとか言うから、本当にでかいーーという感じだったんだろうなあ。
    ヒロインの左幸子さんは、体を売る商売ではあるけれど純粋さを持ち続け、でも色っぽいという実に魅力的な女性像でした。大事に持っていた犬飼の爪をかき抱いて性的興奮のような場面もあるんですがそんな場面を嫌らしさがなく(まあ気まずい感じはするけれど^^;)演じられるのはすごいなーと思う。
    そして若いころの高倉健さんは「自分不器用ですから」なんてのではなく、強引さもあり熱いよく喋ってました(笑)

  • 『飢餓海峡』再鑑賞。前回観たのは1年半ほど前で、日本映画の有名作で観たことないものとして『日本沈没』『柳生一族の陰謀』と併せて鑑賞しました。

    3時間強と長い映画で、再鑑賞なのに全く飽きない。むしろ再鑑賞の今回の方が面白かったです。
    原作は水上勉で、松本清張と並んで社会派推理小説の人。だから『砂の器』とかなり近く感じる。水上勉は清張の『点と線』に影響されて社会派推理小説を書き始めたそう。

    他に連想したのは、『レ ミゼラブル』…『あゝ無情』にかなり近いなと。調べるとやはりそういう指摘をしてる人が多かった。あとは、戦後の話なので『野良犬』『赤線地帯』『肉体の門』などなど。


    ストーリーは…書くとネタバレになるかもだからなるべく避けますが、とある犯罪を犯した三國連太郎が、北海道から津軽海峡を渡って本州へと逃げる。恐山のあるあたりで左幸子と出会って…という内容。この事件を執念深く追う刑事が伴淳三郎。

    倒叙ミステリの形式で犯人はわかっているのだけど、犯行そのものは犯人の主観でしかないため、いわゆる普通のミステリとはちょっと違って純文学的。
    三國連太郎、左幸子、伴淳三郎の三人が主役。この三人それぞれが貧乏で苦しい生活をしている。戦後の約10年、貧しい人たちが背景としてあるので社会派。

    タイトルの「飢餓」はそういう戦後の貧困の意味で、「海峡」の方は津軽海峡だけど、作中で示されているのは「三途の川」。
    北海道と本州の境にこれがあって、この世とあの世、過去と現在、戦中と戦後、貧困と富裕、真実とウソの境界になっている。


    この映画は主役の三人がほんとに良い。左幸子さんは羽仁進さんの元奥さんで(色々あったそうだけど)、わりと最近観たのは羽仁監督の『彼女と彼』。
    『飢餓海峡』『彼女と彼』を観た結果思うのは、左幸子さんは母性がものすごいということ。「お母さんぽい」とはちょっと違っていて、聖母的な母性。そして娼婦なのに無垢で清純。役柄だけではなく本人からそう強く感じます。
    それと同時にすごくエロい。ハスキーな声が良い。この、左幸子の奥深いエロさ、可愛らしさがほんと好き。
    先ほど書いたように三途の川と、もうひとつ恐山のイタコが重要な要素で、左幸子はマグダラのマリア的。

    前回観たときに色々調べたけど、主人公は被差別部落出身者という説があるそう。原作は未読だからよくわからないし、主に言ってるのは竹中労さんだしなので、あくまで説。
    それとは別に、主人公の人物像は、三國連太郎さん本人とものすごく重なる。もしかしたらアテ書きで、三國さん本人のことを入れてるのかもしれないですね。『美味しんぼ』の時に「山岡士郎役は佐藤浩市で」と三國さんが指名したそうだし、役と本人が融合してる、させようとするタイプの俳優さん。

    三國さんはほんとに無茶苦茶でものすごい人。そういうバックグラウンドは除いて、映画から伝わってくるのは「重厚さと面白さ」。のちにスーさんを演じるけど、それ以前から妙にトボけてて面白い。『飢餓海峡』なんてシリアスな話なのに、どこかユーモラス。
    今村昌平作品にも出演されてるけど、重喜劇とものすごく合ってる俳優さんなんじゃないかと。

    終盤の1時間ぐらいで、ようやく高倉健&藤田進の刑事が登場。健さんは完全に脇役。そしてやはり、我々黒澤好き&特撮好きにとっては藤田進さんの訛った喋り方が最高である。
    取調べに行き詰まって、藤田進さんがみんな一旦ちょっと落ち着こうと。お茶でも入れよう。と言ってお茶を点てるのが笑える。そっちかよ!

    ★4にした理由はやっぱり、警察の取調べが甘い点。今ならDNA鑑定があるから一発だけど…というところです。

    最後になったけど内田吐夢監督について。萬屋錦之介主演の『宮本武蔵』シリーズが有名で、小次郎が高倉健、沢庵和尚が三國さん。でも私は全5作のこのシリーズは観たことがない。
    この後に遺作となった『真剣勝負』という番外編的なのがあって、こっちをたまたま観たことがあります。
    宮本武蔵5部作の方には宍戸梅軒が出てないんですよー。で、『真剣勝負』の方に出てて、宍戸梅軒は三國さん!だからすごく印象に残ってる。
    やっぱり男の子が好きな武器として鎖鎌があると思うんですよね。鎖鎌+三國連太郎とか面白すぎるやろと。『真剣勝負』、また機会があれば観たいです。

    あと、内田吐夢監督の息子が内田有作さんで、特撮ファンは足を向けて寝られないです。内田有作さんは東映生田スタジオの初代所長、つまり『仮面ライダー』の生みの親のひとり。

  • 三時間を超える映画を二回も観てしまった…。二回目を観るモチベーションを与えてくれたと言うだけで星ひとつ増量せざるをえない。

    同じくMoMAでの内田吐夢祭を通して。多くの人が「内田の代表作」と唱えるのも、今回の機会を通して内田作品を15本以上一気に観れた今となっては納得がゆく。

    豪華キャストの中でどうしても持っていかれてしまったのが左幸子。彼女が国際的に認められた最初の日本人女優であり、それが1963年の「にっぽん昆虫記」と「彼女と彼」であったということは自分の頭には入っていたが、本作との前後関係までは即座にはじき出せなかった。なるほどそれから2年後という時期であり、当初後の東映の社長となる岡田茂が佐久間良子をもってきていたもののひと騒動あって岡田が現場を離れた結果、内田監督がサクッと左幸子にすげ替えたという話のつじつまがあった。このノリにノッた女優を内田監督が使いたくてしょうがなかったのだろうという意味で。

    今回の映画祭を通して彼女には「人生劇場 飛車角と吉良常」(1968) でもも一度会えた。

    「アンタ、親切な人ね。」

    そんな台詞が若干かぶっているところにゾクッとしたりも。

    もちろん三國連太郎の熱演もすごい。現時点の自分の中ではこれと「神々の深き欲望」(1968) 、「復讐するは我にあり」(1979) がベスト3だろうか。こちらもまた今回の映画祭を通しては「自分の穴の中で」 (1955) においてもいい演技を観せてもらっていたが。

    米人観衆には「爪」の下りの異常性が苦笑の対象にしか目に映らなかったらしいのだが、日本人的には誰にもありうる感覚なんじゃないかなぁと思わずにはいられず。日本人がへその緒を大事に保管してるのをきいて驚愕の反応を示すってのはどこの国の人だっただろうか…なんてことも頭によぎる。

    清廉で真摯な愛情と、はたからみた異常行為とは紙一重…、そんなことを改めて感じずにはいられず。

  • サスペンス・ミステリーの名作クラッシク。
    今見ても十二分に見ごたえのある映画でした。

    1960年代の映画。
    混沌とした戦後の匂いを知っている世代が
    社会の中心にいた頃だったでしょうから
    きっと身に迫るリアリティというのがあったのだと想像します。

    今見るとさすがに古さも確かにあるけれど
    そんなのはすぐに気にならなくなりました。
    三国連太郎の独特の演技はこの頃からだったのだなぁとか
    高倉健の脂の乗り切った中堅刑事
    渋い、渋い、伴淳三郎の枯れた老刑事が良い。

    刑事、たばこ、女郎屋、混沌、貧困、戦争・・・・

    私は学生時代、歴史が苦手だったのですが
    映画から伝わるかつての日本の社会風俗や生活の歴史は興味深い。

  • 話が面白い上に、俳優陣の今や古臭くも濃厚な演技が良い。
    結末も苦々しい感じで、胸糞悪くて満足いった。

  • うーん、東映。劇的というか大げさというか、ベタというか。音楽(富田勲)も扇情的、映像もしつこい。
    でも戦後の日本を、リアルに感じられた。本当に貧しかった、不安定だった日本。その中で必死に生きてきた、生きるためには手段を選べなかった底辺の人間の悲哀はよく出ていたと思う。
    三国連太郎の名演と言われているが、それはさほど感じず、左幸子の哀れで健気な娼婦が印象に残った。伴淳はあまりにズーズー弁で北海道の刑事とは思えない。藤田進は(いつも思うが、笠智衆と同じく)九州訛りが抜けてない。まあ藤田進は九州出身の刑事という設定かもしれないし、べつにいいんだけど。
    一見の価値はあると思う。

  • 1964年、内田吐夢監督、水上勉原作。三国連太郎、左幸子、伴淳三郎、高倉健。
    戦後の北海道。刑務所から出てきた男二人と質屋で強盗殺人、その後放火をして逃げ、仲間さえ殺した男。10年後京都で実業家として財を成した男が、この男だとしてつかまる。途中には青森で行き会った娼妓に与えた恩義と娼妓からの感謝と執着。それが事件を発掘させる。
    手錠をされて再度北海道に渡る男だが…。

    海峡は津軽海峡。飢餓は食うのに精いっぱいだった戦後の子供らの飢餓も描かれるが、娼妓の金や男への愛、恩返しへの執着、警察の執念、そして主人公の幼いころからの貧困、家族、差別を思わせる。モノクロだが回想場面などで反転画像を効果的に使う。

  • 砂の器と同じ

    過去を知る 殺さらなくても よい人を 殺してしまう。

    三国廉太郎さんの 演技は すごいですね。

    ところで 健さんは いつ出てくるの。

    出てきました。

    若いですね。

    昔の映画は 久々にみると いいですね。

  • 戦後の貧しい時代の悲しい男と女の話です。「砂の器」を思いだしました。今は亡き名優たちの演技に感服しました。伴淳三郎さんの地道に愚鈍なほどに事件を追う姿勢。高倉健さんの正義感溢れる刑事。幸薄い左幸子さんの演技。もちろん、三国連太郎さんの悲しい犯人。ちらっと光る加藤嘉さん。3時間、見入りました。

  • 数年前に読んだ原作が面白かったので。「レ・ミゼラブル」を戦後混乱期の日本に移し変えたような物語はとても力強い(崇高な魂を持つジャン・バルジャンに比べ、本作の三國連太郎は過去がばれることを恐れて女を殺してしまう、どうしようもない奴ですが)。三國連太郎と高倉健の迫力のあるやりとりは見ごたえあり。

    ただ、原作に原因があることではあるんですが、ストーリーのディテールには粗があります。古い作品だから仕方ないかとは思いつつも、「DNA判定もない時代で物的証拠もないんだから、シラを切りとおせよ」とか思わなくもない。彼に贖罪の意識があったのか、ただ自分の不運を嘆いただけなのか、そのあたりの内面描写が欲しかった気も。

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