豚と軍艦 [DVD]

監督 : 今村昌平 
出演 : 長門裕之  吉村実子  南田洋子  丹波哲郎  加藤武  小沢昭一 
  • 日活
3.67
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988103600494

感想・レビュー・書評

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  • 急にぶり返したNetflix熱、しかも時代に逆行するDVD紀行。改めてオンラインで提供されているラインナップをみる限り、時代に乗る潮流の方には自分の観たい作品はあまり並べらてはいない様子なので再開お試しということでひと月もらったオンライン側は無料期間終了前に一旦切ろうかと画策中。劇場に観に行けない以上はDVD配送に投資するのはありかと。

    そんな考えを後押しする本作の鑑賞機会、キャストも超豪華でタイトルロールですでに期待は最高潮に。かつて今村組の若手スタッフだった武重邦夫氏が往時を振り返って作品ごとに深々と綴る「愚行の旅」と題したサイトが存在しており、それを見つけた際には「よしっ、どんどん鑑賞後閲覧するぞ!」と意気込んでいたものだったが、その後武重氏が他界され、サイトのリンク自体までが消失してしまうような事態になるとまでは想像力が及ばず、もたもたと時間を浪費してしまったことに後悔の念を募らせるような経験をしたことがあった。その念は昨年末大阪シネ・ヌーヴォにて開催されていた川島雄三映画祭に部分参戦できたことで更に増幅されてしまうことに…。なにせ鑑賞した作品群中、「銀座二十四帖」(1955) 、「風船」(1956) 、「洲崎パラダイス 赤信号」(1956) 、「わが町」(1956) 、「飢える魂」(1956) 、「続・飢える魂」(1956) にて今村監督が助監督として名を連ねていたのだから。

    そんなこんなもあり今回の鑑賞のご褒美はこれまた特典として含まれていた今村監督ご本人が登場する映像。フランスで放送された作品となっているのだが一切フランス語による会話は含まれておらず、作品群のシーンを交えながら今村監督の言葉が続くのだ。北村和夫と飲みながら話すシーンなどは垂涎ものだった。

    「にっぽん昆虫記」(1963) でみかけた吉村実子は本作でデビューしたとのことでその演技ぶりが気になっていたのだが、なかなかどうして堂々とした芝居っぷり、ラストにかけてまでずぅーっと拍手喝采ものだった。そういや彼女は「鬼婆」(1964) でもお見かけしていたらしかったのだが、間隔があいてしまったことが悔やまれる。彼女を眺めている内に今村監督がのちに「神々の深き欲望」(1968) で起用する沖山秀子をなんとなく彷彿とさせられたのは、ともに共通する眼力の強さ所以だろうか。

    菅井きんと初井言榮による若ばあさんコンビは安定の演技。青木富夫は結局どこに出ていたのかはっきりしなかった…。長門裕之演じるキャラのヘタレっぷりが最初から最後まで貫かれていて、南田洋子との結婚がこの本作の発表年だったという史実を横に並べるとつい口角が上がってしまう。

    鑑賞後にみたとあるコメンテーターの口から「タイトルに含まれる『軍艦』は当然アメリカ及びアメリカ人を象徴するわけで、豚は…」という言葉を耳にすると、今村監督のその皮肉力とでも名付けるべき表現のまとめ上げかたに改めて脱帽せざるをえなかった…。

    うん、イマムラはイマムラであってクロサワではない。それだけは決して間違いがない。

  • これも以前から観たかったのだけど、家から車で一時間ぐらいかかる遠くのTSUTAYAにしか置いてないので、なかなか借りられなかったのです(近くのTSUTAYAにはわりと最近のイマヘイ作品しかない)。大友克洋先生が「邦画なら今村昌平が最高」と言ってたので、意を決してレンタル。結果、最高に面白かったです。これと、イマヘイさんの師匠である川島雄三の『幕末太陽傳』は面白いので観た方が良いですね。『幕末太陽傳』と『モスラ』はセットで観ましょう。

    と、若い人たちにも薦めたいのですが、この映画に出てる方たちって、ここ5年〜10年ぐらいでバッタバッタと鬼籍に入られてて……つい先日も加藤武さんが亡くなられたし、あと生きてるのって吉村実子さんと菅井きんさんだけなんですよ。だからなかなか、とっかかりがないかもしれません。吉村さんは最近だと『凶悪』に出てましたね。

    最近思うのが、南田洋子って演技めちゃくちゃ上手くないですか!?これもね、20代の子に言ったら、南田洋子知らないんですよ。東野英治郎と西村晃どっちも出てますが、ふたりとも黄門様やってたとかも知らないんだろうな、きっと。丹波哲郎の大霊界、死んだらどうなるも……あぁ、昭和が失われていく……まぁそりゃ別に良いんだけども、なんちゅうか、「作品について語る言葉」もひとつずつ失われてる気がします。だからそこのとこでいつも苦労しています。

    あと豚のくだりは『snatch』と『あしたのジョー』に同様のシーンがあるけど、引用なのかなと思いました。

  • アメリカと戦争した歴史さえ知らない子供もいるらしいので、ちょっと前にはこんな時代があったことも語り繋いでいかないとダメなんかと思った次第。

    そう言えば、確か横須賀は小泉さんのお膝元。
    これを観れば、ブッシュのイラク戦争へ加担することで、アメリカへ復讐しようとしたという発想も頷ける。

    やっぱり、日本は敗戦国であることを認識すべし。

  • 男たちの話と見せかけて、女の話だ。今村昌平の描く女のたくましさ、したたかさ。アメリカによる占領と日本人の価値観のあっけない崩落に愛想を尽かした女は最後、川崎に向かう。そこではまたアメリカの戦争に使われる軍艦が生産されているというのに。唯一この映画で、人間の救いとなるシーンがある。男が解放した豚が濁流のように溢れ出す場面だ。しかしその男も死ぬ。そして女は生きる。この映画がつくられた時代、今村昌平を無視しアメリカ映画ばかりを観ていた日本人は後悔するべきだろう。こんなに優れた日本映画がある。同じように優れた映画が、現代にもあるのだろうか。私たちはそれを見逃しているのだろうか。(070817<a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00006YXRZ%3ftag=booklogscotty-22%26link_code=xm2%26camp=2025" target="_blank">豚と軍艦</a>)

  • 豚と軍艦。日本とアメリカ。日米安保条約。新左翼派。寄生する立場と従属させる立場。
    メタファーである豚をそのまま登場させるところが今村昌平の素晴らしいところ。
    合わせてみたいのは大島渚の『日本の夜と霧』と増村保造の『偽大学生』。

  • とにかく面白い。
    街が豚まみれになってキンジが死んでから、ハルコが川崎に向かうシーンにかけては最高。
    結局、どんな時も逞しく進んでいく者が未来を切り開いていかんだなぁ、って感じ。
    戦後からの希望に満ちた作品。

  • 今村昌平監督 1961年作品

    横須賀基地の周辺の街の雑多な風景は
    沖縄の風景に似たところもある。
    その雑多な風景の中での 青年をめぐる群像が描き出される。
    人々はバイタリティにあふれ エネルギーがみなぎっている。

    このエネルギーが どうも違った方向にあふれ出るので、
    喜劇と見るほかないのだろう。
    欣太(長門裕之)と春子(吉村実子)の二人の恋愛を軸に
    話は進んでいく。

    売春行為がMPに厳しく取り締まれることによって
    ヤクザたちは新しい事業を進めなくてはいけなかった。
    (売春する場所もタコ部屋みたいな場所だ。
     今で言う カプセルホテルに近いのか。
    その仕事は 米軍基地から出る残飯を豚のエサにして 
    養豚を始めようという仕事だった。
    その名前も『日米畜産協会』という。
    ヤクザが、養豚業をしようという発想自体が飛んでいる。

    欣太はヤクザの末端の構成員でその仕事を請け負っていた。
    成功すれば 15万円のボーナスが出る ことに期待して
    飛び回るのである。

    資金を集めるために ゆすりたかりなどをして 集める。
    因縁つけて、巻き上げるのだ。
    そんなところに流れ者ヤクザ 春駒がたかりに来た。
    組長が 春駒を殺したのだ。
    海に捨てた死体が また 海で浮かび上がるのを 
    欣太の親父が見つけるのであるが 
    欣太は鉄次と春駒の死体を始末する。

    春駒の死体は豚のえさになり
    その豚を食べて 鉄次達がゲーゲーする というのも
    ちょっと考えられないシーンでもある。

    春子は、欣太に組織を離れて 
    まっとうな生活をしようというが・・
    欣太は 15万円のボーナスがあるので、受け付けない。
    二人で、パイナップル缶をおいしそうに食べるシーンは
    その時代の象徴である。

    春子は欣太に苛立ち キャバレーで飲んで踊っている。
    酔っ払った春子はアメリカ兵たちにホテルに連れ込まれ
    暴行を受ける。

    鉄次は 血を吐き 胃がんといわれ 
    欣太から 『あと3日しかもたない』と聞き、
    列車に飛び込もうとするが 怖くて飛び込めない。
    彼のすがった看板は 『日産生命』というのが、笑える。
    鉄次は 殺し屋 王に殺してくれと依頼する。
    兄貴といわれていても、小心者なのだ。
    後で、間違えていたのがわかるが・・

    米軍から出る残飯代を前金でとり 逃げられて、
    会計係りしている星野は金を持ってドロンする。
    とにかく、ヤクザといっても、統制がきかないのだ。

    豚を運んで売りさばこう・・・という組長と
    その反対するグループが 豚の取り合いに・・・
    欣太は、組長にボコボコニ殴られて・・・
    豚と一緒に運ばれるが・・・
    そのトラックに一緒に機関銃があり・・・
    欣太は、怒りくるって 機関銃をぶっ放して
    豚を逃がすのだ・・
    豚は、横須賀の繁華街を駆け巡る。

    その頃は 横須賀と川崎はかなり遠くにあったんですね。

  • [1961年日本映画、TV録画鑑賞]
    山田洋次監督が選んだ日本の名作100本〜喜劇編〜

  • 神奈川などを舞台とした作品です。

  • 米軍基地の街・横須賀のチンピラが、米軍に寄生しながら暗躍するヤクザ組織に翻弄され、自滅の道を歩む。恋人は米兵に暴行されても、腐らず、街を出てていく。

    豚が群をなして暴走した後、自滅したチンピラに向かって「バカヤロー」と三回ほど叫ぶ終盤。もはや最高。こういうのが映画だ。

    戦後の安保体制の下で、混迷しながらも欲望の道を突き進む日本の姿をヤクザにたとえ、痛切に批判した。今村監督の特徴でもある「重喜劇」のスタイルがこの作品で確立した。

    ただ、セリフが聞きづらすぎてかなわんかった。

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