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- / ISBN・EAN: 4949478460045
感想・レビュー・書評
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大昔に見たのだけど、当時はあまりおもしろいと思わなかった。というか、途中からウトウトして記憶がない、というのが正しい記憶。
なので、もう1回ちゃんと見よう、と見終わった直後に思って幾星霜。やっと見直した。
驚いた。切ない映画だった。てっきりコメディかと思ってた。昔の私はそういう理解だった。たいしておもしろくないコメディだと。
今、見直してみて、この映画の切なさは子供(最初に見た時の私のことですが)には分からんだろう、と思う。
自分たちが一途に守ってきた国が、価値観が、ある日突然なくなってしまうとまどい。これまで信じて励んできたことが突然、否定されてなかったことにされてしまう。
正確には東ドイツはなくなったわけではなくて、再統一されて元に戻っただけなんだけれど、でも、気持ちとしては完全否定されてなくなってしまったに等しい。
日本と同じだなぁ、と思う。
若い主人公はもちろんその変化に柔軟に対応しているわけだが、心臓の弱い母にショックを与えないためにまだ旧東ドイツが存続しているふりをしていくうち、主人公がその場しのぎの嘘を重ねて描き出した東ドイツは、まるで、かつてあの国が掲げた理想をまじめに正確に追求し、ついに実現したかのような様相を帯びてくる。
このあたりがなんというか、すごく文学的ですごく切ない。
戦前の日本とつい重なってしまう。完全にいろいろ間違っていたのは事実だけど、だからと言って、その時代に国の言う嘘を信じて一生懸命生きていた人たちのすべてを否定する気になれないですよね。新しい価値観がより良いものであるという事実は別にして。
「もしもあの国があのまま進み続けたら」という他愛のない嘘が、次第に絶対にありえないような、奇妙に主人公の理想を反映していると分かった時のあの不思議なおかしさというか、切なさというか。
この話、そっくり場所と時代設定を戦後の日本に持ってきてリメイクすることが可能ですね。
ということで、繰り返しになるけれど、この映画のなんともいえずおかしくて哀しい感じ、年を重ねないと分からないだろうなぁ、と思う。少なくとも若いころの私には分からなかっただろうと思う。
20代くらいまでは自分という人間を生きるのにせいいっぱいで、自分の生まれた国がそれほどの影響を自分に与えているという感覚があまりなかった。
人間の価値観なんて、簡単にひっくり返されたり元に戻されたり、絶対なものなんて何もない、ってことも分からなかったなぁ。日本文学なんて、ずーっとそういうことばっかり言ってるんですけどね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2023/03/26
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ベルリンの壁崩壊のときを生きたある家族の物語。主人公の母親に対する愛情と協力してくれる仲間(協力といっても、単に愛からみたいなかんじでなく、それぞれの想いが人間らしくていい)、ラストにロケットを飛ばす主人公の清々しい顔が素敵でした。
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レーニンについて知りたくて見てみたらレーニンについての映画ではなく、東西ドイツの統合を変わった形で経験した家族の物語でした。コメディタッチではあるものの腹を抱えて笑えるわけではなく、どこか突き抜けない側面を感じるものの、東西ドイツの文化や価値観の違いが各キャラクターを通して非常に愛らしく描かれた優しい物語は心に残った。
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秀作。
東西ドイツ統合では、色々ドラマあったんだろうね。やっぱ、豊かな生活を求めるんだな。
数ヶ月で東ベルリンの生活がこんなに変わったとは。 -
東ドイツに住む主人公
のほほんと生きているが、国家を熱心に支持する母親にデモでの拘束現場を目撃されてしまう。
母はショックで倒れ目を覚まさない。
そうこうする内に、まさかのベルリンの壁崩壊。
やっと母親は目を覚ますが、安静にし続けねば命の心配も。
主人公は周りを巻き込み、もう亡くなってしまった『東ドイツ』を作り上げる。
国や政治に振り回される市井の人々が、コミカルながらたまにしんみりと描かれる。
家族や同じ集合住宅の住民、友達との大げさでないドタバタ「東ドイツ」ライフ作りは素朴で必死。