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- / ISBN・EAN: 4907953015234
感想・レビュー・書評
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小5の娘の音楽会課題曲が「宝島」だった。
https://www.youtube.com/watch?v=GZFyLzspq0A
知ってる?と聞かれて「昔のアニメの主題歌だよ、じゃあ一緒に見よう」とDVD借りました。
しかし娘には退屈だったようで(何しろ娘は「文学作品」、「外国」、「昔の話」に一切興味なし!!)、結局8歳の次男に(強引に)見せた(笑)
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全30話。
13歳のジム少年は、港町で宿屋”ベンボー提督亭”を営む母を助けて働く日々。
数か月前に父が死んでしまってから、宿屋と母を助けるのは自分だと張り切っている。
そこへ海の男、ビリー・ボーンズがやってくる。
彼はどうやら死んだ大海賊フリント船長の元部下で、宝の地図を持ち逃げしたらしい。
そして自分を追っている”一本足の男”に怯えている。
ビリーの元に現れる海賊たち。
酒と恐怖に溺れていたビリーは海の幻想の中で死ぬ。
ビリーの荷物から宝島の地図を手に入れたジム少年は、亡き父親の友人である資産家のトレローニさんと判事兼医者のリブシーさんと一緒に宝島を目指す。
用意された船は ヒスパニオラ号 。
船員を集めたのはジョン・シルバーという一本足のコック。
一本足…海賊ビリーが怯えた男ではないかと探りにいくジム。
しかしジョン・シルバーは、強く、明るく、男気に溢れた男だった。
ジムはシルバーに惹かれてゆき、二人は年齢を超えて男としての信頼関係を築く。
しかしジムは、リンゴ樽の中で恐ろしい企みを聞く。
ジョン・シルバーは海賊フリント船長の元部下で、死んだビリーが恐れた”一本足の男”であり、船を乗っ取りフリント船長の宝を掘り出す計画を練っていたのだ。
憧れのジョン・シルバー、僕のジョン・シルバーが冷酷な海賊だったとは…ショックを受けるジム。
ついに”宝島”に到着した。
ジムは、ヒスパニオラ号のスモレット船長、トレローニさんとその下男たち、リブシーさん、そしてナイフ投げの得意な船員グレーと共島の砦に籠る。
その砦を海賊としての正体を現したジョン・シルバーと手下たちが取り囲む。
こうしてジム少年たちと海賊たちの宝を巡っての命がけの攻防戦が始まる…。
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アニメの絵柄は「明日のジョー」とかそんな感じで、音楽は「ルパン三世」とかそんな感じ。
昔のアニメなのでシビアな場面もけっこうあり、黒人奴隷売買を目撃したり、ジムが人買いに攫われそうになったり、ジムたちと海賊たちの攻撃により互いに死者が出たり、長い海の生活で狂ってしまう船員たちが出たり…。
スティーブンソンの原作との違いは、海賊ジョン・シルバーの描き方でしょうか。
見始める前に8歳の次男には「創作世界で一番の海賊、ジョン・シルバーが出てくるよ」と説明したのですが、正体を現すまでのジョン・シルバーがまさに男の中の男。次男は、私が事前に「海賊だよ」と説明していたにもかかわらず「シルバーは味方でしょ?」と思ってたくらい。
ジョン・シルバーが海賊の正体を現して、ジムたちに容赦ない攻撃を繰り出してきてもやはり格好よく、幾度ものピンチを乗り越え、逆境を跳ね返し、さらにジムの事だけは守ってくれている。
奇妙な絆を保つシルバーとジム少年ですが、ジムにも矜持はあるわけで、シルバーに惹かれつつも「おまえなんか僕のジョン・シルバーじゃない…」、
敵対しながらも一時休戦二人で協力し合って危機を乗り越えた後「なあ、俺の作った料理で何が好きだった?また作ってやろう」なんて言われて心が動きつつも「人殺しの作ったものなんて食べたくない…」など必死で拒絶してみたり。
この辺でうちの次男に「シルバーって敵かな?味方かな?」などと聞いてみたら「うーーんと…てみかた」と言っていました。(海賊としては敵だけど、ジム少年個人に対しては味方、ということを8歳児なりに表現したらしい/笑)
シルバーが敵にまわってからは、ジムたちの味方としてヒスパニオラ号のスモレット船長、船乗りのグレーが出てきます。
スモレット船長はまさに鋼鉄のような、しかし人の情けをよく知る現場のリーダーたる男。
グレーは「負け犬の方に付いてしまう」と言って海賊の誘いを断り、ジムたちの味方になるなんかニヒルな青年。前半全然出てこなかったんだが、ニヒルでクールな彼が甲板掃除をしている姿は想像しづらい(笑)。アイルランド人だったと最後に判明。腕っぷしもなかなかで、シルバーとタイマン張るような場面は一応グレーの出番…だが片足のシルバーの方が強くて若造扱いされてしまう。
さらに敵になったり味方になったりのお調子者下っ端水夫のかもめのパピー役で神谷明さんが出ていましたが、今のように渋い声でなくまだ若造声なのでちょっと驚いた(笑)
…まあそんなこんなで宝を巡って敵味方共に多くの犠牲者を出しつつ、出し抜きつつ、敵になったり味方になったりの攻防を繰り広げ、そしてついに宝を見つけるのですが、
その時もジョン・シルバーがジムに「その年でここまで頑張ったお前を男として敬意を表したい」として、最後の宝の扉を開かせます。
海に憧れ”男”になりたがっている少年がこんなこと言われたらもう感涙ですね(笑)
さて、宝は見つかっても話はまだしばらく続きます。
シルバーは宝探しへの異様な執着を見せますが、それも「美しいものに惹かれるが、美しいものは人の心を乱す」「自分の大事なものを見つけたい。それが宝だと思っていた。宝探しのための十年間は実に楽しかった。だが宝を見つけてみたらただの宝であって自分の大事なものではなかった」などと言っています。
そんなシルバーは、船から逃げ出し「混血のものすごい美人」 の奥さん(これがまたひじょ~~に印象的な女性で)とともに去っていくのですが…奥さんとの生活はシルバーの求めていた”大事なもの”になり得たのか。
最終話は、アニメのオリジナルとして”十年後”として登場人物たちのその後の様子、そしてついにシルバーとの邂逅。お互いに言葉は少ないけれど、そこに年はとってもやはり”海の男ジョン・シルバー”の面影を見、僕(ジム)の好きなシルバーはやっぱりそのままいたんだ、と、振り返った(年老いた)ジョン・シルバーの貌の静止画像で終わり。声優さんもシルバー役の若山弦蔵さんがトップ表記だし、すっかり主役です(笑)
DVDには、後日作られた”特別編”のようなものがあり、アニメ本編からさらに十年後くらいでしょうか、ジムが「片足で年寄りだが偉い勇敢な鯨撃ち」の噂を聞く話が収録されています。
これはアニメの絵が「エースをねらえ!」風で、ジムの声は山寺宏一さんだった。
印象的なフレーズとして、海賊たちが繰り返し歌う歌があります。
♪亡者の墓までにじり登った15人 一杯やろうぜヨウソロ~
♪ほかの奴らは酒と悪魔に呑まれたぞ もひとつやろうぜヨウソロ~
海の男たちが自身を鼓舞するように、そして祈りを唱えるようにして繰り返し歌います。
これを聞いた次男が「酒に飲まれるのは分かるけど(本当にわかるのか8歳児?!)、悪魔に飲まれるって何?」と聞いてきたですが、
ちょうど「船に残った海賊たちが、熱病と酒と互いへの疑心暗鬼で狂ってゆき、互いを殺し合い全滅」という話をやっていたので
「これが”悪魔に飲まれる”だよ」と説明したら納得してました。(本当にわかったのか8歳児?!)
その次男は「宝島の本も読んでみたい」と言っているので、いろいろ探しているのですが…やっぱり児童文学になってしまうと難しすぎて「読めない~」だし、絵本だと簡単すぎるし…探し中。
しかしジョン・シルバーが格好いいのはアニメの話であって、本だと”愛嬌はあるが恐ろしいおっさん”なんだよな~。次男のイメージが崩れてしまうだろうか(笑)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
これぞピカレスクロマン!!この悪人に惚れなくてどうするってくらい一本足の海賊シルバーはみんなの心を持ってちゃいます。声が若山弦蔵さんで渋くてたまらんとです。