日本の国鉄 (1984年) (岩波新書)

  • 1984年2月20日発売
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感想・レビュー・書評

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  • 日本の国鉄について明治時代の起源から解説したもの。当時はまだ国鉄が民営化する前だったので、JRになる前までの解説になっている。

  • 原田勝正氏が亡くなつてから丁度十年。早い喃。
    原田氏は単に鉄道ファン向けの著作のみならず、「鉄道史学会」を立ち上げるなど、鉄道を歴史、政治、経済面から学術的に捉へる活動で知られました。

    この『日本の国鉄』も、まことに端正かつスタイリッシュな一冊であります。出版された1984年といへば、既に国鉄は末期状態でありまして、第二次臨時行政調査会(土光臨調)による分割・民営化案が提案されてをります。日本の国鉄の歴史を俯瞰するのに、充分な時期と申せませう。

    国家にとつて、創業期の鉄道とはまづ中央集権を目的として建設されました。戦時中は「兵器」として活用され、戦後はGHQによる「戦利品」として扱はれ、日本人は屈辱の日々を送りました。そして主権回復後に、漸く国民の国鉄として開花する。本書を読むと、さういふ「誰のための国鉄か」といふ視点でも読めます。
    岩波新書といふこともあつてか、文章は論文調で、極力個人的感慨を排してをります。ハードボイルドかつ流線型、無駄のない記述で実に快い。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-751.html

  • 明治五年、新橋ー横浜間にはじめて陸蒸気が走ってから今日まで、国鉄が日本の近代化に果たしてきた役割は極めて大きい。その国鉄はいま、膨大な赤字をかかえ、分割・民営化が論じられるなど、重大な岐路に立たされている。国鉄百余年の歩みをたどって、今日当面している諸問題の根を探るとともに、「国民の国鉄」への道とは何かを考える。(1984年刊)
    ・まえがき
    ・一 殖産興業から「兵商二途」へ
    ・二 官設鉄道から国有鉄道へ
    ・三 鉄道院から鉄道省へ
    ・四 黄金の時代から戦争の時代へ
    ・五 占領軍の国鉄から国民の国鉄へ
    ・六 湘南電車から新幹線へ
    ・七 「財政再建」から臨調答申へ
    ・国鉄年表

    著者の専攻は、日本近代政治史、鉄道史。日本国有鉄道百年史の編纂に従事。
    新書ながら国鉄のあらましを知ることが出来る良書である。いくつか印象に残った点を拾うと、
    1885年、生糸の産地であった上毛地方(高崎)と開港場(横浜)が鉄道で直結されたことにより、鉄道輸送の威力が発揮され、はじめて、経済的機能を実証したのだというp19
    軍との結びつきも興味深い。鉄道国有化実現後は、白紙のダイヤグラムに、最低限必要な軍用列車のスジを書き込み、その上に一般列車のスジを入れていく方策がとられたというp76。また、臨時軍事費への支出金も巨額であったことがわかるp109。朝鮮戦争時の軍事輸送は、太平洋戦争当時を上回る規模であったというp154。
    本書を読むと、国鉄の経営は、我田引鉄により不採算路線が拡大し、料金の値上げは許されないp185、など政治に翻弄されたことがわかる。
    本書刊行後、1987年に国鉄は分割民営化されることとなるが、政治の過度の関与から自由になるためにはやむを得ない選択であったのかもしれない。

  • 13/05/03、神保町・澤口書店で購入(古書)。

  •  明治維新期から国鉄民営化直前までの日本国有鉄道小史。鉄道政策と技術革新の叙述が中心。近代日本の鉄道は常に純経済的な需要ではなく、国民統合のための政治的要請や軍事輸送戦略や政党・議員の利益誘導等の経済外要因に左右されていたことがわかる。

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