下谷万年町物語 (1983年) (中公文庫)

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感想・レビュー・書評

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  • 終戦後数年、男娼たちの巣窟となっている上野近くの下谷万年町で暮らす普通の一家の少年・文ちゃん。あるとき上野で警視総監の帽子をその下谷万年町のオカマたちが奪う事件が勃発、その犯人であるお市とお春らの一派から、お春のイロである洋ちゃんという若者が警視総監の帽子を奪って逃げたため、お春に頼まれた文ちゃんは洋ちゃんを探して「軽喜座」という劇団の稽古場を訪れる。瓢箪池でサフランの造花を染めていた洋ちゃんと文ちゃんの前に、池の中から自殺しそこなった女が浮かび上がる。その男装の麗人はキティ瓢田、通称お瓢と名乗り・・・。

    ものすごく久しぶりに再読。戯曲ではなく小説だけれど、のちに戯曲化されて蜷川演出で上演、2012年のキャストは文ちゃん:西島隆弘、洋ちゃん:藤原竜也、キティ瓢田:宮沢りえ。観てないけれど知っていると脳内キャストはこのメンバーになってしまう。宮沢りえ、このテの唐十郎的ファムファタルは絶対はまり役。

    警視総監の帽子をめぐり、分裂し疑心暗鬼になるオカマたち、そして巻き込まれた洋ちゃん&文ちゃんはキティ瓢田と「サフラン座」なる劇団を立ち上げ、「軽喜座」座長が帽子の事件を戯曲化した『男娼の森』に乱入する。しかし思いがけない事故が起こり、さらにヒロポン売人の白井の暗躍で、悲しいカタストロフィを迎える・・・。

    劇中劇と現実が入り混じりカオス状態ながら、小説だけに戯曲よりは筋が読み易く、しかしその分、悲劇にはリアリティがある。舞台上の事なら不条理と受け入れられることも現実に起こるとただただ悲しい。六本目の指のモチーフは唐作品に頻繁に登場するけれど、本作でも重要な役割を担う。記憶していた以上に名作。

  • 戯曲というのは本単独としての評価は難しく、
    舞台と合わせ見て初めてきちんと理解できる気がします。
    そんな中、これは唐十郎の作品の中で、
    本単独でもある程度楽しめるものだと個人的には思います。

  • 舞台に行く下準備として読みました。独特な世界観。当然のごとく時代や土地、人、世界観など…理解が及ばない場面もあるけど、すべてでひとつの大きな物語を感じることができました。難しくないけど、難しい。どう読むかですね。

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