- Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
感想・レビュー・書評
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再読。
この本は、私が中学生の頃かれこれ40年近く前の話、学校の注文図書で購入した文庫本でした。
本の裏表紙には『世界の名曲100曲を選び、エスプリ溢れる文章で紹介する芥川音楽エッセイ集』とあります。
今までの人生の中で強烈に心に残っている本、というのをあげるならば、この本がその中に入ります。
軽妙洒脱な文章で、名曲とその作曲者をユーモアたっぷりに紹介しています。
たとえば、ベルリオーズの『幻想交響曲』の章では
『大体、面白い音楽を作るような大作曲家は、面白い人に決まっております。面白い人が、うっかりしてつまらない音楽を作ってしまうことはあっても、もともとつまらない人が面白いものを作るわけがありません。
その面白い人の中でも、とりわけ面白いのが、このベルリオーズという人です』
から始まります。
ウェーバーの『舞踏への勧誘』の章。この曲はピアニスト中村紘子さん出演のカレーのCMで有名でした。
『さてこの〈舞踏への勧誘〉日本語訳はずいぶん堅苦しく、なんだか生命保険が来たみたいですが、ドイツ語は Aufforderung zum Tanz 英語は Invitation to the Waltz 今流にいえば、ワルツはいかが、というところでしょうが、ピアノ独奏用の曲として書かれ、今でもピアニストたちのレパートリーの一つになっておりますが、ベルリオーズがオーケストラに編曲して以来、聞く機会はこちらの方がずっと多くなりました』
プロコフィエフの『キージェ中尉』の章。『キージェ中尉』は映画音楽です。
『プロコフィエフは五曲を選んで交響組曲としました。映画の方は滅び、この優れた音楽だけが残りました』
とあります。
この曲の二曲目の『ロマンス』は、スティングの『Russians』に使われているテーマです。
現在のある世界情勢をきっかけに、この『Russians』が再び注目を集めました。私がスティングのアルバムをカセットテープで買ったのが高校生の時。すでにキージェ中尉は知っていました。芥川也寸志さんの本を読んでいなければ、Russians のテーマの原曲に気づかなかったかもしれません。
本当に、私の心に残った本の一つでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示