すべて現実だと説明できるのに、非現実のようなお話。
白黒で描かれた精巧な絵なのだが、バランスが妙に変なので、
現実感非現実感のどちらも感じさせる。
ブルテリア犬のフリッツの面倒を頼まれた少年アラン。
フリッツは人を噛んだり、
アランの帽子を取っていたずらしたりする行儀の悪い犬。
散歩中。フリッツは首輪を切って逃走!
「ぜったいにどんなわけがあってもこの先に犬をいれてはいけない!
ー引退した魔術師アブドゥル・ガザージ」と、
立て看板がされている庭に入ってしまう。
つかまえてとごらんと逃げるフリッツをアランは見失う。
「ああ、きっとガザージ氏に捕まったに違いない」
おそるおそるフリッツをかえしてもらいに行く。
ガザージ氏は、犬が大嫌いだから、あひるに変えてしまうのだと話し、
「これがきみのフリッツだよ」と、不気味にあひるを見せる。
あひるは本当にフリッツなのか。
ガザージ氏の言葉を信じて心配して涙ぐむアランを
「フリッツなら大丈夫。あひるとして生きていける」と慰めたくなった。
(フリッツと思われるあひるは)ほら、楽しそう。
フリッツは魔術をかけられても反省しない犬だろう。
あひるになってもアランをからかって遊ぶだろう。
「なんてわるいいぬなの、おまえは!」
犬好きに薦めたい絵本。