昭和文学よもやま話―十返肇著作集より (1980年)

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  •  「文芸評論」と「文藝批評」というものがある。
     「評論」というのは論を持って評ずるもので、まずはその「論」の中で話題が展開する。これは、従来からの「論」の蓄積がモノを言うので、賢ければ賢いほど分がいい、みたいな所がある。

     一方、批評というのは、世の中にあるAに対して、「これはこういうものだ」と名前をつける芸である、という。これを下手にやると、物食って「ウマイ」と云えば金が貰える人種だとあらぬ誤解を受けることになる。映画見て提灯持つのと一緒です。

     要するに、「いかにうまそうに食べるか」というところに実は藝があって、文芸批評も、いかにその消費するさまを面白く見せるか、というところに血道をあけねばならぬ。とすると、十返肇の仕事って、そういう批評藝の一つの完成形だと思っていいと思うのです。本書を読むと、断片的にでもこのおっさんが「困ったおっさん」であるのは間違いがないんだけれども、ただ、その困ったおっさんを傍から見ている分にはえらく面白い、と。

     そういう本です。
     批評というのは客観的な精密さよりも、むしろ書き手の面白さじゃねえの? という答えの一つだと思います。これがもうちょっと独り遊び感が強くなると、嵐山光三郎とか、そっちの方に流れていく気がする。

     こういう人もいたんだよなぁ、ということで。

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