20カ国語ペラペラ (1973年)

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感想・レビュー・書評

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  • 教授からすすめられた古書を読んでみた。語学学習についての本で、前半は著者の語学学習録、後半は語学学習法が書かれている。

    もう50年近く前の本なので、tipsとか参考にならないものも多かったが、この時代にポリグロットになれるのは普通にすごい。

    並大抵ない行動力がなければ実現不可能。

  • いや、すごい。いままで読んできた外国語学習法の本のなかで1番感銘を受けた。
    1つ1つの具体的なプロセスはもちろんだけど、
    How to本で私が何よりも大切だと思っている、読者のモチベーションを上げるという役割を見事に果たしていると思う。
    ほんとにおもしろかったし、あぁ頑張ろうって思えた。もっかい刷り直してお願い!

  • 早朝の電話に目をさます。知人の勤めているホテルからのようだ。「外人のお客様がお着きになりまして、係の者が知っている限りの言葉でおたずねしたんですが、どうしても通じないんです。」知人の困りきった顔が目に浮かぶ。その客もさぞかし心細い思いをしていることだろう。ここで20ヵ国語を自在に操る種田輝豊氏が満を持して登場です。

    “Do you understand English?”
    (英語はおわかりですか?)

    “Alors, vous parlez Francais?”
    (フランス語なら?)

    “Sie sprechen Deutsch?”
    (ドイツ語をお話ですか?)

    “может быть... вы говорите по-русски?”
    (ロシア語ならわかっていただけますか?)

    “Lei non sara mica italiano?”
    (もしかしてイタリアの方では?)

    “Kanske kommer Ni från Skandinavien?”
    (多分、北欧の方ではないかと存じますが?)

    それまで神経質そうに頭を横にふっていた老紳士は、そのスウェーデン語を聞いたとたん、とびあがって腰をうかし、救いの神にとびつかんばかりに両手を広げて満面の笑みを浮かべた。言葉とは人間の喜びである。

    ... というポリグロット冥利に尽きるエピソードに始まる本書は、幼少時代にドイツ語、小学校で英語に触れて以来、文字通り全生涯を語学習得に費やした種田輝豊氏の猛烈な人生記録です。ずっとずっと読みたくて県立中央図書館でやっと見つけた大切な一冊。友人の結婚式へ向かう電車で読みはじめたら、あやうく乗り過ごしそうになるほど熱中してしまいました。

    もとはといえば世界中の言語で使われている発音の種類の豊富さに惹かれたという著者。高校生の頃、外国人の日本語発音が日本人のものとかけ離れていることに興味を持ち、彼らの日本語をテープに録音して各語の発音のクセをつかむ「実験」を試みていたそう。例えば「日本語は難しいですね」はアメリカ人にかかると「ネハンゴウ ウァ ムズウカシイ デスネイ」となり、フランス人だと「ニオンゴ ヴァ ミュズュカシイ デズュネ」と聞こえます。

    著者は全国選抜のAFS (American Field Service) 試験に合格。晴れて渡米を果たすも、完成していた英語はそっちのけでフランス語やスペイン語の授業に勤しみ、英語以外のラジオ放送を聞き漁り、世界各国からの留学生と片っ端から会話を試みて留学期間を過ごしたそう。石川啄木はふるさとの訛がなつかしくて上野駅に行きましたが、種田氏はというと未知の声を聞こうとエンパイアステート・ビルの展望台をぶらついていたというのですから、その多言語にかける情熱のほどがうかがえます。

    帰国後も大学受験間近まで気ままな勉強を続けて、英語、イタリア語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、スウェーデン語、フィンランド語はほぼ完成。東京外語大の英米科に入学した後も学業ではなくイタリア大使館でのアルバイトに精を出していたというから病膏肓に入る。大使館の職員との接触が刺激になって、ペルシャ語、トルコ語、オランダ語、朝鮮語、デンマーク語、ノルウェー語、アイスランド語、と守備範囲を広げていきました。


    「種田式外国語学習法」
    ●学習の目安として、まずは1,500語 + 500例文を丸暗記すること。最初に出会う基礎単語と例文を叩きこみ、手持ちの表現をまずシッカリ使いこなす態度こそ、後に更なる単語を「殖」やしていく作業につながります。初歩的読書の幅の広さが後のより深い理解につながるのと似ています。

    ・1,500語、辞書があればたいていの文章は読める。会話も通じる。
    ・500程度の基本的な例文で、たいていの表現は間に合う。
    ・4,000語、その語を母国語としている人が、日常生活で使う語数。
    ・8,000語、教養度の高いインテリ層が使いこなす語数。

    ●「文法書」よりもまずは「入門書」を完成すること。薄いもので、使われている単語が1,500程度のもの。ちなみに日本の中学校で習う英単語が2,000語程度。勢いのあるうちに一週間ほどで目を通し、その言語の性質や特徴をだいたい感じ取る。それを四回の「うるし塗り」作業で完全征服。うるし塗り?もしや言語習得の奥義がここに... と思い本書を手に取った読者の皆様、なんのことはありません。ただただ通読→精読→精読→精読するのです。

    ●「自問自答、ひとりつっこみ、ひとりごと」で、手持ちの語彙と表現の範囲で会話を組み立てる練習をする。今日はだいぶ寒くないか?→ええ、寒いですね。人が多いのは月曜日だからか?→お祭りがあるらしいですよ。あの娘は美人だな→彼女は女子大生です。この匂いは何だろう?→あそこにパン屋があります。人目をひかないように心の中でやりましょう。

    ●その言語を母国語として話す人から直接聞いた興味深い言い回しや文学作品に登場する見慣れない表現は、すぐに頭の中で繰り返して早い機会に自分でも使ってみる。イキトウゴウ→意見が合う、ウンサンムショウ→消えてしまう、という定義だけに頼ると「さっきの人どこへ雲散霧消したの?」と言うことになりかねません。相手の反応を見て、ニュアンスをつかみます。

    ●映画を観るときはストーリを詳しく読んで状況を把握しておく。一本見てどれだけプラスになるか、というようなケチな心を起こしてはいけない。一言半句もらさず理解しようと気張ってもいけない。作品を堪能する。外国旅行はモチベーション維持や見聞を広げるために楽しむものであって、語学勉強のためにはならない。一年か二年で手っとり早くその国の言葉に通じてこようなどとは、大それた幻想である。


    「持って生まれた根性はないが、物事に対する執念というか執着心というかようするにしつこさが唯一の武器だった」と語る種田氏。

    単語力は語学力!とは言え、学習者はなにもその国語の古典から現代に至る文学を征服しつくそうとして外国語を学ぶものではありません。ふつうはもっと生活の実用のために学ぶもの。無為にこつこつと語彙を増やすのではなく、猛烈な集中力と最短距離を求めて自分なりに工夫した方法論は、次の言語習得に必ず役に立ちます。ここに多言語学習の楽しさがあるようです。

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