播磨灘物語〈下〉 (1975年)

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  • (2014.12.29読了)(2014.12.24借入)
    【黒田官兵衛とその周辺】
    大河ドラマの『軍師官兵衛』より詳細に官兵衛をたどっている感じがします。
    三木城落城後から、光秀討伐あたりまでが詳細に語られています。光秀滅亡後のことに関しては、「如水」という20頁ほどの章で語られるだけです。光秀滅亡後は、官兵衛の出番はほとんどなかったと司馬さんは判断したようです。
    三木城落城後は、淡路島から四国へ乗り出すための支援を秀吉に頼まれたようです。その後、毛利との戦いが始まり、高松城の水攻めの話になるわけですが、水攻めのアイデアは、秀吉によるものと司馬さんは見ているようです。ただし、川をせき止める方法については、官兵衛に委任したけれど、官兵衛の同僚が船に石や土を積み込んでそのまま沈めてしまってはどうかというアイデアを出し、それを採用実施した、としています。
    信長が本能寺で討たれ、秀吉が毛利との和睦を急いで京都へと引き返した「大返し」のあたりに関しては、本能寺の変の直前に、和睦の話はほとんど整い、高松城の清水宗治の切腹の実施の時間が未定だった、としています。
    三巻本だったので、つい後回しになってしまいましたが、黒田官兵衛について知るには、この本が一番いいのではないでしょうか。

    【目次】
    野火
    山陽道
    備中の山
    備中高松城
    安国寺殿
    変報
    東へ
    尼ケ崎
    遠い煙
    如水
    あとがき

    ●構想の実現(19頁)
    かれ(官兵衛)は栄達欲よりも構想をたてることをよろこび、その構想を実現させることで彼の欲望のすべてが充足してしまう。かれにも本来の私欲があるにせよ、かれが構想をたてるときは常にそれは抑圧されている、というより計算外に置かれていた。
    自己の欲望や利益や事情に囚われては物が見えなくなるか、物の像が歪んで見え、そこから引き出される判断は使い道のないものだということを知っているのである。
    ●義経の没落(111頁)
    義経は兄の頼朝から兵を借り、平家追討の大功をことごとく自分のものにした。その功を諸将にも分けなかった。大功は義経の軍事的天才のしからしめるところだが、しかし頼朝や諸将にとってはいい気持ちのものではなく、結局はこの大功が義経の没落のもとになった。
    ●貝原益軒(202頁)
    (貝原)益軒は黒田家の家臣だったために、官兵衛に関して当然ながら、過褒の筆を用いた。
    ●中国大返し(202頁)
    この「中国大返し」の外交と山崎への逆進という行軍上の作戦は、官兵衛が筋を書き、秀吉がそれを採用して乗ったかの観もある。
    ●秀吉の才能(210頁)
    この世で秀吉の才能を見出したのは信長だけであり、信長によってかれは抜きんでられて行ったのだが、先輩や朋輩からは敬遠されておらず、たれもが、秀吉の異能を素直に認めようとはしなかった。かろうじて北陸にいる前田利家が秀吉の友人であるということは官兵衛も聞いている。
    ●光秀の心境(213頁)
    光秀は天下を取ったが、京に居すくみ、外への行動としてはわずかに安土城を焼き近江を抑えたにすぎない。光秀にすれば、悪主の信長さえ殺せば悪主に対して密かに怨みを抱いている他の諸将が、慕うようにして自分についてくると思ったのであろうか。

    ☆関連図書(既読)
    「軍師官兵衛(一)」前川洋一作・青木邦子著、NHK出版、2013.11.30
    「軍師官兵衛(二)」前川洋一作・青木邦子著、NHK出版、2014.03.20
    「軍師官兵衛(三)」前川洋一作・青木邦子著、NHK出版、2014.07.10
    「軍師官兵衛(四)」前川洋一作・青木邦子著、NHK出版、2014.10.10
    「播磨灘物語(上)」司馬遼太郎著、講談社、1975.06.20
    「播磨灘物語(中)」司馬遼太郎著、講談社、1975.07.20
    「軍師の境遇」松本清張著、角川文庫、1987.07.25
    「黒田如水」吉川英治著、講談社文庫、1989.11.11
    「黒田如水」童門冬二著、小学館文庫、1999.01.01
    「信長の棺」加藤廣著、日本経済新聞社、2005.05.24
    「集中講義 織田信長」小和田哲男著、新潮文庫、2006.06.01
    「秀吉神話をくつがえす」藤田達生著、講談社現代新書、2007.09.20
    「千利休 新版」桑田忠親著、角川文庫、1955.08.20
    「千利休 無言の前衛」赤瀬川原平著、岩波新書、1990.01.22
    「利休にたずねよ」山本兼一著、PHP文芸文庫、2010.10.29
    (2014年12月30日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    信長が殺された。秀吉は「主の仇」光秀を山城山崎で討ち、その二年後には、豊臣政権を確立した。官兵衛は自分の天下構想を秀吉という素材によって、たとえ一部でも描きえたことに満足だっただろう。この戦国の異才が秀吉に隠居を許され、髪をおろし入道し「如水」と号したのは、四十八歳のときであった。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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