暁の寺 (1970年)

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感想・レビュー・書評

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  • 本多そのものがやはり日本そのもの。苦しい時代を経て、耐え忍んで経済で財をなした。世界有数の先進国!その足元は確実に腐敗しはじめている。これは、耐えたが故の反動で、一度緩んだものは取り返せない。人の一生は有限なので、転生輪廻でリセットされる。だけど、国は?リセットできない寿命の長いものはどうする?三種類の種子でも説明つかない連続性は只々腐敗を進める。筆者の問題提起の根源はこの点かと。これまで、この上なく真面目にきた本多の壊れ具合が強烈なメッセージを発している。三島由紀夫さん、世の中は思った以上に、思っていない方向へagingされています。

  • 「豊饒の海」第三部.
    清顕,勲の生まれ変わりと思われるタイの王女ジン・ジャンへの本多の戀(?)を中心に話は展開する.
    タイとインドへの旅行と,戦後に急にお金持ちになったことは本多の人生観と人生に大きな影響を与えている.

    それにしても本多の倒錯ぶりはすさまじい.人生の終わりが見えてきて,お金で手に入るものと,そうでないものがはっきりとしてくると,こういう風になる人もいるんだろうかとも思うが,このような中年を書くことで三島由紀夫は何を読者に伝えたかったのだろう.天人五衰を読むとわかるんだろうか.感心する部分はあるものの,何だか本当に疲れる小説になってきた.

    本多が戦中に熱心に研究する輪廻思想の部分は第二部の神風連の部分以上に読みにくい.この四部作の思想の核となる部分なのだろうが,私にはついていくことができず何十ページか飛ばして読んでしまった.

  • 間が空くとなかなかその世界に入っていけない。一気に読むべし。
    老年期に入った本多さんの残り火のような物語。ローソクも消える前に一瞬強く燃えるような恋?いや、清顕への見果てぬ想いだ。清顕への思いが理解できないからこの長編小説には辛いものがあるが、一方で、哲学的な勉強になる。
    特に描写に関してくどいとも凄いとも呆れる。
    「あるひはプールの隅をひそかに舐めてゐた水が、光を負うた鋭い背中の肉に切り裂かれて、輝く水の切り口を示したりした」
    これはプールの水の描写のほんの一部分だけど、主人公の心情との相乗効果がさらに倍加されている。水が肉でありしぶきが切り口となって傷ついて崩れていくとは!
    旧仮名遣いも懐かしく心地良い。
    輪廻転生の主題は次巻で決着するのだろうか。
    なかなか共感、理解できないのだけど。

  • バンコク、タイ、山中湖などを舞台とした作品です。

  • エロかった。じっとりと纏わりつくような。三島作品はこれが初めてだけど、それにしては濃い作品をチョイスしてしまったような気がする。死生観が興味深い。真理はどこにあるんだろう。見てみぬふり、は原罪なのか、それとも知ることは苦しみなのか。

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