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感想・レビュー・書評
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マルクスの哲学的な思想の形成過程をたどり、とくに疎外論にかんして掘り下げて考察をおこなっている本です。
本書は、『社会主義思想の成立―若きマルクスの歩み』(1955年、弘文堂)の改訂版であり、『共産党宣言』にいたるまでの初期マルクスの思想の研究書です。ただし「改訂版まえがき」で著者がはっきりと述べているように、初期マルクスの思想にのみを重視する立場から、とくに人間疎外の問題についての考察をおこなっているわけではありません。本書の初版刊行後に疎外論が流行したことで、初期マルクスの思想についての誤った理解がひろまったと著者は述べています。梅本克己と松村一人を中心とする主体性論争などがきっかけで初期マルクスの思想への注目が集まるなかで、そうした誤解が生じることになったのだと思われますが、著者は疎外論に焦点をあてつつ、マルクスの思想形成のなかで疎外の理解が深まっていった経過をたどり、現実の市民社会の中で疎外を克服する道が求められていたことを明らかにしています。
マルクスの思想にかんしては、個々のテーマにかんして詳細な研究がなされている一方、彼の思想の全体像について多少立ち入って知りたいという読者のニーズにこたえてくれるような本は、あまり多くないような気がしています。そうした意味では、本書はマルクスの疎外論が中心となっているものの、個人的には有益な内容だったように思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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