人間太宰治 (1962年)

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感想・レビュー・書評

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  • 良かった。
    まず、出だしの「最初の日」ですでに何度か感動して始まる。
    でも、読み進めるにつれて、太宰治を追い詰めてしまった一要因は、作者の山岸外史にもあるのではないかと思ってしまった。

    私にも身に覚えがある。
    友達がよくない彼氏と付き合ってしまって、友達が好きすぎる余り、忠告を繰り返してしまった私。
    友達から、縁切り宣言をされてしまいました。
    黙って、関係を切ることもできる今の私には合わない風潮を思えば、最後まで誠実に接してくれた彼女だったと思う。今も、携帯に連絡先は登録されたままで、10年たっても消していない。失って後悔した友達は彼女だけだ。

    そんな感じで、出会った日から、太宰の才能を買う余り、プレッシャーをかけ続けてしまった外史。
    批評家の立場で、自分は産みの苦しみを知らないのに、何を言うかという感じ。

    とても、正直な方なのだろう。亡くなって、時がたって、もっと褒めてやれば良かったと悔恨の思い。
    なかなか、見つめるのはしんどくて、目を逸らしたくなる自分の欠点部だ。

    友情、激論を交わす日常、若気の至りでいたずらに満ちた日々、絶交状を送った日、最後にあった日、自殺を聞いてからの日、などが綴られる。

    太宰の失踪の章では、太宰と死について語り合ったことを経て、結局、友人でもわかり合えたつもりでわかり合えない部分もある、自分が他人の自殺を止める資格がある人間なのか、自殺前に友人なのに相談してもらえなかった憤りなどに共感する。

    太宰が売れ出した頃に、取り巻きと言われて、太宰に絶交状を送る山岸。この時は、太宰からの、会って話をしようの返事で解決。そわそわ待っている太宰や、きみが必要、友だちはそう簡単にできるものじゃないと言ってくれる太宰のかわいさ。

    師匠である井伏鱒二、同じく友人である壇一雄さんによる太宰治本を読んだけど、これが一番生身の太宰治の気配が漂い、大切な友を亡くした深い悲しみを感じた。

  • とても感動して泣いてしまった。厳しくもあたたかいまなざしを持って太宰に接し続け、生涯の盟友であった評論家・山岸外史。太宰治と比べると知名度は低いが数々のエピソードを読んでいると「山岸さん、いい人すぎる!」と胸が熱くなった。後半で語られる彼の政治的なイデオロギーに関しては時代を感じざるを得ないが、これは紛れもなく名著。太宰との素っ頓狂な初めての出会いから心抉られるような辛すぎる別れまで。まさに一大ロマンであります。山田風太郎が著作で記した「人の世に情けはあるが運命は容赦がない」を思い出した。

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