恋人たちの森 (1961年)

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  • 「ボッチチェリの扉」田窪家に下宿する由里(読み・ユリア)が一人称の主点となり主人公のやうだが、描写はそこの一番若い娘の麻矢に傾けられてゐる。他の者には軽蔑的であるのに對し、同性愛的な描写さへ見受けられる。其の麻矢が処女を失ひ白人と黒人の間にできた米兵士に見初められるも無視し、日本青年とクリスマスの夜、婚約を親類に発表して轢き殺されるまで。切なさよりも、物語性よりも、とてつもない命の儚さを思います。これくらい簡単に人が殺し殺される時代なんだ。戦争によってではなく、その傷跡のせいで。メランコリックなんかでは片付けられない戦後にしか書けないであろう主人公が乙女であるのに殺伐とした雰囲気たまらん。客観視が透徹してる若い主人公たまらん。
    「戀人たちの森」少年という生き物の残虐さが、こわい。その場ではいくら一途に思えていても、パウロにとって、ギウロは死んだらそれくらいの通過点の人としてしか見られなくなる恐ろしさ。それが子供の残虐性なのだろうが、それで救われる少年も少なかろう。袋小路だ。陰鬱だ。

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