新しい世界の文学〈第17〉黒いいたずら (1964年)

  • 白水社
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感想・レビュー・書評

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  • ウォーらしい皮肉の利いた作品。
    最初は異色作なのかと一瞬思ったが、ストーリーが進んでからはウォーらしさが強くなって楽しめた。
    しかし、ダラダラ読んでいたら時間がかかってしまった……。

  • 黒いいたずら…その他
    「黒いいたずら」ですが、吉祥寺読みた屋まで行って見つけた白水社の古本。吉田健一訳。舞台は西欧列強が植民地獲得合戦を繰り広げていた、東アフリカの島のスワヒリ帝国。またしても、舞台自体に興味が湧く…軍隊の帰還の場面なんて、イメージが手に取るように展開する。でも、まだ小説の背景説明の段階かな。それに主人公と言われている人がまだ登場してないし…
    ウォー
    (2011 09/29)

    声から立ちのぼる小説
    おはようございます。
    なんだか久しぶり…の間に10月になった…「黒いいたずら」ですが、今日は90ページくらいまで進みました。
    やっと、主人公(と、おぼしき)バシルが登場しましたが、なんだかウォーの分身?ってな感じ。保守党の大物の息子で、でも、ロンドンに倦怠感を抱いている。なんかしでかしそうなコイツが東アフリカの架空の島国家アザニアに行くことによって起こる珍騒動…ってのが、この作品の概要。
    で、標題ですが、この作品に多用されている技法として、人々の会話が、ただ会話の中身だけの連続(話者は誰かということも示されず)という箇所が様々に登場します。ウォーって作家はこういう空気感(うまく言えませんが)を捉えようとした作家なのかな?
    今年は、5月頃にグリーンの「事件の核心」、10月頃にウォーの「黒いいたずら」と、アフリカの英植民地社会を描いた作品をよく読んだ年になりそうです。あっちは西アフリカ、こっちは東アフリカ。
    (2011 10/02)

    寝につく風景の小説
    えと、おはようございます。
    今日の「黒いいたずら」はちょうど真ん中くらいまで…かな。イギリスらしい世俗風俗小説というのは、読んでいて面白いのに、こういうところで取り上げて何か書くのはムツカシイ…
    そんな中で、今回は、標題にある登場人物が寝につくところに着目。前に読んだところのフランス公使バロン氏と、今日読んだところのバジル・シールの母親?の寝につく時に行うもろもろが、しつこいほど丹念に書かれています。こういう皮肉混じりの文章はほぼ全文でして(笑)、それを味わうのがウォーを読む醍醐味かも。
    あと、アザニア国皇帝セスが、アザニアに来たシール(前にオックスフォードで出会っていた)を見て思い出にひたる、その思い出の内容は「大転落」を思い出させます。
    (2011 10/04)

    苦笑の文学、または文学の苦笑(苦笑)
    イヤなタイトルだなあ(笑)…内容がないから余計に…
    と、いうことで、おはようございます。
    「黒いいたずら」は、主犯格…じゃなかった…主人公格の黒人皇帝セスと、白人風来坊シールが出会って意気投合? アザニアを「近代化」しようとしていろんな喜劇や騒動を巻き起こします。みんなプライドや生活がかかっているから真面目なんだけど、正直苦笑せざるを得ない。この苦笑こそウォーの本質なのかな…待てよ、ウォーだけではなくて、小説というジャンルそのものの本質なのかも? 悲劇や詩などの一次的文芸のあと、そのパロディでもあり、人間の進歩なき堂々巡りの循環を笑う二次的文芸。「初めは悲劇として、そして二度目は笑劇として」とか言ったのはエンゲルスでしたっけ? ナポレオンとナポレオン三世の話でしたっけ?
    笑いにも飽きた??
    (2011 10/05)

    今日読んだところは、セスの「近代化」政策が空回り度を急速に増して、シールもついて行けなくなった頃、シールの親類でもあるミルドレッド母娘が英国からやってきたり、グモ伯・アルメニア教会主教、フランス領事バロンの3人が組んで幽閉されていた前皇帝の子供(といってももう90歳)を解放したりで、なんだかまた大騒動が起きそうな雰囲気。えっと、前に「声から立ち上る小説」とか「寝につく風景の小説」とか書きましたが、今日読んだグモ伯と(前述の前皇帝の子が幽閉されていた)修道院の院長の会話などその両方を兼ね備えた面白い場面。
    一方、セスは誰にも相手にされなくなってきて、ついにはたった一人で大聖堂を取り壊す作業をしてたり(それをミルドレッド母娘がみつける)。どうなることやら。
    (2011 10/06)

    祭典→クーデタ(奪冠)ってバフチンそのもの?
    えと、おはようございます。
    「黒いいたずら」は産児制限の祭典でのクーデタ騒ぎ。その場面はユークーミアン氏のホテル屋根上からのミルドレット母娘の視点で描かれている。だから何が起こっているのかさっぱりわからないけれど、彼女達は彼女達なりになんとかうまく立ち回り…まあ、こういう時はこんな感じかなあ。
    それから、英国公使の官邸(町から少し離れたところにある)に皆集まって来て、救出用の飛行機がやってくる。セスのところに行くというシールと公使の娘プリューデンスとの、ちょっと前から続いていたアヴァンチュールもせわしなく、あっけなくお別れの時。感動の場面などもありませんが、まあ、こういう時はこんな感じかなあ…
    で、「いたずら」って?確か馬の名前だったような…
    (2011 10/07)

    ブラックユーモア??
    えと、おはようございます。
    今日はほとんど一日中寝ていた(笑)のですが、「黒いいたずら」少し残っていたのに決着をつけようと、スターバックスで読んでました。んで、読了したのですが・・・えーっと、最後にコーヒー飲むより目の覚める大どんでん返しが待ってました・・・
    昨日の日記で、のんきに?シールとプリューデンスの別れのシーンなど書いてましたが、あの後プリューデンスの乗った飛行機のみアザニア領内で不時着し・・・その後いろいろあって・・・亡くなったセスの弔いをシールと現地の村人でやっている宴会の鍋の「胡椒の実や芳香を放つ木の根とともにぐちゃぐちゃになるまで煮た肉」(p277)となってしまいました。シールも読者もそれを知らずにその鍋の場面を経て、判明するのはその2ページ後。
    これぞまさに「黒いいたずら」・・・原題が自分の持っている本には出ていないのでよくわからないのですが「ブラックユーモア」?(英国で「ブラックユーモア」って表現があるのかよくわからないのですが)
    その宴会の場面では、なんだがいろいろな階層のレベルがあって、まずはシールが宣うセスの弔いの言葉のレベル。ここで死者の霊を慰めるような美辞麗句は全然生前のセスとは異なるのは読者にもわかるのだけれど、でも歴史として後世に残るのはこのレベルでしかないんだよなあ。続いてシールと現地人の間のコミュニケーションレベル。なんか合っているようで、大きな段差があることはそのどんでん返しによって証明される。最後にシールとプリューデンスとの「再会」という肉体的レベル。他、分析すれば様々なレベルがこのシーンには凝縮されています。
    アフリカの白人支配を反転させた「黒いいたずら」とか、黒人側でも「食人」という儀式の持つ精神性が変容して崩れてきているとか、今読んでいる「ポストコロニアリズム」にも通じそうなポリティカルな議論もありますが、それよりも解説で訳者の吉田氏が言っている通り、登場人物一人一人の人間が「◯◯人とはこういうものだ」的な描写ではなく生きている人間として描かれているのがこの小説の最大の読みどころ。ウォーってこれで自分は3作目なんだけど、読み進めるごとにどんどん深くなっていく気がしています。グリーンより上手なのか?
    ああ、この作品ほど「ネタばれ注意」な作品もないですね(って、最後に言うな(笑))。
    (2011 10/08)

  • 「ロンドンてほんとうにいやなところだと思わないかい」
    ウォーの作品のなかでも最高に胡散臭い。お腹をかかえてわらってしまう。でも救いようもなく陰惨。「大転落」のアラステア・トランピントンとバジルがつるんで堕落しているとわかった時点でゾクゾクきました。

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著者プロフィール

Evelyn Waugh(1903-1966)
イギリスの著名な出版社の社主で、文芸評論家でもあったアーサー・ウォーの次男として生まれ(長兄アレックも作家)、オクスフォード大学中退後、文筆生活に入る。デビュー作『衰亡記』(1928)をはじめ、上流階級の青年たちの虚無的な生活や風俗を、皮肉なユーモアをきかせながら巧みな文体で描いた数々の小説で、第1次大戦後の英国文壇の寵児となる。1930年にカトリックに改宗した後は、諷刺の裏の伝統讃美が強まった。

著作は、代表作『黒いいたずら』(1932)、ベストセラーとなった名作『ブライヅヘッドふたたび』(1945)、T・リチャードソン監督によって映画化された『ザ・ラヴド・ワン』(1948)、戦争小説3部作『名誉の剣』(1952-61)など。

「1996年 『一握の塵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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