白鯨〈下〉 (1957年) (岩波文庫)

  • 岩波書店
3.38
  • (1)
  • (2)
  • (4)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 23
感想 : 7
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • (2016.09.04読了)(2016.08.31借入)(1975.09.01・ほるぷ図書館文庫)
    この巻には、90章から135章までと結尾が収録されています。
    最後の3章、133章から135章までが白鯨との死闘になっています。最後がどうなっているかは、読んでのお楽しみということになります。
    この巻も他の巻と同様に、あれこれと脱線します。白鯨を見つけたものにあげることになっている金貨は、どの国のどのような金貨であるかとか、生きているクジラと骨だけになったクジラとではどれぐらい大きさが違うかとか、化石として見つかったクジラは、大きさがどのように変わってきているのか、巨大化しているのか小さくなってきているのかとか、船には、船大工や鍛冶屋が乗っていてどんな仕事をしているのかとか、よくもまあこんなに脱線できるのだろうと思うばかりです。
    クジラ百科という評価もありますが、クジラに関することだけではないところが何ともすごいというしかありません。

    一人で読み通すには、かなり大変な本のようです。今回は、同時期に二人の方が読み切ったというので、頑張って読み切る事が出来ました。
    読めば、いろいろと話題にできる内容が豊富にある本ということは言えると思います。
    名作かといわれると、評価が分かれるのではないでしょうか。
    気になる本が一つ片付きました。

    【目次】
    九十章 頭と尾・何が何やら
    九十一章 ピークォド号が薔薇蕾号に遭う
    九十二章 竜涎香
    九十三章 海に漂うもの
    九十四章 手絞り
    九十五章 法衣
    九十六章 油煮釜
    九十七章 灯火
    九十八章 積込みと片づけ
    九十九章 スペイン金貨
    百章 脚と腕。ナンタケットのピークォド号、ロンドンのサミュエル・エンダービ号と遭う
    百一章 酒の壜
    百二章 アーササイディーズの島の木陰
    百三章 鯨骨の測量
    百四章 化石鯨
    百五章 鯨は縮小しつつあるか―彼は滅びるか
    百六章 エイハブの脚
    百七章 船大工
    百八章 エイハブと船大工
    百九章 船長室におけるエイハブとスターバック
    百十章 棺の中のクィークェグ
    百十一章 太平洋
    百十二章 鍛工
    百十三章 炉
    百十四章 鍍金師
    百十五章 ピークォド号は若衆号に遭う
    百十六章 死にゆく鯨
    百十七章 夜直
    百十八章 四分儀
    百十九章 蠟燭
    百二十章 初夜直が終わる頃の甲板
    百二十一章 深夜―船首楼、舷牆
    百二十二章 深夜、檣上。―雷鳴と稲妻
    百二十三章 マスケット銃
    百二十四章 羅針
    百二十五章 測程器と線
    百二十六章 救命浮標
    百二十七章 甲板
    百二十八章 ピークォド号、レイチェル号に遭う
    百二十九章 船室
    百三十章 帽子
    百三十一章 ピークォド号、歓喜号と遭う
    百三十二章 交響曲
    百三十三章 追跡―第一日
    百三十四章 追跡―第二日
    百三十五章 追跡―第三日
    結尾
    訳註
    ハーマン・メルヴィル年譜

    ●モゥビ・ディクは磁石(73頁)
    (エイハブ)「だが、それでもやっぱり追わねばならんのだ。あの呪わしいやつは、たしかに放っといたほうがよろしいのだが、それでいて、強く心を惹きつけるのだ。やつは磁石そのものだ!」
    ●ピークォド号の船大工(109頁)
    彼は、三年も四年も大船が文明を離れたはるかな遠洋を航するときに、絶間なく起こってくるところの、数知れぬ、いちいち名づけようもない、機工上の急用に対して、ふしぎなほど有能だった。彼が、その通常の任務―穴のあいた短艇や折れた帆桁の修繕、水かきが毀れた櫂の形を直すこと、甲板に円窓をあけること、舷側の板に木釘を打ちこむこと、その他直接に彼の職能に属していることを、てきぱきと片付けたのは、言うまでもない。
    ●日本群島の地図(121頁)
    エイハブは、彼の前に、東洋諸群島の一般海図と、もう一枚は、日本群島の長い東海岸―ニフォン、マツマイ、シコケをしめす分図とをひろげていた。
    ●クジラを追って四十年(225頁)
    「まったくこんなに麗しい日に―わしは最初の鯨を撃ったのだ―十八歳の少年銛手だったのだ。四十年の昔だった。四十年間、鯨を追いつづけた。」

    ☆関連図書(既読)
    「白鯨(上)」メルヴィル著・阿部知二訳、岩波文庫、1956.11.26
    「白鯨(中)」メルヴィル著・阿部知二訳、岩波文庫、1957.03.05
    「老人と海」ヘミングウェイ著・福田恒存訳、新潮文庫、1966.06.15
    「キャプテン・クック」ジャン・バロウ著・荒正人訳、原書房、1992.10.25
    「南太平洋物語 キャプテン・クックは何を見たか」石川栄吉著、力富書房、1984.03.31
    「鯨人」石川梵著、集英社新書、2011.02.22
    (2016年9月8日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    「モービィ・ディックだ!」―エイハブ船長の高揚した叫び声がとどろきわたった。執拗に追い続けてきたあの白い巨大な鯨が、ついに姿を現わしたのだ。恐るべき海獣との壮絶な「死闘劇」がいよいよ始まる。アメリカ文学が誇る叙事詩的巨編、堂々の完結。

  • 下巻も後半に入るとそれまでの陽気なムードががらりと変わってシェークスピアの芝居みたいになる。下巻はかなり読み辛くて時間もかかった。やはり言葉が古いのもあったかもしれない。
    機会があったら新訳で読み返してみたい。

  •  19世紀前半の米国において捕鯨の真なる目的は、その巨大な体躯に含まれる大量の鯨油であった。その用途は多岐に渡るが、主に灯火の燃料として用いられた。高まる需要に従い捕獲量が増加し、資源の枯渇もあり、大陸沿岸から太平洋全域まで、捕鯨はその活動領域を広げていた。事実、当時極東の島国でしかなかった日本に対し、開国を要求した一つの理由として、捕鯨船への燃料補給が目的であったとも言われている。
     最終巻の前半では、残されていた採油作業が描かれる。本文に寄れば、捕鯨が沿岸で行われていた時代は肉片を持ち帰り、それを陸上で煮詰めて浮いた油を取り出していた。しかし遠洋では腐敗してしまうため、船上で炉を組み立て、洋上での採油を行ったそうである。特に抹香鯨の頭部には、その名の元となった白濁した鯨脳が含まれており、その放つ独特の香りに心を奪われる場面も描かれている。『私は、自分がほとんど溶けてしまうまでその抹香を絞った……乳のごとく抹香のごとき友愛の中に溶け入ろうではないか』(p36)
     物語は淡々と終幕へ向かう。どんよりと垂れ込める雨雲のような凶兆が、本文中のあちこちに散りばめられる。油漏れ、クィークェグの病、大嵐と稲妻、そして不明者を求めてさまよう船……。こうした印が幾重にも連なり、それでもなお宿敵を求め続けたエイハブの下に、白鯨はついにその姿を現す。長きに渡る死闘の顛末は、ここで語る理由はないだろう。
     メルヴィルの『白鯨』から間もなくして、石油の採掘が成功する。それと同時に、捕鯨は一気に衰退の道を辿ることとなる。米国に生まれ、南北戦争や西部開拓など激動の時代を生きたメルヴィルは、捕鯨産業の盛衰を見取ると、1891年、故郷のニューヨークで72年の生涯を閉じた。

  • 最終巻、いよいよ白鯨との戦い・・・これは長そうだな!
    と思ったら、すぐ終わってしまいました;;
    白鯨との戦いは本当に数ページで、あとは人物の苦悩や狂気など、鯨についての考えなどが前の巻で語りつくされたためか、上中下巻通してみると一番読みやすく面白い巻だったと思います。
    ・・ただ読むこと自体大変な所は相変わらずでした;

全7件中 1 - 7件を表示

著者プロフィール

(1819年8月1日 - 1891年9月28日)ニューヨーク出身。著作は代表作『白鯨』の他、『代書人バートルビー』『ビリー・バッド』などがある。

「2015年 『白鯨 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

メルヴィルの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×