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- / ISBN・EAN: 4907953018921
感想・レビュー・書評
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Eテレでやってる新しい銀英伝の感想を先輩と話していて、私の結論は「あれ観たら昔の奥田万つ里版の方を観たくなる」。
→銀英伝の奥田万つ里キャラや、FSSの永野護の絵は「気持ち悪い」と拒否反応を示す人が、当時は一定数いたよねという話
→FSSの劇場版は結城信輝を起用して、少女漫画的美麗さできちんと一般の観客を意識してた。永野護本人も「原作漫画とアニメは別」でそちらの方がいい、と。
元々FSSは「絶対アニメで動かせないメカデザインをしてやる」というサンライズに対する怒りが原点で、ずーっと後になって『ゴティックメード』を作るのだけど、永野護はブレてない
→田中芳樹の話に戻って、『アルスラーン戦記』を天野喜孝の絵でアニメ化して動かすのは無理だし、一般層ウケしないよね(結果的にシティハンターの神村さん)
→天野喜孝の絵をアニメで動かす、それをやろうとしたのが『天使のたまご』だ!
という雑談から『天使のたまご』をようやく観ました。私が押井守をリアルタイムで追ってたのは1988年〜95年までなので、85年のこの作品は観てなかったです。(長らく廃盤になってたせいもあると思う)
大学生の頃、美術の先生が『天使のたまご』の話をしてきたので「さすが美術の先生だからアニメのこともちゃんと知ってるんだなあ」と感心してたら、どうも話が食い違う。先生が話してたのはこれじゃなくて村山由佳の『天使の卵』の方だったので可笑しかったことを思い出す。
さて観た感想。
押井監督はアニメ界にいてはいけないような人間だったのではないかと。だって、一番影響を受けてる監督はゴダールなんだもの!そして逆に、アニメ界にいてくれたおかげで、日本のアニメはすごく深くなったし、海外でもブランドとして通用するようになったと思う。
なんたってこれは完全なアート映画だ。
よく言われる映画の、娯楽性と芸術性。エンタメとアートに二分して考えるなら、完全にアート。天野喜孝の絵やイメージボードを紙芝居にしたような感じ。
アニメーションは動画なのだから本来動いてナンボ。だから大塚康生さんのアクションや、ロボットものの戦闘シーン、アクションはエンタメ。
実写のアート映画だと長回しでセリフをしゃべるだけ…というのも多いけど、これをアニメーションでやると「ほとんど動かないもの」になる。
それは作画作業上は都合が良くて、この作品だとSF戦車が出てくるけど、作画が難しい履帯(キャタピラ)の動きなんかは影になってて塗りつぶされている笑。大胆な省略はやはりヌーヴェルヴァーグ的。
ものすごく動くのは、髪の毛がなびくシーンなんか。名倉靖博さんが頑張ったらしい。
という「ほとんど動かないのに、部分的に超絶こだわった作画」で、この作品に参加した庵野秀明はあまりの仕事量の多さに2週間で逃げ出したんだとか…。
お話は先にも書いたようにイメージボード(絵本)的なので、ストーリーはほとんど語られない、難解な話。
よくある「難解な映画」というのは、作者が観客に説明しない、説明ゼリフがない、語らないから難解になるというだけのこと。
この作品では「ノアの方舟」の話がセリフで語られているので、一応そこでわかるようにはなっている。
もうひとつは単純に、ボーイミーツガールもの。ゴダールが言うところの「男と女と車さえあれば映画はできる」と同じことで、当時のアニメだと「美少女、巨大ロボ、パワードスーツ」のどれか、三題噺じゃないけどいずれかそういう要素があればいい。
だから幼女と青年の話で、処女喪失する話。幼女とセックスは直接的には描けないから象徴として描いている。
その要素が卵で、そのまま卵子。殻は処女膜。監督曰く、「中に何が入っているかが重要」で、これは全くそのとおり。
中に何が入っているか…これを書くとネタバレになるから書かないけど、少女が大切に持ってる卵と、『紅い眼鏡』の主人公・都々目紅一が大事に抱えてるトランクって、全く同じだと思う。
もっと言うとこの卵とプロテクトギア、そしてのちの『攻殻機動隊』…ゴーストインザシェルのシェル、外殻だけど、全部共通している。たぶん『ビューティフルドリーマー』もそうで、押井作品のテーマはずっと「虚構」。
世界的なオタク、押井ファンとして有名なギレルモデルトロが言うには「アンタの映画はアニメも実写も大好きなんだ。どこがいいかって言うとアニメをやっても実写もやってもメンタリティが変わらないところがいい」ということで正しくて、ずっと同じテーマを繰り返し繰り返しやっている。押井監督本人がまるで『ビューティフルドリーマー』のように。
私がよくわからなかったのは、「太陽」とされているもの、そっちが方舟なんじゃね?と。ラストシーンで映るものが方舟なんだろうけど、作画上そう見えなかった笑。
方舟といえばのちの帆場暎一だけど、庵野監督『シンゴジラ』の牧博士(岡本喜八)ってモロに帆場だよねえって公開時に思った。
それと方舟ネタといえばやっぱりエヴァで、それより10年も前にやってるのが『天使のたまご』。庵野秀明は押井作品をも取り込んでるのではと感じる。
『天使のたまご』はわけのわからない難解な作品として、押井守がしばらく干される原因となった。お母さんにも心配されたらしい。『ビューティフルドリーマー』で調子に乗ってスタジオぴえろから独立したあとがこれ!
確かに、当時まだOVAが高かった時代で(だいぶ安くなったのはやはり押井監督のパトレイバーの頃から)『天使のたまご』の定価も1万2800円と、ものすごく高い。なのにエンタメ作品ではなく、動かないという…これはコケるだろうなと。でも70分ほどの中編作品なので、私は飽きずに観ることができました。
押井監督って、ちゃんとエンタメ作品を作ろうと思えば作れる人なんです。伊藤和典さんらと組んで、他の人の分量が増えると、エンタメとアートのバランスが取れてすごく良い作品になるんだけど、押井監督全開だと「世間に全くウケようとしない」ものばっかり作る。
私は1995年で押井作品を追いかけるのをやめちゃったけど、押井ファンの友達なんかはもう、半分ネタとして言ってる部分があります。
個人的にはもう一度、面白い作品を作って欲しいと思うけど……。
でも、80年代のアニメはやっぱり面白かったなあと思います。84年頃がひとつのピークで、その後はバブル期ということもあってOVAの時代になったけど、わりと自由にやれた土壌があったから押井守や庵野秀明が出てきた。その後の世代って、やっぱりそこまで面白い人って出てきてないんじゃないかなと思う。
声優について。
二人芝居で、少女の方は押井作品のミューズこと兵藤まこさん。『仮面ライダーアギト』に怪人の声で出てたけど、あれはブッちゃんデザインだからか?
青年の方は根津甚八さん。のちの柘植ですな。最近全然見ないなーと思ってたら亡くなられてたのを知らなかった……。『さらば愛しき大地』を観たいなと思ってたからショックです。
キャラデザの話に戻る。
名倉靖博さんといえば、私が子供の頃好きだったのは『とんがり帽子のメモル』。そしてのちの『楽しいムーミン一家』。あと「ポニョの企画を被せるんなら先にスジ通してよ」事件。
スナフキンやミイの三白眼と、『天使のたまご』のキャラはけっこう似てる気がする。
『とんがり帽子のメモル』以外に子供の頃好きだったのは『スプーンおばさん』で、こちらはぴえろ製作、南家こうじさん。うる星や『御先祖様万々歳!』……。
昔は名作劇場もあったし、子供向けの良質なアニメが多かったなあ。まだ子供が多かった時代だけど。今は全然見当たらない気がする。NHKは『スプーンおばさん』の再放送をまたやればいいのに。映像研効果で『未来少年コナン』の再放送は嬉しいけど。
他の作画スタッフに、奥田万つ里と貞本義行。そして、名倉さんはのちに『ゴティックメード』に作画監督として参加……と、話が最初に戻ってループしてくる。これも『ビューティフルドリーマー』状態。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
映像作品です。
セリフはほとんどありません。
いきなり理解しようとせず、受け止めてみてください。
理解は何度も見ているうちに、わいてくるかもしれません。 -
CSで観たのですが「えっ終わりなん!?」ってなったのを覚えてます
もう一度観てみたいです -
[編集] 短編ならば・・・ あと、少女と少年がセックスしなかったことに納得いかないのは私だけ?あくまで隠喩?少女というより、幼女だから?日本には源氏物語があるじゃないか・・・少女は形骸化した思想だとして、少年は何だろう
性的なもののメタファーに鏡の中の鏡以来興味を持っていた私ですがこれを見たら気持ちが萎えました。なんでだ