第三の男 [DVD] FRT-005

監督 : キャロル・リード 
出演 : ジョゼフ・コットン  バーナード・リー  オーソン・ウェルズ  アリダ・ヴァリ  トレヴァー・ハワード 
  • ファーストトレーディング
3.70
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感想 : 60
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4560285900052

感想・レビュー・書評

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  • The third man(1949年、英)。
    オーソン・ウェルズの怪演が光るフィルム・ノワールの傑作。
    『第三の男』は、第二次世界大戦後の荒廃したウィーンを舞台に、消えた男の行方を追うサスペンス映画だ。1949年のカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した作品で、その完成度は映画評論家の淀川長治をして「映画の教科書」と言わしめたほど。

    まず、スタイリッシュな映像美に注目したい。モノクロであるにもかかわらず、というよりモノクロだからこそ強調される光と影のコントラストが、ストーリーに相応しいアングラ感を醸し出している。斜めアングルの効果といい、ダミーのような人影といい、60年以上前にこんなシャープな表現が既に存在していたということに驚く。音楽にも着目したい。ツィター奏者アントン・カラスの奏でるテーマ曲は、映画音楽としては最も広く知られている曲のひとつだ。ノスタルジックな旋律はストーリーや映像美とあいまって、映画とは総合芸術なのだということを改めて思い起こさせる。

    罪悪感の欠落した究極のエゴイスト、ハリー・ライムのインパクトは強烈だ。元祖サイコパスというべき悪漢を演じたのはオーソン・ウェルズ。尺としては全体の四分の一くらいしか出番はないが、存在感が凄い。闇に浮かび上がる登場シーン、観覧車での駆け引きのシーン、下水道での逃走シーンなど、彼にしか表現できないような不穏なオーラを常にまとっており、なるほど怪演というのはこういう時に使う言葉なのかと妙に納得してしまう。個人的には、マンホール(?)の鉄格子からにゅうっと指が出てくるシーンがホラーなみにキテると思った。

    「ボルジア家の圧政はルネサンスを生んだが、スイスの民主主義が生んだのは鳩時計だけ」(大意)というハリーの科白は有名。ニヒリスティックなキャラクターをよく表していると同時に、敗戦国の人心荒廃やモラルハザードを象徴しているようだ。報われない愛を貫くアンナ(アリダ・ヴァリ)はクール・ビューティで印象的。枯葉の舞う並木道を、男に一瞥もくれず歩き去るアンナの頑なさは哀しく、しかし誇り高い。お涙頂戴的な安っぽい感傷とは無縁の、映画史上屈指と言われるラストシーンだ。

    映画を語る上で外せない作品のひとつである。

  • 陰影の使い方と、配置美といってもいいような、計算され尽くした細かな演出と映像が光る、サスペンス名作。
    多くの人によって評価され、文章に起こされたあの超有名なラストは、結末を知っていてすら、胸に残る美しさと哀愁があります。
    カメラワークの魅せる技をとことん楽しめる作品といってもいいかも。

    第二次世界大戦直後のウィーン。米・英・ソ連・仏によって四分割統治され、市の中心部は共同統治として国際警察が置かれている。

    そんな混沌とした場所に、友人であるライムから仕事を持ちかけられ、はるばる海を渡ってきた、売れない作家でアメリカ人のマーチンス。
    しかし、ライムの家を訪れると、彼は前日に事故死したという。
    彼は事故に遭った直後、一緒にいた友人である二人の男によって道路脇に身体を運ばれ、医師の到着を待たずにそこで生き絶えたという。

    けれど、彼の体を運んだ男たちは三人いたという証言を、ライムのアパートの管理人から聞くマーチンス。

    果たして、ライムを運んだ「第三の男」は誰だったのか。
    マーチンスは、図らずも、ライムの恋人だった女優のアンナ、ライムを極悪人と断ずるイギリス軍のキャロウェイ少佐など、多くの人間と接触しながら、友人の謎に満ちた突然死の真相を探ろうとするけれど、彼の行く手を阻もうとするような殺人事件が起こり…。

    友人を信じ、その死を探ろうとしながらも、次々に迫り来る展開と、明かされていく事実に、揺れ動くマーチンス。
    何があっても、何を聞いても、ただただ盲目的に恋人に忠実であることを選んだアンナ。
    彼らの行動を監視し、追うキャロウェイ少佐。
    そして、それら全てを利用しようとして、最終的には破滅する「第三の男」。

    複雑な事情を抱えて混沌とするウィーンを舞台に、混沌と物語は展開していきます。

    本当に、光と影の使い方と、そして、細かな演出が憎い映画。
    暗闇の中で浮かび上がる人影や、顔など、現代から見たら古典的な演出になっているはずなのに、それでも見惚れてしまう。

    そして、一回目で映像を楽しみながらもストーリーを頭に入れて、改めて二回目を観たら、その徹底した演出と映像ぶりが改めてがよくわかりました。二度観ると、あっ、これ、あそこの伏線じゃん、とか、あのシーンとの対比じゃん、というのもかなりあります。

    女が歩き去る、あの超有名なラストは勿論のこと。
    真相にたどり着いたマーチンスと「第三の男」が最後の最後に見つめ合う瞬間、袋小路に追い込まれた第三の男の醜く蠢く指先、そして、真相のわからないままの銃声、といった演出などもものすごく巧みで、胸に残って仕方がないです。

    一度は観てよい、まさに名作ですね。
    個人的には、三度目も多分観ます。

  • 再見。7~8回目ぐらい。

    あまりにこの映画が好きすぎて、遂にウィーンまで行って観覧車に乗って、ラストシーンの並木道がある中央墓地にも行ってしまいました。

    観覧車は12人まで乗れて意外と広く、落書きがたくさんありました。

    中央墓地はウィーンの中心地から電車で30分ぐらい離れていて、ヨーロッパで2番目に広い墓地で、ベートーベン、シューベルト、ブラームス、ヨハン・シュトラウスなどの音楽家の墓もあります。

    映画のラストシーンのショットはどこで撮ったのかを停まっていたバスの運転手に聞いたら、

    「第三の男は見たことないね。俺はそもそも白黒映画は見ないんだ」などという答え。

    仕方なく通りがかりの中年夫婦に聞いたら、夫の方がテーマソングを歌い出したので一緒に楽しく歌いました。だがこのご夫婦も映画は見ているけど場所が分からないとのこと。

    結局、暫く歩いて恐らくここだろうと思われるところで知人にカメラを回してもらい、家内にアリダ・ヴァリを演じてもらい、私はジョゼフ・コットンを演じてラストシーンの再現の動画を撮りました。

    家内は映画を見たことがないので、ウィーンまで来て何をやらされるんだと呆れてましたが…。

    さらに毎週土曜しかやっていない「第三の男ミュージアム」というところに行きましたら、アントン・カラスが実際に使っていたチターが置いてあり、ジョゼフ・コットンを「人殺し」と言い続ける子役がかぶっていた帽子が飾ってあったり、オーソン・ウェルズが最後に指を出すマンホールが再現されて置いてあって写真を撮れるようになっていたりと、第三の男ファンにはたまらない場所でした。

  • 友人の謎の死を探ろうとする主人公。
    徐々にその真相が明るみになり、後半驚きの展開になる。
    その明かし方(登場の仕方)もなかなか憎い演出。闇の中の些細な光の当て方、すり寄ってくる猫。そうしたところからジワリと真相をあぶりだしていく。
    有名なテーマ曲が軽妙に流れ、重めの物語をバランスよくしてくれている。

  • 今となっては、モノクロが生み出す影、陰影が心象風景と当時の社会像を表現しうるものとなっている。モノクロが生んだ稀有な逸品。

  • ようやく観れて嬉しかったのだけど、期待値が高すぎて……。
    演出面は最高、話はありきたりでつまらんかった。オーソンウェルズの登場シーンがピークかな。
    ちょい後だけど、こないだ観た『黒い罠』の方が断然面白かった。

  • 1949年イギリス映画.BSにて視聴.

    私がこの映画を初めて見たのは有楽座・日比谷映画が再開発で取り壊される前,さよならフェスティバルと銘打って名画を連続上映したとき.もう30年くらい前か.そのあと銀座マリオンができたわけだ.ふたつの映画館の大きなスクリーンに映される名画に寝不足で眠い目をこすりながら通った思い出がある.あのころが私の映画への情熱のピークだった.

    思い出話はさておき,今長いときを隔てて見てみると,若いころには感じなかった複雑な感情にとらわれる.良い小説の再読に似た感じか.舞台になった戦災でボロボロのウィーンをみると,過ぎ去った時代への強い哀惜の思いを感じる.その内容はサスペンス映画といえば確かにそうだけど,その緊迫感は最後の地下の下水道のシーン以外はそれほど強くない.それよりもホリーとアンナの心の緊迫感がストレートに伝わってきてすごみがある.そこにオーソン・ウェルズが登場すると,役者はそろった,という感じである.音楽も秀逸.シリアスなドラマにある種の滑稽感がつきものであることを如実に教えてくれる.そのラストシーンはやっぱり鳥肌ものだった.

  • ストーリーは、ほぼ教科書になるレベルで完成されていると思う。
    当時の社会状況だから生み出せた傑作。
    ただBGMが、どうしても「ヱビスビール」を連想しちゃう(笑)
    内容の深刻さに比べて、曲が解離してるような気がするのは
    まだ、どこかのどかに映画作れた時代を連想させた。
    デジタルリマスター版だったら、☆5。

  • 下水道のシークエンスが素晴らしい。

  • 光陰のつけ方がどれも印象的で、これは現地に行きたくなる…悪役の登場シーンが短いわりに存在感が際立っていておもしろかったです。恋は切ないなぁ。

  • 「メディチ家の圧政はルネッサンスを生んだが、スイスの500年の平和は何を生んだ? 鳩時計だけだ」

    この皮肉のきいた名セリフを聴きたいがための再視聴。

    なにしろ「古典」なので、あっと驚くようなプロットではありませんが、あまり姿を見せないにも関わらず凄まじい存在感を放つオーソン・ウェルズ、4国の共同管理下のウィーンという魅力的な舞台設定(様々な言語がとびかう猥雑な雰囲気が緊迫感を醸し出す)、地下下水道での逃亡劇など、見所は多いです。白黒映画ならではの光と影のコントラストを強調した映像も美しいですね。

  • 斜めアングル、奥の消失点まで綺麗に伸びる道、影、観覧車・・・
    映画的なショットがふんだんに見られて古さを余り感じなかった。
    ストーリー的にはあまり惹かれなかったが
    半世紀越えて見ごたえのある作品には違いなかった。

    オーソンウェルズはやはり存在感のある俳優。
    影の中からスッと覗く顔には説得力がある。

    映画は知らずともこのテーマ曲は誰でも知っている。
    観た後にはふとした拍子に口を付いて出てくる。

  • 葬式から始まり葬式で終わる、内容は重いのですが、そこに軽快な音楽が乗っかると悲劇の筈なのに喜劇を観ているかのような気分になる。それが、奇妙で切ない。


    20130416

  • 原題:The Third Man
    (1949/104min/Carol Reed/イギリス)

  • いわゆるフィルム・ノワールの傑作。
    サスペンスとしてよく出来ているし、夜のシーンのライティングの技術とか、斜めの構図などのキャメラの技巧とかいろいろ褒めるべき点はある。

    特に脚本について。
    アメリカから(これ重要)来た正義感ある男が、友人の事故を巡って、あれこれと詮索していくストーリー。最初の管理人との会話で事故を知ることから始まり、第三の男の存在を匂わせ、それが怪しい疑惑へと変わり、物語を引っ張っていく。
    結局、友人を信じ、犠牲を出しながら事件の謎を追って辿り着いたのは、友人への発砲と恋する女の大事な人を失うという皮肉な展開。

    サスペンス的なプロット運びの巧さと伏線の効果的な使用で、つい見入ってしまう。巧い映画。

    撮られたのがちょうど冷戦の時期というのが面白い。

    ラストの画もいい。歩いてくる女と立ちすくむ男を捉えたキャメラがなんともシニカルだ。

  • 名作
    ウィーン

  • クラシック映画の金字塔。遅いながら観賞!
    文句無しに素晴らしい作品でした。

    ストーリー、音楽、映像、テンポ、役者、全てにおいてバランス良く調和してなおかつ芸術的に鮮麗されています。すごいなぁ。
    地下水路のシーンなどハリーが登場するシーンはぞくぞくするほど素晴らしい映像!1つ1つのシーンがとっても美しくこれぞ映画!という感じ。

    螺旋階段や観覧車などが魅力的で効果的に使われてますよね。
    魅せ方が良いです。
    アンナ役のアリダ・ヴァリの憂いを持った独特の美しい顔が忘れられない。良いヒロインですね。クールビューティーとはまさに彼女のような感じですね。
    彼女を調べてみるとイタリア人なんだとか。すごく意外ですよね。イタリアらしくない。笑

    これだから古典作品はたまりませんねぇ。無駄なスキがないです。

  • シリアスな場面でもエビスビールの音楽がかかっててまったりしちゃう。
    最後のハリーを地下水路で追い詰めるシーンは音楽なしで、意味の分からない言語で話し声がこだましたり、カットが緊迫感を出している。
    最後が最初と同じ構図。葬式行って警察に送られて女みつけて・・・
    女が並木通りを奥からやってきて、男を素通り。色んな意味があるんだろうな。

  • 洗練された絵画のように美しい画、絶妙な緊迫感と悲哀、女心の深遠

  • ウィーンを舞台にした物語。役者の演技がかっこ良かった。

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