空気人形 [DVD]

監督 : 是枝裕和 
出演 : ぺ・ドゥナ  ARATA  板尾創路  オダギリジョー  高橋昌也 
  • バンダイビジュアル
3.63
  • (221)
  • (389)
  • (341)
  • (102)
  • (23)
本棚登録 : 2331
感想 : 415
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4934569636034

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • せつない。ペ・ドゥナのヌードが美しすぎる。

  • 「21st Century Japan: Films From 2001-2020」と題されたJapan Societyでの映画祭、今回もオンライン開催であるため上映順は自分で選ぶ必要があり、トップバッターとして本作を選択することに。

    毎度のことではあるが…。できればキャストに目を通さずに鑑賞開始したい派であるため主演女優さんのことはなんにも知らずに入っていったのだが、それがまさかのクランクイン時には通訳つきでやってきた韓国出身のペ・ドゥナという実力派女優さんだったとは鑑賞終了後にも想像及んでおらず…。いやはや、やられました…。

    彼女の実力については最近継続している「是枝作品、観たら読む。」活動で手を伸ばすことにしている監督の著作「映画を撮りながら考えたこと」の中でも述べられており、彼女の凄まじいまでのプロフェッショナリズムを感じさせられたスタッフ陣の高揚ぶりが、併せて採用された国際スタッフとしてのリー・ピンビン撮影監督の実力と並べて熱く称賛されていた。なにせたった2回しかなかった彼女のNGの、そのうち1回は「人形役として泣いてはならない制約の中、自然と涙がこぼれてしまった」ということだったというのだから…。

    本オンライン映画祭プラットフォームの仕組みである「最初に再生ボタンを押してから48時間後に期限切れ」というしくみを活用しての【おさらい上映会】の流れも板につき始め、一回目の鑑賞では感じ取れたり聞き取れていなかった部分を拾いつつ再鑑賞できることに改めてありがたみを感じている次第。奇しくもちょうど十年が経ってから公開された「ロマンスドール」(2019) を鑑賞したばかりで、それをもって実感した10年を隔てての業界の進化ぶりが「型遅れの安モンです……」という台詞の響き具合に大きく貢献。他に拾えて嬉しかったのは…

    彼女の息づかい、
    メーキャップの変化と併せ徐々に現れる彼女の柔らかな表情、
    流暢な関西弁、
    吉野弘による詩とその朗読、
    そして上述のNG撮り直しの場面…

    と、枚挙にいとまがない。

    「からっぽの人間…」というような台詞が出てきたのはなんだっけと思いを巡らさせるとそれに近いものが「八日目の蝉」(2011) にあったことに気づいた。これまた本映画祭に含まれているラインナップ。本作を横に並べる形で鑑賞してみたい。

    ペ・ドゥナが出ているポン・ジュノ監督作品も観なきゃだな…。

  • なんとも綺麗で切ない映画だと思う。板尾が、オダギリジョーが素晴らしい(笑)ありえない設定ではあるが、なんとも味わい深い作品でまた見たくなる魅力がある。「私は性欲処理の代用品」という独白の即物性、犯されオナホールを自分で取り出し洗うシーンの数奇性、空気を抜いては息を吹き込むことに欲情?する男との交接シーンの特異性、、なんともマニアックなシーンのオンパレードなんだが、不思議と自然でピュアな清らかさがある。ラストのゴミ捨て場に横たわる空気人形はなんとも悲しくしかし美しい。

  • 誰もが自分勝手だろう?
    愛と称した一方的な押し付けがましい感情で、
    対象を規定しているんだ。
    在って欲しいように在ることを望むんだ。

    だから。
    あんなにも愛でていた持ち主が心を否定したり、
    受け入れてくれたと思う店長が性欲の捌け口にしたり、
    運命の人と感じた他者が最も残酷で、
    生かしたり殺したりするんだ。

    「みんな同じようなもの」という象徴は、
    人形には理解し得なかった。
    だって、人形だから。

    そうして誰しもが、
    傷ついているのだけれど、
    それを見ないようにして、
    残るは心を得たゆえに死んだ人形。



    是枝監督が描くいつもどこかファンタジックな、
    ふわりとした空気感が、
    こんなにもマッチしている作品も新鮮だ。
    そして、ロケーションが素晴らしい。

  • ラブドールってこういう風になっているんだと初めて知る。
    でものぞみ(ぺ・ドゥナ)は5000円の安物だそうだからもっと高いのはもっと精巧にできてるんだろうな。すごい世界だ。みうらじゅんを思い出した。
    板尾創路はなくてみうらじゅんでも良かったんじゃない?
    そしたらコメディになっちゃうか。
    峯田和伸なんてぴったりかも。まっおいといて。
    ぺ・ドゥナ はこのドール体型だからぴったりだった。
    日本語もめちゃ上手い。心を持ってしまったドールのせつない話しだった。
    ラスト、ゴミ置き場に捨てられているのぞみ。
    空気は抜かれてなかったけど、死んじゃったんだね。

    2009年 116分 
    監督 : 是枝裕和
    原作:ゴーダ哲学堂空気人形
    出演 : ぺ・ドゥナ ARATA 板尾創路 オダギリジョー 高橋昌也 岩松了 余貴美子 丸山智己 星野真里 柄本佑 寺島進 

    心をもつことは、切ないことでした。

  • 2009

  • 2020/02/23

  • 空気人形「のぞみ」が心を持って動いてもあんまりみんな驚かない世界。是枝監督作品だからドキュメンタリータッチかと思いきや、ファンタジー色強め。
    ・作り物らしいつるりんボブから自我を持つに従ってパーマっぽい髪型に。最後はブレードランナーのプリシラみたい。
    ・やたら花や惑星の装飾が多い板尾創路の部屋はたくさんの欲望があるのに満たされず代替品でごまかしていることの象徴?惑星のバルーンや造花は空気人形と同じ。天体望遠鏡まであるけど本当はその道に進みたかった?
    ・対照的にレンタルビデオ屋の先輩(井浦新)の部屋はさっぱりすっきり何もない。欲望すらない空虚さを暗示?のぞみの空気を出し入れする=命を弄ぶことで生を感じている?虚無感には写真の元彼女が関係している?
    ・空気を抜く=相手を満たす≒性行為?
    ・空気入れを捨てて、有限の生を手に入れる「わたし、歳を取ってるの」
    ・自分を励ます録音を留守電に入れて再生する受付嬢のおばさん
    ・田舎の実家から送られるりんごは食べず、加工食品に溺れる過食症の女
    ・メイド服パンチラマニアの青年
    ・交番で粘る構ってちゃんおばあさん
    ・公園で詩を教えてくれた人工透析の老人
    ・過去の栄光?トロフィーの並ぶリビングで1人卵かけご飯を食べるレンタルビデオ屋店長
    ・「創造主」であるところのオダギリジョーの問いかけ(ファッション系の職人にいそうなオサレ青年が空気人形を作ってるわけないと違和感)
    ・シングルファーザーと娘。人形(普通の人形の方)を捨て、のぞみの指輪と交換することで思春期への入り口に立つ?
    ・赤ちゃん、少女、青年、女、中年、老年、命の有限さ
    ・最後のハッピーバースデーの歌は名前なし、誰もが「代わりはいくらでもいる」かつ「君にしかできない」。なぜそこにARATAはいないのか。
    ・キラキラ光るもの(おもちゃの指輪、ビー玉、ほか)あかいもの(バッグ、りんご)
    ・「のぞみ」の服は自分で買ったものもどこかフェティシ

  • きれいで透明で、軽くてさみしい。

  • 誰もが空虚な思いを抱える都会で、突如心を持ったラブドール、のぞみ(ペドゥナ)が主人公。
    レンタルビデオ店の店員の純一くん(井浦新)がもう一人の主人公。
    撮影は東京の下町エリアですね、馴染みのある場所でした。

    空気を入れて膨らんだりしぼんだりするラブドールでありながら、心を持ったのぞみは、空っぽな人たちと接しながら、恋をする。ふと事件的に穴が空いて、空気が抜けてしまう。それを見て純一が穴を塞ぎ、空気を吹き込むシーンがとても官能的。
    是枝監督は原作の上記ワンシーンを映像化するために撮ったという。

    ストーリー全体としては、結構突っ込むどころが多い。心を持ったのぞみは空気のように中身がないか、というとそういうわけではない。言語を理解し、キラキラ光るものを好み、共感し、働くレンタルビデオ店で、徐々に映画への知識をつけていく。周りの人には不思議な子、という程度で受け入れられ、恋愛までする。それでも、持ち主である中年男性・秀雄には途中、自ら打ち明けるまでそれには気づかれない。
    最後に、のぞみは秀雄のもとを去り、純一のところへ向かい、破滅的なラストを迎える。

    時々出てくる過食症の星野真里や、やっていない凶悪犯罪を告白する老婆や、公園に佇む元非常勤講師の老人には、救いらしいものは与えられない。秀雄は新たなラブドールを迎えつつ、飲食店で理不尽にこき使われる日々が続く。結局、彼らの空虚な日々は続き、救いもない。

    面白かったか、と言われると、よくわからない。
    正直ペドゥナの演技で色々許され、成り立っている映画だと思う。

全415件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

著者)是枝裕和 Hirokazu KORE-EDA
映画監督。1962 年東京生まれ。87 年早稲田大学第一文学部卒業後、テレビマンユニオン に参加し、主にドキュメンタリー番組を演出。14 年に独立し、制作者集団「分福」を立ち 上げる。主な監督作品に、『誰も知らない』(04/カンヌ国際映画祭最優秀男優賞)、『そ して父になる』(13/カンヌ国際映画祭審査員賞)、『万引き家族』(18/カンヌ国際映画 祭パルムドール、第 91 回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート)、『真実』(19/ヴェネ チア国際映画祭オープニング作品)。次回作では、主演にソン・ガンホ、カン・ドンウォ ン、ぺ・ドゥナを迎えて韓国映画『ブローカー(仮)』を 21 年撮影予定。

「2020年 『真実 La Vérité シナリオ対訳 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×