シネマヴェーラ渋谷のルビッチ特集「ルビッチ・タッチ!Ⅱ」で5月18日に鑑賞した。
サイレント期の傑作『 結婚哲学 』のセルフリメイク。
ジョージ・キューカーが監督として撮り始めたが、途中から実質的にルビッチが現場を仕切ったため、監督としてクレジットされた。
そう思いながら観ると、最初の方のちょっともたつき感のある箇所はキューカーが演出したところのように思えてくるのはルビッチファンの贔屓目か。
サイレント映画というのはトーキーよりスピーディーなので、『 結婚哲学 』よりも本作の方がゆっくりなのは確かだ。
ただ、それがもたついて感じられるかどうかは、実際の速度よりもリズム・緩急の問題なので、ルビッチの他のトーキー作品にそういうところがないのを考慮にいれると、キューカーに責任があると考えてもそうおかしくはない。
物語は『 結婚哲学 』をほぼ忠実に踏襲している。
アンドレとコレットは仲の良い夫婦。コレットの親友ミッツィは夫婦生活に不満を持っており、アンドレを誘惑する。一方、ミッツィの夫オリビエ教授は、妻と離婚するために探偵を雇って……。
役者に関しては本作の方が良い。
特にモーリス・シュヴァリエは、完璧な二枚目というより現実的にモテる男とはこういう人なのだろうというのを具現化したような顔立ちで、ルビッチ映画に合っている。
誘惑されて困りつつ、でも断りきれず押し切られてしまう普通の男の感覚を見事に演じている。
物語の基本プロットは同じでも、ラストの畳み掛けに関しては元作品を上回っている。
ラストの畳み掛けというと、本作から2年後の1934年に同じくモーリス・シュヴァリエとジャネット・マクドナルドのコンビで撮った『 メリー・ウィドウ 』があり、あっちはあっちで非常に楽しいのだが、印象の強さでは本作に軍配が上がる。
YouTubeで探したが動画が見つからないので見せられないが、一度観たらあの「Sit down!」は忘れられない。