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- / ISBN・EAN: 4523215072977
感想・レビュー・書評
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『アンダーグラウンド』、発掘良品で知ってから鑑賞するまで5年ぐらいかかってようやく観ました。
どういう映画か全く知らなかったんだけど、つい最近戦争映画であることを知って。戦争映画だったらどういうものでも観ることにしてるので、そろそろ観るかと。
ものすごい乱暴な言い方をすると、『フォレストガンプ』に『ジャズ大名』とフェリーニを足したような感じ。あとジュネ&キャロの世界観とか、カウリスマキのレニングラードカウボーイズのやつとか好きな人は好きなんじゃないかなあ。
スイカのシーンがあるんだけど、スイカを見るとブロンソンの『マジェスティック』しか思い出さない。押井版『攻殻機動隊』と『マトリックス』のスイカの元ネタって『マジェスティック』なのか?と考え出すと夜も眠れません笑。
コメディタッチの戦争映画というとヨーロッパではたまにあるのかなと思いますが、ユーゴスラビア映画自体珍しいというか、初めて観ます。
旧ユーゴだと、僕の義理の従兄になった人が元はクロアチア出身なんだけど、あと坂口尚の『石の花』ぐらいしか知らないので不勉強ですね。
たまたま知り合った大学の先生が、「ユーゴスラビア史を教える際にまずは『石の花』を読めと学生に勧めてる」って言ってたんだけど、『アンダーグラウンド』もすごく良いと思う。
第1部を観てて、「笑い」の部分が95年にしてはものすごく古いのでつまらんなぁと思ったけど、第2部以降物語が動き出すので面白くなりました。アンダーグラウンドってレジスタンスの地下活動の話かと思ってたんだけど、そのまま「地下」の話だったという笑。
で、これは第3部でセリフでも語られてるんだけどチトー政権時代、冷戦時の比喩なんですよね。それと、さっき書いた地下活動と。
テーマ曲になってるジプシーブラス、チェチョクって初めて聴いたけど、ジャンゴラインハルトみたいなスウィングの4ビートじゃなくってめっちゃ高速、これスカコアに近い。2部で流れるニューウェーブもなんか良い。
で、クストリッツァ監督って元々ロック好きで「映画監督やめる!」っつってパンクバンドに入ってたりしてたとか笑。ジプシーブラスとパンクがまさにアンダーグラウンドでつながったような気がします。
ジャームッシュとつながりあるなら、カウリスマキとも友達なんじゃないかなって勝手に思ってます。
笑い含め、全体的にそこまで好きな感じではないけど、最後まで観ると「よくぞこんな映画作ったな!」ってすごく感動する。地下道にT-55とか出るし、内戦下のユーゴだけでは作れなかったよなと思ったら色んな国の合作みたい。
3時間近くある映画だけど、面白いからあっという間に観れる。『赤ひげ』を観たときにも思ったけど、長い映画でも面白かったら体感時間ってほんと短いですね。
で、これの完全版は5時間14分もあるらしい笑。テレビ用らしいけど、映画館じゃなくてテレビで観せてー!ってなりそう。こういうのヨーロッパだとけっこうあるのかな。オランダ時代のヴァーホーヴェンの『女王陛下の戦士』とかも、テレビ版を分割で観た方が絶対面白いと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2作目の観賞となったエミール・クストリッツァ監督作品。
監督の祖国、ユーゴスラビアの哀しい混沌とした歴史を
独特のテンションの高いエネルギッシュな映像で語るられていく。
大戦、内戦、と紛争の耐えない祖国。
それをファンタジックに暗喩的に、時には直接的に綴っていく。
心の叫びを映像化するだけでなく
優れた映画作品として興味深く見られた。
大戦もつらいが、内戦はやりきれない。
例えば日本が二分されて銃口を向け合うなんてことを
想像してみると・・・こんに哀しくてやりきれないことは無い。
ユーゴスラビアではそれが起きていたということなのですね。
170分と長編だし、対立の歴史だし、母国の歴史モノだし
飲み込めるかなぁと不安だったが
テンポある音楽とコミカルなテイストも織り込まれていて
飽きることなく異世界に浸れた。
アンダーグランド、隠れる、戦争
そんなキーワードで予想しちゃったステレオタイプな
戦争映画とは全く違う展開だった。
コミカルだけどシリアス。
戦時下でも幸せもあり。
男は女を本能的に求めてしまうものなのだなぁと。
それが非常事態であっても、友情との綱引きであっても
愛が全てを凌駕することも珍しいことじゃないのでした。
それにしてもヒロインのミリャナ・ヤコヴィッチの綺麗さよ。 -
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「アンダーグラウンド」の凄さは、お伽噺的ドロドロ感と、善悪が簡単に決められない。と言うモノの見方だと思うのです。
それと、世界最速のブラス...「アンダーグラウンド」の凄さは、お伽噺的ドロドロ感と、善悪が簡単に決められない。と言うモノの見方だと思うのです。
それと、世界最速のブラスと言われたジプシー・ミュージック。一度聴いたら身体に沁みついてしまいます。
音楽で言えば、トルコのセゼン・アクスが歌うゴラン・ブレゴヴィッチもねっとり感が何とも言えません。
CDジャケットの画像↓
http://nyankomaru.tumblr.com/post/692239261562014/05/01
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観ながらずっと感じていたのが、この作品を観る旧ユーゴの人たちはたまらんのではないか、ということ。たまらなく切なくなるのではないか。よく、作り手にとっての想定読者・観客が具体的であればあるほど、その作品は普遍性を持つということが言われるけれど、その逆。対岸の火事的にユーゴ情勢をみていた自分が、この映画に心底楽しまされている。だとすれば、旧ユーゴの観客にとってはもっと響くはずだ、よくもわるくも。だからたぶん、嫌悪する人だっているかもしれない。
どれほど悲劇的な状況であれ保持されるハイテンション。登場人物はよく踊り、歌い、酔っぱらい、何より、いつもクロやマルコにつきまとう、うるさいが空気のような存在の吹奏楽団(最後まで見通すと、この楽団たちは実は「天使」なんじゃないかと思えてくる。唯一天使を可視化できるのが映画だ。)。
そんなハイテンションの中では何でも可能に思えて来る。登場人物は、あっという間に死ぬか、あるいはなかなか死なない。それがかえってリアル。ガルシア・マルケスに通ずる。あるいはアレナスのキューバ、ラシュディにとってのイスラム。
終盤に至っては、島が二つに割れて流れ出す豪快さ。植物学者、牧野富太郎が、富士山を二つに割ってみたいと書いていたのを思い出した。とにかくいろんなことを連想したり、思い出したりさせられる映画だった。ということは傑作。 -
素晴らしかった。「百年の孤独」に迫るような壮大なストーリー、映像以上に語りかける音楽、戦争ものであるのにコミカルな出演者たち。地下世界での結婚式の乱痴気騒ぎも印象的だったが、特にラストの十字架の周りを走り続ける燃え盛る車椅子のシーンは震えるものがあった。
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4Kリマスター版、スクリーンにて。ネーションという概念が存在する限り常に新しい作品。
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なかなか難解な映画だった。ユーゴスラビアの歴史的背景がよく分からないのと、映画の狂気的な部分に心を揺さぶられなかった。
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サーカスみたいにわちゃわちゃしていて画面は可愛いけれど内容は至って残酷。皮肉ってる内容を理解するには観る側の教養も求められているような感じ。
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全体のバランスがわっるい!
構成もだし、緩急もだし、全体として非常によろしくない。
とりあえず戦争と民族をテーマにしとけば、良い評価がなされてしまうというヨーロッパ映画界の病理が垣間見える作品。
それに乗っかってよく分からないのに過大評価してしまう気持ちの悪い大衆心理までも感じてしまう、、