沈まぬ太陽(三) -御巣鷹山篇-(新潮文庫) [Kindle]

著者 :
  • 新潮社
4.26
  • (10)
  • (9)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 80
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (418ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ついに読み終わりました。
    この話が読みたくて1、2巻を読んでの3巻目だったので長い道のりでした。

    この沈まぬ太陽シリーズでこの方の作品を読むのが初めてでした。ドラマなどで白い巨塔は少し見たことあるのですが、文字で触れるのは全く初めてです。

    空気感はドラマと大差なく、ドヨーンと淀んだ感じの重苦しい感じ。会社の一時的な利益と個人の野心のみが全面に出ている人々が会社を支配する歪んだ構造の航空会社を描くとそういう空気感になるでしょう。1、2巻目では恩地という主人公が前面に登場し会社と戦う姿が描かれました。3巻目では御巣鷹山での墜落事故が中心なので恩地の登場は多くありません。それよりも被害者遺族と恩地が所属する遺族担当係の姿が中心です。

    事故発生から事故現場での遺品、遺体の回収、事故終息に向けての会社の動き、遺族の動き・・・そんな話です。

    今の時代で生きる私から見ると明らかに会社が正しくないと言えます。ただ、それが会社の歪みによるものなのか、それとも時代背景としてそうさせているのかがわからない。また、人の命の重さが今より当時は軽く扱われているが、それがこの会社が特殊だからなのか、時代背景がそうだったのかがわからない。

    仮に、時代背景の問題が大きかったと仮定して考えます。戦後30年の高度経済成長期後半と戦後75年以上経った今とで大きく変わっているのは人権、平等、倫理といったあたりでしょう。偉い人と一般人の差が当時は露骨だったように感じます。そして、今はそれを平等に扱おうと意識に変わっています。それこそが人の下に人を作らずという倫理観でしょう。

    ただ、あれから45年。つまり当時の30代が世の中の上の方に残っているのです。あのような大事故があって初めて変わったこの国の考え方です。もう膠着してしまった部分は大きなアクシデントがないと変われない国家であることは全く変わっていない。今はもう経済先進国ではない。昔の先進国の名残でまだ上位にいるだけ。ITで遅れをとり、中国に抜かれ、インドにも抜かれるでしょう。この作品を読むきっかけとなった堀江氏のような人は叩かれる。彼が全面的に正しいとは言わないが、あのような人をうまく活用できる世の中であることが必要だと思う。

    一般国民は当時より知識レベルが上がったと思う。インターネットの普及で情報がたくさんあるので、当時では知り得なかったことが、たった1、2分でわかる。逆に上級国民達はきっと今も人権、平等、倫理は昔とそう変わらないだろう。それを表に出さないだけ。時々、露呈しちゃう議員や役人はいるのがまさにその証拠だろう。そういう人たちが権力の座からいなくなれば解決されるのでしょうか。しかし、そういう人たちがなかなか居残っている中で極端な思想がもてはやされてしまう。NHK党やれいわなどが当選してしまうのだ。若者は待てない、それだけに過激なものに寄ってしまう。それは今も昔も同じだろう。この作品を読むことでそんな未来を悲観する気持ちにさせられました。きっと、私が死ぬ頃には日本の国内総生産は世界20位くらいになって、「昔は、昔は」すがる老人が変わらずにのさばっているのだろう。

    そうはなっていないことを祈りつつも。

  • 涙せずにはいられない

  • 航空機事故という結果だけしか見えていなかったが、この小説でその前後の歴史や背景を知ることができた。起こった結果には必ず原因がある。その真因に蓋をしてしまうと、いつか忘れた頃に再発する。
    何度反省しても戦争の歴史が繰り返されるように。

  • 昔読んだ本

  • 非常に印象的、どんな人にでもぜひ読んで欲しいと感じた

  • 1・2巻は恩地元の物語、組合活動からの海外流浪、と当時の海外情勢の物語であり、主人公が明確な物語であった。

    この巻は、一転して、実際の日本航空御巣鷹山墜落事故のドキュメンタリーの様相になっている。登場人物はそのままなので、引き続き物語として成立はしているし、「原則名前は架空」の設定も通しているが実名のまま登場している人たちもいる。

    前巻までの主人公恩地元も登場するしそれなりの役割を果たすが、主軸とはなっていない。

    映画を先に見たのであるが、映画以上に、自己記録の色の濃い一冊である。

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

山崎 豊子(やまざき とよこ)
1924年1月2日 - 2013年9月29日
大阪府生まれの小説家。本名、杉本豊子(すぎもと とよこ)。 旧制女専を卒業後、毎日新聞社入社、学芸部で井上靖の薫陶を受けた。入社後に小説も書き、『暖簾』を刊行し作家デビュー。映画・ドラマ化され、大人気に。そして『花のれん』で第39回直木賞受賞し、新聞社を退職し専業作家となる。代表作に『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』など。多くの作品が映画化・ドラマ化されており、2019年5月にも『白い巨塔』が岡田准一主演で連続TVドラマ化が決まった。

山崎豊子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×