萩を揺らす雨 紅雲町珈琲屋こよみ (文春文庫) [Kindle]

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  • 若い頃に離婚をして実家の雑貨店を手伝っていた杉浦草は,両親が亡くなり,近隣にできた大型店舗の影響で雑貨店の先行きが危ういことから,自分のやりたかった,コーヒーと和食器の店に転換した。古民家風の小蔵屋では無料のコーヒー試飲サービスをしていてそれを目当てに毎日近所の住民が訪れる。そうしたお草さんの周りで起こるちょっとした事件のお話。
    なんとなく雰囲気のいいカフェの周りで起こるほのぼのとした日常の話かと思って読み始めたが,なかなか読みごたえのあるお話だった。
    モデルとなった舞台は観音様がでてくるので高崎だろうか。
    「紅雲町のお草」
    小蔵屋で交わされる近所の噂話から,近くの新しいマンションに住む一家に不穏なことが起こっているのではないかと察したお草さんがなんとか事実を突き止めようと密かに調査を進める。
    「クワバラ,クワバラ」
    小蔵屋の過去の注文の中に未収金の伝票を発見する。その依頼主の名前はお草さんの小学生の頃の苦い思い出の原因となった人物のものだった。
    「0と1の間」
    お草さんは大学生の白石くんから週に2回パソコンの使いからを学んでいるが,最近白石くんが目に見えてやつれてきている。何かあったのかと問いかけても,白石くんは口を閉ざしたまま。一方,千葉の漁師町で開業していた医師・宇島が,台風によるがけ崩れで診療所を失って,娘の家に移り住んできていた。宇島は毎日のように小倉屋を訪れ,延々と居座るようになっており少々迷惑していた。二人の問題をなんとかしようとするお話。
    「悪い男」
    小蔵屋の前に怪しげな風体の男が現れ,店の中を除いている。ちょうどその頃,近所では一人住まいの老人の家に押し入り金品を奪うという事件が頻発し始めていた。この男がその犯人なのか?
    「萩を揺らす雨」
    お草さんが密かに想いを寄せていたのは,幼馴染でかつての与党の大物議員であった大谷であった。その大谷から,かつての愛人であった鈴子が死んだので京都で行われる葬式に代わりに出てほしいと頼まれる。そして更に,鈴子の息子(大谷との子供で,妊娠を知った鈴子は大谷との縁を切り,妊娠を隠して京都に嫁いだのだった)を東京にでてくるように説得してほしいと頼む。

  • 不思議な感じの物語。
    いきなり虐待事件から始まったので、その後の展開にひやひやしたけど、優しいカフェの優しい事件簿。

    こういう物語に出会うと必ず近くにあったら行きたいと思う。そう思うような場所が自分で作れたらいいなぁ…

  • 観音様が見下ろす町、紅雲町で和雑貨とコーヒー豆を販売する小蔵屋を営む杉浦草(そう)は76歳。コーヒーの試飲が出来ることもあり、小蔵屋はそれなりに繁盛している。
    その店の訪れる客たちの表情や交わす会話から、それぞれの機微を感じ取る草が、小さな謎や人助けに奔走する中編を5つ収録した連作集。

    2015年6月23日、電子書籍にて読了。
    NHKで放送されたドラマを見て、原作を読んでみたくなりました。
    先にドラマも見てしまったので、どううしてもお草さんは富司純子さんの姿形になってしまいます。ですが、イメージぴったりですね。
    ドラマは中編の中から2つの話を選んで上手に合体させた感じ。時間の都合上、端折ったりしている部分はあるものの、原作ファンも納得の出来だったのでは?と思いました。
    原作では、ドラマでは端折られたりした部分やお草の人物像がより楽しめました。お草さんのなんとも、からっとした人柄が読んでいて心地良いシリーズです。
    続くシリーズも読んでみたいと思います。

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著者プロフィール

1964年、埼玉県生まれ。群馬県立女子大学文学部美学美術史学科卒業。2004年、「紅雲町のお草」で第43回オール讀物推理小説新人賞を受賞。著書に「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズ『誘う森』『蒼い翅』『キッズ・タクシー』がある。

「2018年 『Fの記憶 ―中谷君と私― 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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