- Amazon.co.jp ・電子書籍 (365ページ)
感想・レビュー・書評
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「地獄はここにあります。頭のなか。脳みそのなかに。」
アレックスはそう言って、自分の頭を指差した。
資本主義の未来、今と変わらずテロや戦争が止まらない。
切なすぎて余韻がすごい。
社会派近未来SF。
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9・11以降の、“テロとの戦い"は転機を迎えていた。 先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。 米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…… 彼の目的とはいったいなにか? 大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官"とは?
(Amazon 作品紹介より)
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すごく面白い。天才!!⁝(ᵒ̴̶̷᷄⌑ ᵒ̴̶̷᷅ )⁝
どう感想を書けば伝わるのか…。
主人公クラヴィスの一人称視点で話が進んでいくのですが、彼の思想や言葉がとても痛いんです。
読んでてずっと暗い気分に。(´-` )
日記を読んでいるような感覚。
クラヴィス大尉は情報軍特殊検索群i分遣隊。
言語愛者で、言葉が人を規制し、人を拘束する実態に見える。
彼ら特殊部隊は仕事と割り切り、痛覚にマスキングをして人を殺す。
体の痛みもだが、心の痛みも麻痺する。
戦場に赴いて、人殺しを心安らかに行う。そのためのカウンセリングならば許されるのだろうか。そうした「意図」ならば許されるのだろうか。(本文より)
ずっと彼は罪悪感を感じない自分に悩むのだが、そんな時任務でルツィアに出会う。
『攻殻機動隊』に世界観が似てます。
タチコマのような、ザ・機械!がウヨウヨ…という感じではなく、特殊な筋肉の素材でできたウエイトレスや戦闘機の内装。
個人の指紋や網膜で認証の世界。
隣国では内戦が起こり、常にテロの脅威に晒されている。
資本主義の世界は、今より便利になっても戦争はなくならなくて、それは格差が齎す影響と、生物の本能は領土を広げて行くことだからかな。世界へ、ネットへ、宇宙へ、次元へ。
この世界では、彼ら軍人達は上層部の命令に従い虐殺していく。
クラヴィスには自身で決断していない「仕事だから」という世の中に疑問を抱く。
過去のジェノサイドやテロも、皆が正義を掲げて仕事をした結果なのです。( ・_・̥̥̥ )
宇宙SFもメタバース系のSFも大好きですが、この作品はSF要素が一切入らなくても完璧に仕上がった作品だと思います。
読んでてずっと切なかったですが、ラストまで完璧な内容でめちゃめちゃ良かったです!!
なので続けてアニメも観ました。
世界観はイメージ通りで良かったのですが、やはりクラヴィスの心情を表現するには物足りないかと…。
虐殺の器官とは…も重要だが、同じくらい大事な所だと思うのです。
戦闘シーン、かっこよかったです^ ^詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
時代や技術そのものは未来のもの、架空のものでありながら、現代社会と地続きだと感じられる重いリアリティを伴った物語でした。
自国に不利益を生じなければ、見て見ぬふりをされる内戦というのは、今も存在しています。国力の駆け引きが、多くの人を死や苦しみに追いやっているのは、間違いなくリアルです。その視座でもって描かれているから、遠いどこかかなたの異世界SFではなく、近未来のこの世界の姿として描かれているようで、積み重ねられる死体の描写に、次第に罪悪感を抱いていく感覚すら覚えました。
戦う兵隊たちに施される「罪悪感」のシャットアウトというカウンセリングを羨ましいとすら正直思いましたし、その罪悪感から目をそらして、わたしたちは世界を傍観して生きているな、とも実感させられました。
確かにSFを読んでいるのに、まったく絵空事とは感じられない。ことごとく現代を、SFというフィクションの騙りでもって見せつけられている、そんな風に感じた作品でした。-
[その罪悪感から目をそらして、わたしたちは世界を傍観して生きているな、とも実感させられました。
→共感しました。
ジョンポールが語っていた、...[その罪悪感から目をそらして、わたしたちは世界を傍観して生きているな、とも実感させられました。
→共感しました。
ジョンポールが語っていた、[仕事とは良心を麻痺させるものだ。]
というのは罪悪感のシャットアウトですね。
仕事だから、仕事だから、低賃金の仕事でも適応できてしまう。2022/07/23 -
はじめまして、コメントありがとうございました。
罪悪感のシャットアウト、社会や自分たちが無意識に行っていることを作中で鋭く触れていて、...はじめまして、コメントありがとうございました。
罪悪感のシャットアウト、社会や自分たちが無意識に行っていることを作中で鋭く触れていて、とても印象的でした。
2022/07/26
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実は7〜8年前に3分の1ほど読んでそのままになっていたのを、その続きから読んだ。ほとんど忘れてはいたけれど、まるで映画を観ているようで、内容的にも深く、様々な知識が散りばめられていて、今度はすんなりと最後まで読み通すことができた。こんなディストピアは本当に訪れそうな気がする。攻殻機動隊と1984の世界観も感じられると思っていたら、最新の攻殻機動隊も1984をモチーフに展開していたっけ。
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夭折の作家が描く地域紛争が多発する近未来の世界。そこに広がるのは夥しい数の破壊と殺戮。目の前で展開する光景は惨たらしさの極致である筈なのに一才の感情を排した語りがそれらを変成し気分はまるで無声映画を観ているかのよう。ただ一言、すごい作品に出会ってしまった。
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文学ラジオ空飛び猫たち第22回紹介本。
ラジオはこちらから→https://anchor.fm/lajv6cf1ikg/episodes/22-empqcc
ダイチ
ラジオでは多少ネタバレを話していますが、読むきっかけになればと思っています。ただ未読の人でこれから読むのを楽しみにしている状態なら、さきに読んでいただいてその後にラジオを聴いてほしいと思います。小説の感想としては、初読のときは衝撃を受けました。9・11以降の世界をSF小説として描いているのですが、驚きの連続です。『虐殺器官』、『ハーモニー』と続けて読むのがおすすめです。米軍大尉でいながら悩みを抱えて戦う主人公クラヴィス・シェパードの心情にも惹かれました。
幅広く楽しめる要素がある小説です。アクション映画が好きな人や、世界情勢が絡む特殊部隊の世界が好きな人や、「虐殺の文法」という小難しい理論をわくわくして読める人ははまると思います。SF初心者でも楽しめます。「虐殺の文法」のアイデアがおもしろくて、文体も読みやすいです。
ミエ
タイトルに《虐殺》と入っているだけあって残虐な描写は多少ありますが、SF小説としておもしろいです。作中の重要なアイデアである「虐殺の文法」の理論は難しいところがありますが、何となくの理解でも十分に楽しめます。また引きのある登場人物も魅力的で、ジョン・ポールという悪役に位置付けされるキャラには成り立ちのドラマがあって、主人公クラヴィス・シェパードも特殊部隊に所属する軍人でありながら人間味があって、この二人の会話には惹き込まれました。
『ハーモニー』に比べると『虐殺器官』はよりスリリングな展開です。エンタメ要素も高く、多くの人にとって楽しめると思います。 -
人間に特有の“器官”としての言語、自由意志、平和・倫理とは…。
多種多様な切り口から問題提起が為されており、いろんな楽しみ方ができる作品だと感じた。
自由とは選択できること、良心は遺伝子的に組み込まれているもの、人間という生物に対するリアリズムと理想の間。
主人公以外の全ての登場人物はそれぞれが確固たる信念・倫理観を持ち合わせているのも魅力的だった。そして、その中で、主人公がある種のアイデンティティ・クライシスに陥り、最終的に崩壊(!?)の一途をたどる結末も興味深く、1984年の読後感と似たものを感じた。
本作品を読んで、次に読む予定の同著者作品の「ハーモニー」の期待値が上がった。