冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 結末は予想外で、良い意味で裏切られた。
    全体を通して流れる冷たい冬の空気感と、非日常の高揚感には、誰もが思い当たる節があるはず。
    謎解きの面白さと青春のもどかしさを同時に味わえる。

  • 作者のどんでん返しを考え、これには裏があると思い、裏があると思わせてきっとそうではない、と考え、裏の裏は表とは限らないとか、とにかく、読んでいる間中、思考が逡巡する楽しさを十分に味わいました。
    下巻に入ってからの、徐々に見通せるようになる作中の景色、そして、解決が見えてからの、冷たい雪が解けていくような暖かさを感じながらの怒涛の展開。
    やはり、辻村深月の始まりはこの作品だったのだなと、確信と感心しました。
    時間の使い方、登場人物の現れ方、後々の作品に生きているように思います。
    過去の多様な暗部も、生きていく過程では糧に変わっていくような、この作者の作品を読んで最も感じることは、明日も生きていこうと思えること。なんかいろいろあるけど、人生捨てるほど悪くはない、と思えること。
    「HERO」の章がほかの章より長いなあ、と思いながら読んだのですが、そうか、そういうことだったのか、と納得しました。
    私は、本作品、とても楽しめました。
    暗夜を乗り越えて朝日を浴びたような読後感。
    沢筋を詰めて、尾根をあがり、山頂直下で一泊、山頂で拝んだご来光。
    そんな登山の行程を感じ、強い爽快感を覚えたのです。

  • 私は、この校舎の中に8人が閉じ込められたことは悪いことではなかったと思う。ここに来たことによって、本当の事実を知れた。未来が変わったと思う。みんなの過去が泣きそうになるほど深かったし、ここで起きたことも心に刺さったけれど、深月のこと、春子のこと、みんなのことを知れた。大切なものに気がついた。最初と最後では、明らかにみんなの態度や「何か」が違う。そう思う。話題を変えて、私は景子さんがかっこいいと思った。自分と前向きになって、目をそらさない姿勢が尊敬できる。言葉遣いからかっこいい笑
    そして、本当に、深月が楽しそうでよかった。ただそれだけ。

  • そういうことかと納得。ずっと菅原の下の名前が出てこないので、気になっていたが、まさか榊までとは。うまい具合に騙された。最後の方は面白かった。

  • 2013 9/7読了。Kindle版をiPhoneで読んだ。
    上下巻いっき読み。
    これまで何度も、辻村深月は長いけど読み始めたら止められなくなる危険物と思い知る経験はしてきたはずなのに、またつい読み始めてしまい、結果徹夜することにorz

    大雪の中、誰もいない校舎の中に閉じ込められた仲のいいクラスメイトたち。
    秋に起こった自殺事件の影に覆われながら、誰が自殺したのか、閉じ込められる原因になっているのは誰なのかがわからないまま、一人またひとり消えていく。

    ・・・「精神世界に閉じ込められる」ネタはレベルEだなー、と思ったら引用元もレベルEと被っててまさかレベルE読んで考えたんではあるまいな・・・とか思いつつ。
    自殺者ネタはちょうど同時期に読んだHEROさんの短編にもあり、あっちは後味がひたすら悪かったけど、こっちは後味はそう悪くない。
    誰が死んでいるのかは途中から気づいていたけど、榊先生のこととかまるで気づけなかったところもあり、でもあらためて読み返せばそんなのまるわかりでもあって、とても悔しい。

    それにしても、この調子だと手を出すたびに徹夜することになりそうだな、辻村深月・・・気をつけて臨もう・・・

  • デビュー作とは知らずに、興味を惹かれて購入しました。
    主人公の1人が辻村深月という名前で驚きましたが、小説家としてはたまにあることなんだそう。確かに名前を覚えてもらいやすくなりますよね。

    8人の内、誰が自殺をしたのか。
    もしかしたら8人の内の誰かではないのか?
    明らかに鍵となる人物である榊先生はどう関わってくるのか?

    最後の最後まで先が気になりすぎました。
    榊先生がどこにいるかまではわかったのに、なぜか彼の過去に関わる人物に全然思い当たらず……。なるほど!

    総じてすごく面白かったです。
    辻村深月先生の他の作品も絶対に読みます。次は凍りのくじらにする予定です。

  • 私は、下巻を読んで、菅原君がとても好きになりました。

    メンドクサイと思いながらもひまわりの子供たちの面倒を結局見てあげたり、子供に近いからこそわかる視点で諭してあげたりというところが良いと思いました。ピアスをずっとしている理由…その理由もとても惹かれます。
    上巻での菅原君は教師の机からタバコを盗んだり、勝手に行動したりしていましたが、下巻ではみんなを安心させようとしたりしており、仲良しメンバーとしても良い立ち位置を演じてくれています。
    その菅原君がね…。まさかね…。そうだとは…。

    物語の結末は、なんとなく予想できていました。誰が死んだのか?なぜ彼らを冷たい校舎の中に閉じ込めたのか?物語の結末を少し読めてしまったせいもあり、前半部分の中だるみを感じましたが、一気に読めてしまいました。
    とても良い作品です。
    また今度辻村先生の作品を読みたいな。

  • かなりの長編作品ですが、読み飽きない。
    先が気になりページをめくっていました。

  • またとんでもないものを読んでしまった。

    これがデビュー作とは恐るべしです。
    私はこの順番に読むとより楽しめるという順番で読んでいるので、出版順ではない読み方だったのですが、これが一作目なのですね……。知りませんでした。
    スロウハイツの時にも思いましたが伏線回収が凄すぎます。
    今回、珍しくも予想していた展開になり、それはそれで嬉しかったのですが、ただただ(やっぱり)では終わらせないのが辻村さんの作品なのかもしれません。

    関係ないのだろうと思いますが、登場人物の名前に、作家さんの名前が多く出て来たところが気になりました。
    (森)博嗣、梨香(梨木香歩さん?)、桐野(夏生)、角田(角田光代さん?読みはつのだ)
    こじつけですが、昭彦は辻村さんが好きだという京極夏彦氏の作品中禅寺秋彦から来てるのだろうか?というところまで考えてしまいました。でも特に言及はされていないので、考えすぎかしら。

    結末というか、どうしてこうなったかというそもそもがなんとも言えない。

著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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