嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫) [Kindle]

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  • リッツァがいうギリシアの青空「それは抜けるように青いのよ。一点の曇りもない空を映して真っ青な海が水平線の彼方まで続いている。波しぶきは、洗いたてのナプキンののうに真っ白。マリ、あなたに見せてあげたいわ」p. 20%

    《嘘つきアーニャの真っ赤な真実》p.28%

    (狼少年とアーニャは違うという文脈で)
    「そうなんだよねえ、アーニャって、まるで呼吸するみたいに自然に嘘つくんだよねえ」
    「うん。きっと、嘘つかなくなったらアーニャは死んでしまうかもしれないね」
    「そんなことはないだろうけど、嘘をつかないアーニャなんて、想像しただけでつまらないね。アーニャじゃなくなっちゃうね」p. 39%

    異国、異文化、異邦人に接したとき、人は自己を自己たらしめ、他者と隔てるすべてのものを確認しようと躍起になる。自分に連なる祖先、文化を育んだ自然条件、その他諸々のものに突然親近感を抱く。これは、食欲や性欲に並ぶような、一種の自己保全機能、自己肯定本能のようなものではないだろうか。p. 41%

    マリ「誰もが、具体的な場所で、具体的な時間に、何らかの民族に属する親から生まれ、具体的な文化や気候条件のもとで、何らかの言語を母語として育つ。どの人にも、まるで大海の一滴の水のように、母なる文化と言語が息づいている。母国の歴史が背後霊のように絡みついている。それから完全に自由になることは不可能よ。そんな人、紙っぺらみたいにペラペラで面白くない」p.64%

    《白い都のヤスミンカ》

  • 米原万里作品初読み。
    ノンフィクションだったのか。。。
    児童書のようなものかと思ってた^_^; 
    戦争や長い年月を経ても会いたいと思える友人に恵まれた人だったんだね。。。

  • 面白い。夢中になって読んだ。ロシア語通訳者の米原万里は1959年から64年まで、日本共産党代表の父に同行して、チェコ・プラハのソビエト連邦学校に編入。このエッセーは3人のクラスメートと過ごした経験、そしておよそ30年後に果たした彼女らとの再会を主題にしている。
    背景となる時代、59年から91年は、プラハの春、冷戦の終結、ソ連の崩壊、ユーゴスラヴィア紛争と激動の時代であり、この時代の中で、少女たちがいかに大人の少女になっていったかが生き生きと描かれている。
    登場する少女はギリシャからの亡命者の娘、ルーマニアの支配階級の娘、バルチザンの元英雄の娘の3人。舞台となるのが、社会主義国家の学校という特殊事情から、少女なりに自分たちの思想、考え方を持つことになるが、一方ではそれぞれが何らかの矛盾を感じ、混乱している。したがい、彼女らの言動は時折奇異なものに映る。例えば、ルーマニアの支配階級の娘であるアーニャは宮殿のような住居を与えられているが、自らを共産主義の闘争者と呼ぶ。筆者は、それを決してこきおろしたりはせず、彼女との対話を通して、何故彼女がそういう思想、矛盾を抱くように至ったのかを、わかりやすく描写してくれている。これは筆者の知識、筆力によるところが大きい。
    中東欧に少しでも関心のある人は、必読の★5。いや、娯楽性の高いエッセーであり、すべての人にお勧めと思う。

  • 激動の時代の共産圏の子どもたちの行く末を、ハラハラしながら一気に読めた。面白かった。
    と同時に、共産主義とか東欧の歴史や情勢を、いかに自分が何も知らないか、恥ずかしくなった。

  • 長い間、エッセイではなく小説と思い込み、手に取っていなかった。kindle購入をきっかけに読了。在プラハ・ソビエト学校の同級生の30年後の足跡を辿る。よく辿りついたなぁと驚くとともに、少女時代には分からなかった同級生の背景についても丁寧に書かれていて、やはり米原さんらしい本だった。非常に面白かった。

  • 共産主義の現代史としての面白さもあるのだろうが、それよりも話として面白かった。いや、ノンフィクションだから、話じゃなくて、米原マリさん自身の魅力なのか。あるいは文章がうまいのか。知的で、ユーモアもあって、社会的で、迫力もあって、小気味よく。良い本でした。

  • 初めて読んだ米原万里さんの本です。
    生前、テレビでコメンテーターをなさっている様子を少し見たことがあった程度で、米原さんの経歴などまったく知らずに読んだのですが、なんと珍しい、普通には経験できない少女時代を送って来られた方なのですね。
    東西冷戦中の共産圏で、世界各国から生徒が集まってくるソビエト学校に通っていた米原さんの、当時のお友達とのエピソードと、それから30年以上経ってからそのお友達の消息をたどり、見事再会するまでが綴られています。
    歴史の教科書でしか、しかも断片的にしか知ることのない当時の共産圏の人々が生き生きと描かれていて、エッセイのように読めてしまう一冊ではありますが、本当に貴重な文献だと思います。米原さんの他の本もぜひ読んでみたいです。

  • 教科書に載せるべき名作
    電車の中でなければ泣いてました(´;ω;`)
    これを読めば、世界平和が大事だと痛感します。

  • タイトルだけで購入を決め、軽い気持ちで読み始めてたので、最初はなかなか頭にストーリーが入ってこなかった。しかし、作者の体験談とのことで、こんな体験をする人がいるのかと作者の行動力に感服した。
    時代背景、国家問題と個人には大きく、特に子どもではその壁はとても大きい。
    大人になり、個人の力も強くなり、昔の友達に会いにいく。
    今の時代、Webですぐ繋がれるのが当たり前なので、今後このような時を超えた出会い、当時の答え合わせといったことはないのだろうと、俯瞰して読みつつ、
    とはいえ、Webで行動するハードルは低くなっているものの自分が動くかというと
    動きそうにない。
    そんなことを反省させてもらい、自国だけでなく、地球人としてどう手を取り合っていけるか?
    そんなことを少し考えようかなと思った良書です。

  • 過去に一度読んだことがあるのですが、最近のロシア情勢から著者の作品が無性に読みたくなり再読。

    「ロシア語が理解できる私には、西側一般に流される情報とは異なる、ロシア経由の報道に接する機会がある。」
    「現代世界の宗教地図を一目するならば、国際世論形成は圧倒的に正教よりもカトリック・プロテスタント連合に有利なことが瞭然とする。」

    今のウクライナとロシアについて、著者の視点からの情報を知りたかった。もう叶わないことではあるけれど、この作品によって旧ソ連とその衛星国との関係性やそこに生きる人々について知ることができます。

    そして、子どもの頃旧ユーゴの紛争の報道をたくさん目にした世代なので、ヤスミンカのエンディングには涙が出そうになりました。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。作家。在プラハ・ソビエト学校で学ぶ。東京外国語大学卒、東京大学大学院露語露文学専攻修士課程修了。ロシア語会議通訳、ロシア語通訳協会会長として活躍。『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(角川文庫)ほか著書多数。2006年5月、逝去。

「2016年 『米原万里ベストエッセイII』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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