虚夢 (講談社文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 星は4-。誓約」を読んだ直後に読んだためか、ちょっと物足りなさを感じた。どちらも暗い過去をテーマにしていて、日常の幸せから突き落とされるストーリーだが、精神疾患を理由に罪に問われないという日常起こりうるケースをテーマにしているせいか、こちらの方がやるせなさ、辛さが残る。

  •  これぞ薬丸岳という感じの重々しさ。今作のテーマは精神障害。刑法第39条では精神鑑定の結果心身喪失または心神耗弱と診断された者の違法行為は罪に問わないとされるが、無差別に12人もの人間を殺傷した青年が何の裁きも受けなかったなら…。
     名前は聞いたことはあれど、実際に統合失調症とはどんな病気か知らなかったので、犯人憎しの心がどんどん揺り動かされていった。ただ無罪とする・減刑するだけでなく、その後の治療が肝心なのはもちろん、遺族の気持ちを考慮した贖罪を何か考えないと理不尽すぎる。ラストは予想もつかない終わり方だった。

  • 本当に精神の病気の人が増えている今、犯罪と精神病の関係は法律的に変えるべきでは?と、一石を投じる作品。

  • 久々の薬丸先生。
    いろいろ考えさせられました。

  • 家族を殺されたが、犯人は精神障害者であり、第39条「心神消失者の行為は罰しない」に該当し、処罰されなかった。
    39条に該当するか否かを裁判で判断すると思っていたのだが、起訴すらされないこと可能性あるのか……と、この小説で初めて知って衝撃をうけた。
    起訴されず裁判も行われないから被害者は犯人がどのような状態で、犯行をどう考えるか、何の情報も得ることができない。こんな理不尽あるだろうか。
    しかし、犯人側のおかしくなっていく様をみていると、本人の意思・思想と関係なく犯してしまった罪は裁かれるべきとは思えない、むしろ犯人も被害者では?という気もしてくる。
    憎しみを向ける先がない苦しさ。もう災害で亡くなったと思うしかないのか……。
    最後は、そのまま彼女の試みが成功してほしかった気はする。何年もたった後の遺族の手記は、感心のない一般層にどれだけ認識されるのか疑問。

  • 「心神喪失」の通り魔犯に娘を殺された夫婦。4年後、街ですれ違った男は“あの男”だった。謎解きだけでは終わらせない!
    通り魔事件によって娘の命は奪われた。だが犯人は「心神喪失」状態であったとされ、罪に問われることはなかった。心に大きな傷を負った男は妻とも別れてしまう。そして事件から4年、元妻から突然、「あの男」を街で見たと告げられる。娘を殺めた男に近づこうとするが……。人の心の脆さと強さに踏み込んだ感動作。

  • 刑法三十九条:心神喪失者の行為は、罰しない。
    心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

    この小説はこれを中心に物語が進む。

    冒頭から真っ白の雪に真っ赤な血。凄惨な事件をまるでリアルタイムで見ているかのよう。

    色んな視点から物語が進んでいくので読みやすい。 【人を殺そうとする時点で、その人間の精神は病んでいるのではないだろうか、ということだ。それは犯行時の瞬間的なものかもしれないが、正常な精神ではないから人を殺せるのではないだろうか。】本文を抜粋しましたが、まさに私もそう思ってました。人を殺そうとする時点で普通じゃないのだから精神異常も何もないだろうと。

    殺人を犯した加害者が悪いのは一目瞭然。しかし、刑法三十九条が当てはまる場合は被害者は怒りのやり場をなくしてしまう…

    考えさせられる一冊でした。

  • 初めての薬丸作品。スピーディーな展開ではないが、確実に問題提起をさせられたストーリーでした。法律の心神喪失者及び心神耗弱者の責任能力に関する規定。頭ではわかっていても、もし大切な人が被害者になったら到底理解できないと思う。そして統合失調症の人の気持ちも然り。人生をかけた世間に対しての佐和子の決断がすごいと思った。

  • 精神疾患を理由に大量殺人犯は精神鑑定により無罪に。数年で施設を退院し社会復帰。これって許せる?って話し。俺は厳罰主義を自覚しているので罰するべきだと感じるが、罪の意識はもとより「罰の意味や罰を受ける恐怖や苦しみを感じない者」を罰する意味があるのか?とも感じた

  • 「心神喪失」の通り魔犯に娘を殺された夫婦。運命を大きく狂わされた2人はついに離婚するが、事件から4年後、元妻が街で偶然すれ違ったのは、忘れもしない「あの男」だった…。

    デビュー作「天使のナイフ」以来、薬丸岳の本は数多く読んできたつもりだけど、デビュー3作目の本作は読んでいなかった。刑法39条をテーマにした薬丸らしい作品。展開にもっとスピード感があればなおよかったものの、それでも一気読みさせる力はあった。
    (B)

  • 『天使のナイフ』『悪党』と読んでの本作。
    連続で3冊は重かった。。。(評価に影響)
    前2作は少年法をテーマにおいているが、今回は精神異常者の犯罪について。
    重いテーマを分かりやすく書いた本作は、サスペンスでもミステリーでもホラーでもなく、ドキュメント手記のようにリアルだ。被害者の家族、加害者の家族、そしてそのまわりの人々がリアルな描写で、ジーンとくる場面もある。
    ゆきが捨て駒っぽくて、最後まであまり説明されず心情がつかめなかったのが残念。

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著者プロフィール

1969年兵庫県生まれ。2005年『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年、『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に刑事・夏目信人シリーズ『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』、『悪党』『友罪』『神の子』『ラスト・ナイト』など。

「2023年 『最後の祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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