道尾秀介による日常のちょっとした事件の裏側に迫るミステリ。
冒頭で強欲和尚から役に立たない家具を売りつけられるシーンからはじまるのは春編・夏編とも共通。その家具に関連するような事件や相談が舞い込んできて華沙々木と日暮がその対応をする中で事件の裏側に潜む謎を解決していく。
と書くと、重厚ミステリのようだが、感触としてはライトミステリに属する印象。事件そのものもちょっとした諍いのようなものだし、当然人は死なない。さらには迷探偵・華沙々木の推理が繰り広げられ、ほほう、そういう解釈もあるかと思わせておいて、実は、という展開も、ミステリならでは。
奈美の境遇や、なぜ奈美に華沙々木を名探偵と思わせておく必要があるのかなど、春編・夏編では明かされない謎も残り、秋編・冬編への興味も持続させられる。